第11話

 

「グギギッ。 オトコ ハ コロシテクッテ オンナ ハ オレサマガツカッテヤロウ。 グギギギ!」


「へぇ。 想像した通りのモンスターって感じだな」


「あなたのような下劣なモンスターには触れられたくもありませんわね。 ユウトと私がここで討伐しますわ!」


「イキノイイオンナダ。 ツカイガイガアリソウダナ。 グギャギャギャギャ。 マズハジャマナオトコヲコロス」


「やれるもんならやってみな!」



 不味い、不味いぞ! 勇者達と将軍ジェネラルゴブリンの戦闘が始まってまった。 操ってるのはソルジャーゴブリンだと思っていたが。 ここまで進化した奴がいるとは……。



「ちょっと! 将軍ジェネラルゴブリンって何よ!?」


「ゴブリンが進化を繰り返して辿り着く高位種だ。 討伐にはシルバー級冒険者パーティー以上が必要な相手だぞ。 あそこまでいくとゴブリンとは最早別物だな」


「何でそんなモンスターが、こんな所にいるのよ!」


「そんなこと俺が知るわけないだろ。 だがアイツは勇者達でもキツイんじゃないのか?」



 勇者が将軍ジェネラルゴブリンと斬り合いをしている。 3ガレリ程の巨体から繰り出される剣を巧みに捌きながら、隙をつき攻撃している。 だが、あれじゃダメだ。 100匹以上のゴブリンを斬って、剣の切れ味が落ちている。 それに将軍ジェネラルゴブリンの皮膚が厚すぎて効いてない。



「グギャギャ! チョコマカトヨケルノハイイガ、ソンナコウゲキジャオレサマニハキカナイナ!」


「くそッ、 切れ味が悪くなって刃筋が立たない!」


「私の魔法もほとんど効果がありませんわ! それにこれ以上、魔力を使ったら回復魔法が使えなくなってしまいます」



 あれじゃジリ貧だな。 このままじゃ有効打がないまま押し切られちまうな。あの様子じゃ勇者に奥の手もなさそうだし。



「まずいわ! 徐々に押され始めているわ!」


「もうバレないようにってのは無理だな。 俺は加勢しに行くぞ! 勇者が死んじまったら元も子もないんじゃないか?」


「……くっ! 勇者様達に助太刀するわよ!」



 俺とライラが勇者達を助太刀しに飛び出そうとした時、俺の隣が突然爆ぜた。俺は軽く吹き飛ばされ地面を転がる。



「危ねえじゃねえか! 誰だ!?」


「グギギギ。 邪魔モノガコッチニモ。 アノ馬鹿ハ気付イテナイガナ。 アノ馬鹿ノ方ニハ行カセラレナイ」


「何よこいつ!」


「コイツは!……魔術士メイジゴブリンだ! 高位進化モンスターが何で二体もいやがる!!」


「なんですって!」



 どうなってやがるんだ!? 魔術士メイジゴブリンは将軍ジェネラルゴブリンと同等のモンスターだぞ。 同時に出現するなんて異常事態だ。 それもコイツら連携してやがるのか? 高位モンスター同士が組むなんて聞いたことないぞ。



「ライラ、どうやら勇者の助太刀はコイツを倒さなきゃいけないようだぞ」


「そのようね。 やるわよトルス」



 ライラが身体強化魔法を使い突っ込んでいく。 ライラは一足で魔術士メイジゴブリンとの距離をゼロまで詰める。 その勢いのままに杖で顔面めがけてフルスイングするが、魔術士メイジゴブリンの太い腕に防がれてしまった。ライラはそのまま魔術士メイジゴブリンと殴り合いを始める。


 しっかし、よくもまあ、あんな巨体と殴り合えるな。 どんだけ魔力使って身体能力を上げてるんだか。 高位モンスターと正面切って殴り合いをするプリーストなんて信じられないな。


 さて、俺はどうしたもんかね。 武器はスローイングダガーが残り13本。 あとは倒したゴブリンが使ってた、地面に転がってる武器ぐらいか……。



「ライラ、離れろ!」



 俺はスローイングダガーを5本纏めて投げる。全て防がれてしまったが、その隙に地面に落ちている槍を拾い魔術士ゴブリンの背後に回り込んだ。



「やぁゴブリン君。 君のお尻の穴は、外皮程頑丈かなっ!」



 俺は槍で魔術士ゴブリンの尻穴目掛けて突く。 いくら外側が頑丈でも、身体には鍛えられない弱点がある。 尻穴はその一つだろう。



「ゴブリンの串刺し一丁!!」





 ――ガキンッ!! なに!?



「グギギ! ソノ程度ノ攻撃デ私ノ守リハ破レナイナ」



 魔術士ゴブリンに槍が当たる直前、何かに槍が当たって折れる。 コイツ、防御魔法使ってやがったのか! やはり高位進化モンスターは厄介だな。

 俺は一旦ライラの所まで下がる。



「アイツかなり厄介ね!」


「ああ。 流石は高位進化モンスターってとこだな。 せてめ俺の武器があればな……」


ブロンズ級が何言ってるのよ。 貴方に武器があっても……! 」


「やべえ! アイツ魔法を!」



魔道士ゴブリンの前に魔法陣が浮かぶ。 あれはまずいぞ!

回避しなければ!



「グギギギ! モウ遅イ、エクスプロード!!」


「プロテクトッ!!」



 ――ズドオォン!!



 俺達の周りに火花が散って、数秒後に爆発が起こった。爆発の衝撃と音で視界がブラックアウトしそうになるのをなんとか堪える。



「ハァ、ハァ……。 なんとか……間に合ったわね」


「グギギ。 魔法デ防イダカ」



 くそっ!爆音で耳鳴りがする……。朦朧とした意識が徐々に戻る。 腕が二本に足も二本、五体満足らしいな。どうやら、ライラの防御魔法で致命傷は避けられたようだ。



「助かったぜライラ」


「どうも。 でも今の魔法で魔力がほぼ底を尽きたわ…… 」


「……そうか。 武器がありさえすれば……」


「さっきから武器、武器って。 ……本当に武器があればなんとかなるの?」


「ああ。なんとかしてやるぜ」


「どうやって?」


「それは冒険者の秘密ってやつだ」



 武器があればなんとか出来る。 だがそれは "あれば" の話だ。

 俺の武器はここには無い。 無い物ねだりは冒険者ではご法度だ。さあどうやってこの場を切り抜ける!? 考えろ……考えるんだ!



「…ゎょ。 るわよ!」


「ん? なんだライラ?」


「貴方の武器、ここにあるわよ」

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