第4話
やっと痛みが落ち着いてきた。 立っているのも辛かったので、近くにあった椅子にもたれかかる。
「おい、これ外してくれよ」
「外す訳ないでしょ。 貴方みたいな犯罪者を野放しにする訳にはいかないの。 それに、その指輪は私の魔力で作動するけど私じゃ外せないし」
ライラの言う通り過ぎて何も言えない。でもよ、俺が犯した罪の罰が、呪いの装備より悪質な指輪つけて、カルト女と仕事ってのはあんまりだぜ。
「それに、か弱くてうら若き乙女の私が危険だもの。 それくらいの処置は当然よね」
「おいおい!どこにそんな物好きがいるんだ? だれが、あんたみたいな魔力ゴリラなんか…… っを!」
「何か言ったかしら?」
「いやいや! 華麗過ぎて隣にいるとドキドキしちゃうなって! あはははは……」
思わず口が滑っちまった。 殺気と魔力全力でぶつけてきやがって、死ぬかと思ったぜ。 ゴリラは禁句だな。 しかし、この指輪でいよいよ逃げられなくなっちまったな。
「しょうがねぇから、勇者の話に戻ろうぜ。 100歩譲って
「言葉の通りよ。サトウユウトは異世界から召喚 されたの」
「だからそれが変だろ! 異世界って何だよ! 召喚だ? そんな高位の時空魔法は聞いたことがない。 それにあったとしても馬鹿みたいな魔力が必要な筈だ。 全てに現実味がないんだよ」
「異世界から来たってのは本人がそう言ったし、持ち物、知識からもそういう結果になったの。 召喚については王家の秘術よ。貴方に教えることは出来ない」
やっぱり胡散臭い。どれ一つ俺が確認出来るものがない。やっぱりカルト女の妄想話なのかもしれないな。
「それに、黒髪黒目ってのが怪しいな。 この大地の殆どの種族が黒髪黒目なんて特徴は持ってないだろ。 ……魔族を除いてな」
「貴方は勇者が魔族だと疑っているのね」
「誰もが疑うと思うがな。 時空魔法に失敗して魔族でも召喚しちまったんじゃないのか? 魔族も死にたくないから、話を合わせてるとか」
「残念だけどそれはないわね。 彼は光属性の魔法適正持ちだし、聖属性魔法が一切効かなかったの」
魔族は魔法適正がかなり高い種族だが、光属性の適正は全くない。 それに奴等の弱点は聖属性ってことからすると、魔族って可能性はほぼなくなるな。
「じゃあ超希少な魔族だったり、魔族との他の種族のハーフって可能性は」
「そんな可能性低過ぎて考えてないわ。 彼の話だと、彼の世界じゃ黒髪黒目が一般的らしいわよ。 それに彼が誰であれ、勇者ってことは間違いないの」
「なぜわかる?」
「何言っても信じなさそうだから、教えてあげるわ。 彼のユニーク
……誰でもいいから、嘘だと言って欲しいもんだ。
でもあり得るのか? 勇者が実在するなんて。
「……でも、でもよ!」
「でもも、なにも無いの。 これは全て真実なの。 受け止めなさい」
仮に、仮にだ。本当に勇者が実在するのなら、魔王が復活したって話も本当になっちまう。 そしたら俺は魔王と勇者の戦いに巻き込まれつつあるってことだぞ。
「貴方、私を可愛くて頭のイカれたオカルト女だと思ってるわよね?」
「……まぁな」
そりゃあ、こんな話をされたら誰だって思うだろう。あと可愛いは思ってない。
「そんな女が何を言っても、貴方は信じないでしょうね。 じゃあ実物を見てみる?」
「何のだよ?」
「決まってるでしょ。 この世界に召喚された勇者様、サトウユウトをよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます