第38話 2度も過ちは繰り返さない

アサシンは暗殺特化の職業のためあまり派手なスキルはない。


だが、相手を翻弄し背後からの攻撃や奇襲にたけた職業である。


今の状況からしてアサシンの性能を生かして戦闘するのは難しい。周りに障害物等がなく奇襲ができない。


「葉留なら正面から向かって行くんだろうね--さあ、どうしよう」


桜はどう戦闘するか考えた。


「できるだけ真矢から離れて戦闘しないといけないし……遠くに引き寄せてやるしかない」


桜はオアシスにいる真矢から離れるため走り出した。


そしてデザートウルフにわざと見つかった。


デザートウルフは警戒心が強く敵を見つけると襲いかかる。


「きたきた!!いけるいける!!私ならできる!!」


デザートウルフの群れは雄叫びを上げながら一斉に襲いかかってきた。


「もう少し……今!」


桜はスキルを発動した。


「スキル!迅速」


迅速により目には見えない速さで移動した。


戦士職のクイックスタンスよりも早く、攻撃力低下のリスクもないアサシン職には必須のスキルである。


目の前で消えた敵を必死に探すが見つけられない。


それもそうだ。桜はデザートウルフたちの頭上にいた。


2つ目のスキルを発動した。


「スキル!真空斬波!」


真空斬波--飛ぶ斬撃で離れた敵を攻撃できる。


真空斬波によりデザートウルフ一体を倒した。残り9匹。


スキル回数制限があるため連発が出来ない。桜は短剣で残りを相手にしないといけない。


「ここからはスキルなしで倒す!」


アサシン職は身軽なため回避性能が高いが数が多いのとまだレベル1の桜は複数のデザートウルフに回避、防戦一方だった。


「くっ……多すぎて攻撃する隙がない、このままじゃジリ貧」


その頃真矢は敵の声に目を覚ました。


「……桜どこ?--あれってデザートウルフ!?桜が戦ってる!私も行かなくちゃ」


起き上がろうとしたが身体に力が入らない。まだ頭もくらくらしている。


「桜、わざと遠くで戦ってるんだ--この距離ならギリギリ届くかも!」


真矢は炎魔法を詠唱した。


「炎魔法……はあはあ、ファイアディザスター!」


詠唱と同時に空に炎の刃が現れた。


だが本調子ではないため刃の数が少ない。


桜とデザートウルフは炎魔法に気がついた。


炎の刃はデザートウルフに向かって放たれたが、命中したのは3匹ほどで後は回避された。


残り6匹は一斉に真矢に向かって走り出した。


「やばい!真矢に近づくな!!スキル迅速」


桜はスキルによりデザートウルフの先頭集団を追い越し、敵の正面に立った。


「桜!危ない!」


真矢は叫んだ。


「スキル!真空斬波!」


1匹命中。残り5匹。


ここで桜のスキルは回数制限を迎えた。


「桜!私はいいから逃げて!」


その言葉に桜は苛立ち真矢に。


「やめてよそういうの!もう私の前で誰も死んで欲しくないの!真矢、もっと自分を大切にしてよ」


真矢は言葉を失った。


「桜……」


「さあこい!全員私が倒してやる!アサシン舐めんな!」


桜そう敵に向けて叫んだ。


と同時に桜のルーンが光出した。レベル1から2、ルーンの文字がF《フェオ》からU《ウル》に変わった。


「レベルが上がった……」


だが喜んでる余裕はない。デザートウルフの猛攻が桜に襲いかかった。


「桜!」


敵が攻撃をやめた。そこに桜の姿はなかった。そしてデザートウルフは真矢に狙いを定めた。


「桜……嫌、死んじゃ嫌!!」


広い砂漠で真矢の声だけが響いていた。

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