第10話 組織

9時46分



チュン チュン ジジジジジィ~



電線や木々でスズメがさえずり、追いかけっこする曇り空な朝



食料調達用のリュックを背負い、ゴルフクラブを手にする早織



隣りではバールを持ったエレナ



打根を装備した御見内



軽やかな歩調で歩むクリスと続き歩道を警戒しながら歩んでいた。



周りの景色はちょっとした工業地帯へと様変わり



両サイドに色んな企業の製造工場や倉庫が敷地内に達ち並んでいる



そんな工業地をしばし歩いて行くと早織がある倉庫前で立ち止まった。



高い塀で囲まれた門



その両脇の鉄塔部に取り付けられ、作動する2台の監視カメラに気付いた御見内が見上げた。



エレナ「ここ?」



早織「うん ここが隠れ家なの」



早織が早々にチャイムのボタンを押した。



すると インターホーン口から



「おはよう早織ちゃん 」 



早織「おはよう」



監視カメラに手を振る早織



「そっちの2人は?」



早織「早織のお友達だから大丈夫だよ~」



するとすぐに自動で門が開き始めた。



早織「さぁ 入って入って」



開く門から中へと進み、御見内等も後に続くと門が閉まりだす



目の前に見える超巨大な倉庫



一同は広々とした駐車スペースを進み、隅に重ねられた数段ものパレット(荷台)、その横に並んだ複数台のフォークリフトやハンドリフトを通り過ぎ、更に奥へと進んだ



そして倉庫に隣接した建物の前で立ち止まり早織が再びチャイムを鳴らした。



御見内が扉の上を見上げるやここにも監視カメラが設置されてる事に気付いた。



「はい どうぞ」



インターホンから応答があり カチャ 鍵が解除



3人は建物の中へと入って行く



「おはよ 早織ちゃん」



出迎えてきたのは30代半ばの男



肩には水中銃を掛けている。



「そちらの方は見慣れない顔ですね…あ」



犬に気づいた男はしゃがみ込みクリスの頭を撫で始めた。



「久し振りに見るなぁ~ワンちゃんなんてぇ~ ハッハッ可愛い可愛い」



エレナ「野崎です 初めまして」



御見内「御見内です」



ペコリとお辞儀するや



「あ どうも川畑です」



早織「ねぇ おじちゃん マツおじちゃんに会いに来たの それとこれもまたお願い」



背負っていたリュックを手渡す早織



川畑「マツさんに? あ はいはい  っで早織ちゃん 今日は何にする?」



早織「パイナップルの缶詰とぉ~ う~ん 後はおじちゃんチョイスにまかせるぅ」



川畑「あ はいはい じゃあ適当に詰めとくよ マツさんならいつもの所に居るかな 今会議中かも」



早織「はぁ~い じゃあお姉ちゃん達こっちだよぉ」



会釈し早織の後に続いた



エレナ「ねぇ早織ちゃん ここは何の倉庫なんだろ?」



早織「食べ物の倉庫だよ」



エレナ「ふ~ん」



御見内「きっと海外の輸入された食料系の保管倉庫だと思う ねえ早織ちゃんそうでしょ?」



早織「うん そうだよ 外国からお船で運ばれて来た食べ物がたっくさんあるんだ」



御見内「やっぱり」



エレナ「へぇ~ なるほど 輸入品の保管倉庫か これなら当分食べ物に困らなくていいね」



階段を下り、地下へと進むや保安所なるプレートが貼られたドアを早織が開いた。



中には数人の老若な男達の姿があった



早織「おはモーニング おいちゃん達ぃ~」



「お!早織」 「おはよ~早織ちゃん今日も朝から元気だねぇ~」



「あれ!?そちらさんは?」



体育会系かつ屈強な面々を見渡した御見内とエレナは皆に会釈した。



早織「早織のお友達でお姉ちゃんがエレナちゃんでこっちがおみないお兄ちゃんだよ」



「どうも~」 「初めましてぇ~」



早織「あれぇ~ ねぇ マツおじちゃんは?」



「あぁ マツさんなら今2階の会議室にいるよ」



早織「あ そう ありがと じゃあバイバイ」



「あ 早織 おじいちゃんの足は平気なのか?」



早織「う~んボチボチでんなぁ~ じゃあねぇ~ まったねぇ~」



「ハハハ 早織 それ使い方間違ってんぞ」



「ハハハハ おう」



エレナ「早織ちゃんって人気者なんだねぇ~」



御見内「ここのマスコットキャラクターだね」



照れ臭い反面ご満悦な表情を浮かべる早織がご機嫌良く軽やかに階段を駆け上がって行った。



そして2階に上がり早織が会議室のドアを開いた。



早織「マツおじちゃ~ん」



エレナ等も中を覗くや



10畳程の会議室は照明が消されていた。



そして代わりにプロジェクターらしきものがある動画を映し出していた。



「ぎゃあああああああぁ」



マツ「なんだ?後にしてくれ 早織」



暗い室内には4~5人程の男女がいる。



プロジェクターから映された映像から悲鳴があがり、隠しカメラで撮影されたのだろうブレまくりな映像を目にした御見内



「ぎゃああああああ~ いっそ楽に殺し…ぐぎゃゃゃあああ~」



マツ「美菜萌(みなも)」



ミリタリー系のズボンに黒いキャミ



キャップを被り、後ろで結ばれた髪をサイドテールで肩から前に垂らすスラッとした若き女性が慌ててその映像を消した。



美菜萌「すいません」 



マツ「早織 もういいそこに突っ立ってないで早く入りなさい もう少しで終わるからその辺で大人しく待ってるんだ 美菜萌 続けろ」



美菜萌「はい これが潜入する半田さんから先日送られて来た映像です 映像に映るB1の文字 これを見る限りでは… この箇所は地下だと思います っとなるとこの場所は皆が監禁されてるあの廃病院とはまた別の場所で行われてると考えられます」



「拷問、洗脳されてる場所とは別の場所…」



マツ「あぁ 確かに…清田のばあちゃんから聞いた話しではあの廃病院に地下はない」



「なら何処なんです?」



「ちょっと待って さっきの映像だと通路の横に下水が流れてたな ここに焦点を絞って調べてみればだいぶ場所も特定されるんじゃないか?」



「つ~か普通に下水処理場じゃない?」



「えぇ その線は濃厚だな この町に地下がある施設はそう多くはない 下水道と一緒となればもっと絞れる 少し探ってみようか?」



マツ「いや 動くのはもう少し待つ 今は半田からの情報を待とう」



「半田に望みを賭けたいところだが… 帰らぬ人にならなきゃいいがね…」



すると 御見内が中へと入り込んだ



御見内「すいません ちょっとよろしいですか?」



マツ「誰だおまえは?」



プロジェクターの静止画像前に立った御見内をその場の皆が注目した。



御見内「早織ちゃんと偶然出会った余所者の流れ者です いきなりやってきてなんなんですが 単刀直入に言います 俺達 皆さんに力を貸したくてやって来ました 仲間に加えて貰うまで帰りませんので宜しくお願いします」



エレナもそっと御見内の隣へと着けた。



「いきなり現れて何を… 誰なんだ君達は?いきなり来て信用…」



すると



マツ「いや… つい先程真鍋さんから連絡を受けた おまえ達2人がここへ来る事もその旨もな」



「マツさん 何処の馬の骨ともしらぬこいつらを信用するのですか?奴等の手先かもわからないですよ」



マツ「この2人は奴等から早織を救ってくれたそうなんだ それに現に早織もなついているそうだ 真鍋さんが言うんだから信用出来る相手だろう」



早織「このお姉ちゃんもお兄ちゃんも悪い人なんかじゃないもん」



美菜萌「…」



マツ「…だそうだ 真鍋さんからおまえ等の事情も聞いている 今は1人でも多くの戦力が欲しい所だ 手を貸して貰えればそれは助かるよ それともし奴等を壊滅に成功出来たら船どころか私達に出来る事なら何でもしよう」



御見内「いえ 渡航さえ出来ればそれだけで十分です」



マツ「そうか… 分かった ならまずは皆に名を聞かせてもらおうか」



御見内「はい 御見内 道です」



エレナ「野崎 エレナです」



マツ「御見内君と野崎さんか… 私の名は松尾だ 松尾郁治 宜しく」



会釈する2人



松尾郁治 66歳 通称マツ 現在定年を迎え故郷での隠居暮らしだが元は警視庁警備部警護課 通称SPの経歴を持つ



マツ「そしてあちらから…斉藤」



斉藤「斉藤です よろ」



斉藤 司 33歳 元消防官



マツ「その隣が井野さんでこの町の町長だ」



井野「ようこそ こんな町ですけど…」



井野 賢治 59歳 町長



マツ「それからその向かいが七海だ」



伊藤「はぁ~い お2人さん よろしくねぇ」



伊藤 七海 31歳 元お役所勤務



マツ「そして最後に一条だ」



一条「宜しくお願いします」



一条 美菜萌 23歳 むつ警察署 元婦人警官 巡査



マツ「下の者とはもう挨拶は済んだのか?」



御見内「えぇ ちょろっとだけですが」



マツ「追々紹介する まずは一言何かあれば聞かせてくれ」



御見内「え~ そうっすね まぁ 一言で簡単に言わせて貰いますと…その訳の分からない集団…」



「…軽くブチのめしてやります」

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