第23話 粗悪

魁木が歪んだ笑みを含め、口にした。



魁木「おまえ達 そこの真っ裸なクソあまを殺れ」



指示を受けた4人のイカレた目つきがエレナと七海へ向けられ



一斉に駆り出す それより先に



抱えるクリスを手放し



誰よりも先に美菜萌前が前へと踏み出した。



美菜萌「借ります」



七海とエレナの間をすり抜け、七海のデッキブラシを奪い取り、果敢に向かって行った。



穏やかな表情から一変、戦意は男勝りな元婦人警官



別人の如く鋭い目つきは生粋の剣士か武術家か



先手な突撃でしっかりと両手に握られたデッキブラシを前に一足出遅れた町民等が襲いかかって来た。



ジャキジャキと枝切りバサミの刃を鳴らせる先頭の民へ



剣道中段の構えから仕掛けの出ばな技



素早き小手打ちで打突を喰らわせた。



また続いてすくい上げるように高切りバサミを逆袈裟で弾き上げ



金的、喉笛と連続の突きを繰り出した。



息も出来ずにうずくまる町民はバサミを落とし床に倒れる



その背後から今度はアイアンクラブを振り上げる町民の姿



美菜萌はスイングの筋を一瞬で見切り、後退



目前を空振るクラブが地面に叩きつけられる。



すると 美菜萌はそのクラブを片足で踏みつけ固定しながら



剣術から棒術の構えへとスイッチされた。



そして



バチコン



横っ面を豪快にはたいた。



のされて倒れる町民が2人目



続いて美菜萌の目に映ったのはロングマイナスドライバーを手にした町民の姿



美菜萌はまたも剣道の構えに戻し、脇構えの迎撃態勢をとるや



力強い一歩と共に遠間からの横殴りで町民の頬に直撃させた。



あっと言う間にのされて、のびた男達が3人



それからスコップを握りし町民が躊躇し、その場で足を止めた。



くるくる華麗にデッキブラシが操られ



ガッシリ両手に握られた棒術の構えで美菜萌がエレナ等へ口にする。



美菜萌「今の内です ここは私が 行って下さい」



七海「でも…」



美菜萌「私なら大丈…」



美菜萌が一瞬視線をそらした その隙に…



スコップを手にした町民を弾き飛ばし



鉤爪が繰り出されて来た。



美菜萌は体勢を崩しながら寸の間でそれをデッキブラシで受け止めた。



美菜萌「つ…」



身を包んでいたバスタオルがスルリとはだけ、床へ落ちると共に



目の前には魁木の姿



美菜萌「つ…」



眉間にシワ寄せ睨みつける美菜萌の目には



鍔競り合いながらも余裕な表情…



しかもいやらしい目つきで美菜萌の全身を舐め回すように視線を向ける魁木の姿が映っていた。



そして魁木が懐から携帯電話を取り出し、なにやら掛け始めた



増援を呼ぶ気だ…



美菜萌「早く逃げて下さい」



エレナ「ここは美菜萌さんにまかせて行こう」



早織「美菜ちゃんは?」



エレナ「いいから」



七海がクリスを抱え上げ



3人は駆け足でその場を離れた。



魁木「あぁ…俺だ…ガキを見つけたぞ…すぐ下に来い…あぁ 早くしろ 逃げる気だぞ… 女が2人いる それは殺せ」



携帯を切った魁木が再び美菜萌の裸を舐め回し、口にした。



魁木「っかし だらしねぇ~なぁ~ たかが女に1人にこのザマとは… 無能なテメェー達は罰として…人形送りな…」



スコップを握る町民に冷酷な口調で吐き捨てた。



それから自分のイチモツを握りながら…



魁木「そしてオメェーは後でゆっくりイジメてやるから楽しみにしとけ」



チッ… このケダモノ…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



無言で館内を疾走するエレナ、七海、早織の3人



美菜萌を置いて来た事は気掛かりだが…



美菜萌さんなら強いから大丈夫…



今は…狙われてるこの子を守らないと…



今は…逃げる他ない…



エレナは手を繋ぐ早織をチラッと目にしながら廊下を全力で駆けて行く



電気風呂やジャグジーコーナー越え、3人はメインの大浴場を出口へと向かって行った。



そして脱衣所へと辿り着くや



エレナ「他にも仲間がいるから…早く着替えよう」



七海「美菜はどうするの?」



エレナ「大丈夫 私がすぐに助けに行くから とりあえず早く着替えましょ」



頷いた七海



3人は急いで服を着ようと各自のロッカーへ手を延ばし、下着や衣服をかき出した。



エレナはロッカーに仕舞われたUSPハンドガンを目にした。



残弾は後2発か…



エレナは急いでブラジャーに手を伸ばし



七海と早織がパンティーを履きかけた  その時だ…



ジョニー「かぁ~ こりゃ~ いい眺めだな っとに殺しちゃうのかよ? なんか勿体ないわ…」



青ざめた表情の七海や早織の前に



規則正しく並列されたロッカーの陰から男が現れた。



次いで背後から肉切り包丁やモンキーレンチ、中世の西洋剣のレプリカ、ネイルガンを手にした4人の町民達も現れた。



周囲が囲まれる



ジョニー「やべぇ~ これ目の保養しすぎだわ 勃ってきちったじゃん」



ロッカーに腕を突っ込んだまま手を止め、トンプソン短機関銃を身構えるジョニーを目にしたエレナはゆっくりと周囲に目を配った。



全部で5人…



左に機関銃とモンキーレンチを持った奴が2人…



右に…包丁…剣…あれは何…何か知らないけど飛び道具らしき物を持った奴が3人…か…



状況を即座に把握したエレナがジョニーへ口にした。



エレナ「まぁ 私達見られてもそこそこ恥ずかしくない身体だけど… 興奮するのはあんた達の勝手なんだけど… せめて下着くらいは着替えさせて貰えないかしら… このままじゃ風邪ひいちゃうんだけど」



ジョニー「フッ 状況分かってんのか?駄目にきまってんだろ 動くな そのままでいろ どうせ死ぬんだから風邪もクソないだろう」



エレナはロッカーの中を覗き込みながらまた静かに口にした。



エレナ「あらそ~ 困ったわね じゃあ代わりに1つだけ質問があるんだけどいいかしら?」



ジョニー「あぁ?」



エレナ「あなた…そのムスコさんに何発鉛弾喰らいたいですか?」



ジョニー「はぁ?」



すると素早く手を動かし



ロッカーから何やら取り出された…



取り出されたのはUSPハンドガン



ノールックで既に銃口が向けられていた。



パァーン



ためらい無くトリガーが引かれ



ジョニーのアソコから血が溢れた。



ジョニー「ぐぁ」



またエレナはハンドガンを反対へと向け、最後の弾丸を発砲した。



パァーン



ネイルガンを持つ町民の拳に直撃させ、落下すると同時にハンドガンを投げ捨てたエレナ



エレナは痛みでうずくまるジョニーへと近寄り



トンプソンを奪い取った。



そして…



エレナ「伏せて」



七海が早織を抱え込み、身を伏せると



パパ パ パパパ



けたたましい連射された銃声が鳴り響き



町民等の手足に弾丸が突き刺さった。



肉切り包丁や西洋ソードが床へと落ち



手足を押さえ、崩れ落ちる町民等の姿体



町民等は洗脳でただ操られてるだけ…



殺(あや)める訳にはいかない…



命を奪われる事無く無力化されうずくまる町民等を尻目に



エレナはうずくまるジョニーの胸板を足蹴にし、そのまま踏みつけた。



エレナ「ここは女湯よ 本来男性禁止の筈なんだけど堂々と覗き見するなんていい度胸よね このナイスなバディーをただ見するなんて…高くつくわよ さぁ もう一度聞くから答えて」



ジョニー「いで…いでぇ」



エレナ「なによ…アソコが潰れたくらいでピーピー喚くなっての もうそれは一生使いもんになんないんだから諦めなさい… それよりも鉛弾後何発欲しい?」



ジョニー「いでえよ…クソいてぇー」



エレナ「だから何発喰らいたいんだよ? 早く答えな 男のクセして情けない…」



ジョニー「もう…ほ…欲しくねぇーす」



激痛で歪めながらエレナを見上げるや



見下げるエレナのその顔にジョニーは青ざめた。



エレナ「ハハ いらない…? なに遠慮してんの じゃあいいこと教えてあげるね 私ね…ゾンビと悪党が大っ嫌いなのよ… そうゆう奴等にはもう情けをかけ無い事に決めてるの」



トンプソンのトリガーに指をかけたエレナ



エレナ「私は偽善なんて言うつもりないから本当の事言うと この世には死んだ方がいい人間っていると思うんだ  じゃあそれがどうゆう人かと言うとね… そう…それはおまえみたいな根っからのワルの事よ 生きてても何の罪もない人を殺めるだけのあなたに制裁をくわえる人なんて今の世の中いないじゃない…だから私が鬼になるしかないのよね そう…私のハートもある意味ワルなだからこれは同じ穴のムジナってやつよ…これがどうゆう意味だか理解していただけますよね?」



ジョニー「い…いのちだけは…」



エレナはニコリと微笑んだ後



エレナ「だぁ~め あなたいままで何人…いや何十人…一体どれほど手をかけて来たのかしら?あなたからは血の臭いしか匂ってこないんだけど…そうやって何人命乞いした人を殺して来たのかしらね? 私をこんなに変えたのはあなた達みたいなサイコパスなんだから……サイコパス1人を葬ればそれはむしろ一善 1つ世の中が平和になったって事になるものね これは世直しとお掃除の一石二鳥になるんだから…あ!そうそう それともう1つとっておきの良い事を教えてあげる… あなたが属するその組織…その組織のワル達丸ごと… これから ぜーんぶ滅ぼしてお掃除してあげるつもりだから…1人たりとも生かしておかないつもりだから…そこの所 シクヨロ~」



ジョニー「あ…た…たすけ…」



エレナ「だから だぁ~めぇ」



狂気に満ちたエレナの笑顔を目の当たりにしジョニーの顔から生気が一瞬にして失われた。



パァーン



トリガーが引かれた。



口から泡を吐き出し気絶したジョニーの真横の床に食い込んだ銃弾



エレナ「流石の私も早織ちゃんの見てる前で殺しは出来ない…今回だけは見逃してあげよう 早織ちゃんに感謝する事ね」



5人もの男達を完全に制圧し



トンプソン短機銃を手に入れたエレナはそれを肩に担ぎながら意識を失った黒フードを見下ろした。



エレナ「早く着替えよう 私は美菜萌さんを助けに行くから2人は何処か安全な場所に隠れて…」



その矢先…



ガシャー



突如ガラスの割れる音が聞こえ



ドタドタと荒々しい足音



何かが室内へと入り込んで来た。



七海「え?今度は何…?」



「があああああああ」



「殺さないでくれ 見捨てないでくれ 慰めてくれ」



「Ah~ こうやってぇ~ 時がぁ~加速してゆく中ぁ 君が~ 迷ってぇ~ しまわないようにぃ~ そっと Light up your heart now 既にぃ~ ボーダーライン なんて言葉 存在しなぃ~」



でたらめにボディーにくっつけられた3つの首



継ぎ接ぎ人形だ



「魁木 今 バスタード(出来損ない、粗悪品)レベルD解放したぞ そいつ頭悪いから巻き添え食らわないよう絶対近づくな 一旦身を引け」

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