伝説‥59話〜事情聴取と審議‥③
ここはオパール城の謁見の間。アイネはロウディにシェルズ城に協力しているトパーズの街の者の名前を教えた。
「トパーズの街にいるシェルズ城の関係者ですが、私が知る限りでは、リベルド・エルメ、カルラ・ニキス、ラフィル・コルド、そして、その他にも数名と名前と素性は分かりませんがその裏で指揮を取っている者がいます。」
「うむ。なるほど、裏で指揮を取っているという事は何らかの組織という事になるな。その者とは会った事があるのか?」
「はい。会った事はあります。ですが、いつも顔を隠していましたので顔は分かりません。ただ、声を聞けばわかると思います。」
「そうなると。声が分かるという事は、その者が男か女か分かるか?」
「はい。男の格好をし声色と話し方を変えていましたが、間違いなく女でした。」
「なるほどな。アイネ良く話してくれた。そうなるとナルザス。早急にトパーズの街を調べる必要がある。すぐに先遣隊を送る準備をしろ。」
「はい。承知しました。直ちに先遣隊をトパーズの街に送り調べたいと思います。」
「うむ。では、話を元に戻すとしよう。シュウに聞くが、ナルザスから聞いた話では、召喚された後ジルベイムに別の場所に連れていかれ、そこで何を聞いたのだ?」
「この前ナルザスさんにも話しましたが、ジルベイムが話した事が本当の事なのかは分かりません。」
「そうかもしれぬが、もし仮にジルベイムが言っていた事が事実ではないにしても、その事についてここで話し合い、それが事実か否かを判断したいと思っている。」
そう言われシュウは少し考えたが軽く深呼吸をすると、シュウは少し間を置き話し出した。
「俺達はジルベイムに、召喚された場所から書斎らしき場所に連れていかれました。そこで何で俺達を召喚したのかを説明していました。そこでジルベイムが言っていた事とは……。」
そう言うとシュウは目を閉じ思い出していた。
……『あなた方を無事召喚する事ができ嬉しい限りでございます。』
そう言うとジルベイムはシュウ達を見まわし、シュウ達は一瞬何が起きたのか理解する迄に数分かかり、ふとジルベイムの声にシュウは我に返り、
『……ここはいったいどこなんですか?それに確か俺は……。』
シュウはそう言うと両脇にクレイ・ディオンとマリリンがいたので一瞬夢を見ているのかと思い隣にいたクレイを思いっきり殴ってみた。
すると、クレイはいきなり殴られ回避できずよろけた。
『シュウ、めちゃくちゃ痛いやんけ!?いきなり何すんねん!!』
そう言いながらクレイは態勢を立て直した。
『あっ!いやクレイ悪い。夢を見ているんじゃないかと思ってな。痛がるって事は夢じゃないみたいだな。ははは……。』
『あのなぁ、シュウ。ん?……なんや、ここは?』
そう言うと辺りをキョロキョロと見渡した。
『はい。これは夢ではありません。私はジルベイム・キリュウと申します。あなた方を召喚魔導師に頼み召喚させて頂きました。』
『俺は……。』
シュウは自分のステータス画面がある事に気づき、
『……シュウ・ライオルス。それで何で俺達を召喚したんだ?』
そう話をしているとマリリンは呆然としていたがシュウの声で我に返った。そして、マリリンとクレイはシュウが言った事に頷き話を聞いていた。
『召喚した理由は、あなた方にこの世界を救って欲しいと思い召喚しました。』
『それはどういう事なの?でも、変よね?さっき私達は召喚され祭壇に立っていた。それなのに何故ここに転移してきたの?それに、確か私達を召喚した人達同士で戦っていたように見えたけど?』
『マリリンの言う通りや。確かに変やな。俺達を召喚した後に何が起きたんや?』
『クレイの言う通り、あのあと何が起きたんだ?それに、俺達を何の為に、ここにテレポートさせたんだ?』
ジルベイムはシュウ達に聞かれ何と答えたらいいか一瞬考えた後、
『それは……ここにテレポートしてきた理由ですが、あなた方をお守りする為でございます。』
(んー……何なんだ?この違和感は、俺達がこの世界を救う?そして、俺達をさっきの奴らから守る為にここへテレポートしてきたって?どう考えても変だろう。そのぐらいの力があるなら別に俺達を召喚しなくてもいいんじゃないのか。それに、このジルベイムを見ていると明らかに何かから逃げ何かを隠そうとしてるように思える。見た目で判断したくないが、このジルベイムを見ていると信用できないような、なんとも言えない雰囲気が漂ってきてるしな。)
そう話をしているとクレイが小声でシュウに話し掛けた。
『シュウ。何や変ちゃうか?』
『クレイ。お前もそう思うか?』
『ああ、ジルベイムの言うとる事と、さっきの場所での事がどうも結びつかん。』
『どうする?ここはもう少し様子を見るか?』
『シュウ。いや、まずここは脱出するんが正解やろ。ここでタイミングを間違えたら、逃げる方が困難になるんは間違いないやろ。』
『確かにそうね。クレイの言う通り、ここは強行突破してでも逃げましょう。』
『そうだな。だが、どうする?俺達を召喚した奴らを放っておくのか?見た感じ俺達の敵じゃなさそうだったけど?』
『そやな。確かに放っとく訳にいかんしな。それにアイツらが召喚魔導師やったら、元の世界に帰る方法を知っとるかもしれん。そやから俺達を召喚した奴らもこっから連れて脱出するってのはどうや?』
クレイがそう言うと、シュウとマリリンはジルベイムに気づかれない程度に軽く頷いた。
そして、シュウ達はジルベイムに詰め寄り更に問い詰めると、
『……もしや疑っているのでしょうか?私はあなた方を真の勇者と思っていましたが?』
『いきなり真の勇者だの、世界を救って欲しいだの言われても、はいそうですかって納得できるわけないだろう。それにもっと納得いく理由を言ってくれない限り俺達は信用するわけにはいかない!』
『なるほど、あなた方がこの世界を救わないと言うのであれば、仕方ない。今ここで死んでいただく。そして、新たに他の勇者を召喚するだけです。』
『なるほど。とうとう本性を現したみたいだな。』
『そうみたいね。シュウ、クレイどうする?』
『そんなもん最初っから決まっとるやんけ。ここは強行突破しかあらへんやろ!』
クレイがそう言うと、ジルベイムは杖を翳しシュウ達目掛け氷の魔法を放った。
シュウは咄嗟に左手を翳し円を描くと、
《円陣炎障壁!!》
シュウ達を炎の壁が円を描き囲むように覆うと、ジルベイムの氷の魔法をかき消した。
すかさずクレイはジルベイムの懐に入り、
《ヘビィー オブ バイソン!!》
と言いながら左脚を軸にし、身体を斜め前に倒すとジルベイムの顎目掛け思いっきり右脚を斜め後ろに蹴りあげた。
するとジルベイムは、一瞬の事で何が起きたか分からないまま、なす術なく攻撃を受けその場に倒れた。
マリリンはジルベイムがまだ動き出さないかと恐る恐る覗き込んで見たが、クレイにやられ既に失神していた。
『ふぅ。それで、ここからどうやって俺達が召喚された場所まで行くつもりだ?』
『シュウ。それなら、成功するか分からないけど。もしかしたら、私の術式転送魔法でそこまで転送できるかもしれないけど?』
『なるほど。一か八かそれに賭けてみるしかないか。』
そう言うとクレイとマリリンは頷き、マリリンは術式転送魔法を使い、その場から元いた地下の召喚の祭壇を思い浮かべると、シュウ達3人はその場から消えた。
そして、シュウ達は地下の召喚の祭壇に転移するまでに2度失敗し、この城の内部の何処かに転移し続け、やっと3度目に成功し召喚の祭壇に辿りつき、ダルナド達と合流した。
……そしてシュウは目を開けると、
「……ジルベイムは、明らかに今考えてもおかしな事を言っていました。俺達を召喚した理由が世界を救う為、そして地下の召喚の祭壇から書斎らしき場所にテレポートした理由が俺達を守る為だと。ですが、その割には明らかに何かから逃げ何かを隠そうとしてるように思えました。そうしなければいけない理由があるならば別だとは思いますが、俺達が問い詰めた時のジルベイムの反応は、特別な理由があるようにはみえませんでした。」
「うむ。なるほど、確かにおかしな事を言っているな。」
そして、シュウはその後シェルズ城から脱出した後、何が起き何があったのかを話した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます