あるべき姿

勝利だギューちゃん

第1話

世間は冷たい。

氷のように・・・


人間は、自分が傷つけられるのは、絶対に嫌だけど、

他人に対しては何をしてもいいと思う生き物。

自分の行為を正当化し、自分に気に障るものは、

徹底的に叩きのめし、立ち直れなくする。


それを、「正義の行い」と、思っている。


俺は、そんな人間が嫌いになった。

俺のようなはみ出しものには、どうがんばっても、馴染めない。


アリはどんなに努力しても、アリなのだ。


そう、世間は冷たい。


そんなわけで、俺は田舎の山奥で、自給自足をしながら、

隠遁生活をしている。


ここはいい。

動物や鳥たちに囲まれて、静かに暮らしている。

まさに、理想的だ。


テレビや、パソコンや、電話などは、置いていない。

社会の出来事は、シャットアウトしたい。


自由には責任が伴う。

生きている限りは、嫌でも人と付き合わなければけない。

でも、周りは俺を、必要としていない。


うっとうしいだけの、存在・・・


憂さ晴らしの道具にしかすぎない。

このままいては、殺される。


その防衛本能もあり、俺は山奥にいる。


朝、日の出とともに起き、農作業をして食物を得る。

近くには、果物の木もあるし、川には魚もいる。


やもめ暮らしではあるが、食うには困らない。

今は、幸せだ。


そんなある日、真夜中にドアを叩く音がした。

最初は、無視していたが、あまりにも鳴りやまない。

仕方なく、俺はドアを開けた。


すると、そこには一組のカップルがいた。

女性のほうが、ぐったりとしていて、

男性は、もう汗でびしょびしょになっている。


息も切れている。


「すいません。一晩でいいんです。

休ませて下さい」

男は、必死に嘆願している。


普通なら追い返すのだが、この時の俺は、正常な判断が出来なかった。

このまま、追い返すのも仕方ない。


「わかったよ。入りなさい」

「ありがとうございます。」

俺はふたりを、客間へと案内した。


空いているので、客間と表記した。


「何も食べてないだろ?すぐに食事と着がえを用意するから」


俺は、適当に食事作り、2人分の着がえをもっていった。

後、タオルも大量に・・・


「着がけは、男物しかないけど、我慢してくれえよな。

後、この山で採れた、野菜と魚。

鍋で悪いけど、許してくれよな」

「いいえ、助かります」

男のほうは、律義に何度も礼を言っていた。


どうして、この山に来たのかは、プライベートな事なので、

聞くのはやめておいた。

また、来られても困るし・・・


女の方は、おそらく疲れていただけのようだ。

翌日には、元気になった。


「すいません。お世話になりました」

2人は、何度もお礼を言っていた。


「いや、気にしなくていいよ。気をつけてお帰り」

「あのう、改めてお礼を・・・」

やはり来たな。社交辞令が・・・


「気にしなくていいよ。それよりもう、無茶はさせてはだめだよ。」

俺はそう、男に言った、


ふたりは、何度もお辞儀をして、帰って行った。


「さてと、しばらく放浪するうか・・・」


俺は家の戸締りをして、山奥へと入って行った。

しばらくは戻らない。


やはり俺は、人とは関わらないほうが、いいようだ。


悪く言いたいのなら、言ってくれ。

その言葉は、そのまま返す。


あの2人は、俺を探しているかどうかは知らないが、

もう、関係ない。

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あるべき姿 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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