第221話 胸がなければパンツを見せればいいじゃない

「あ、お兄ちゃーん! 急にどうしたのー?」

「ルミ、久しぶり。ちょっと相談したい事があってさ」


 ユーリヤとイロナを連れてエルフの村へとやってきた。

 先ずはエルフの長老、サロモンさんに挨拶しようとしたのだが、その前にルミが俺たちに気付いて走ってくる。


「相談? お兄ちゃんがルミに? ……あ、もしかして、そっちの無駄に胸だけが育ったエロフさんが変な事をしたから困っているとか?」

「ちょっとお嬢ちゃん。エロフって何よ」

「貴方みたいに、エッチなエルフの事に決まってるでしょっ!」

「エッチな……そうね。イロナちゃんの身体が魅力的過ぎて、ついさっきも、ヘンリーがイロナちゃんの胸を触ってきたのよねー。で、いっぱいサービスしてあげたら、ヘンリーが時空魔法を教えてくれるんだよねー」

「なっ!? じゃ、じゃあ私もっ! お兄ちゃん、ルミの胸も触ってっ!」

「触って……って、チビッ子エルフちゃんのどこに触る胸があるのかしらー?」


 って、ルミとイロナは会って早々にケンカ腰なのかよ。

 エルフとダークエルフの確執なのか、それとも初対面の時にイロナがルミをからかった事が、いまだに尾を引いているのか。

 何にせよ、エルフとダークエルフが同じ村で住んで居るのだから、変ないざこざは起こさないで欲しい。


「二人とも止めろって。第一、俺は時空魔法を教えないって言っているだろ?」

「でも、イロナちゃんの胸を触り続けたのは事実だよねー」

「う……まぁ、そうだけど」


 イロナが俺を攻めてくるのかと思ったら、チラッとルミに目をやる。

 もちろんルミもイロナの視線には気付いていて、対抗するかのように俺を見つめてきた。


「お、お兄ちゃん! じゃあ、ルミはパンツだよっ! どう? 今日はピンク色だよっ!」

「ルミ……女の子が自らスカートを捲り上げるのはどうなんだ? ユーリヤが真似しても困るし、止めてくれないか?」

「ちょ、ちょっと、お兄ちゃん! ルミのパンツだよ!? 思いっきり見せているのに、どうしてそんなに冷静なのっ!?」


 イロナの大人パンツはともかく、ルミの子供パンツを見せられた所で、俺にどうしろと。

 よく分からん戦いで、ぐぬぬ……となっているルミに真面目なトーンで声を掛け、サロモンさんとダークエルフの長、ヨセフィーナさんを呼んでもらった。


「魔術師殿。お久しぶりですな」

「あら、お兄さん。私に会いに来てくれるなんて嬉しいねぇ」

「お二人とも、お久しぶりです。今日は、ルミも含めた三人に相談があってやってきました」


 場所をサロモンさんの家に変え、俺とユーリヤ、ルミとサロモンさん、ヨセフィーナさんの五人でテーブルを囲む。

 ちなみに、イロナはお母さん――ヴィルヘルミーナさんの所へ行ってもらった。

 しかし、それにしても、ユーリヤが俺の膝の上に座るのはいつもの事だが、ルミまで俺の膝の上に座って居るのは、どういう事だろうか。

 俺の右脚にユーリヤ、左脚にルミの小さなお尻が乗り、対面にはお爺さんエルフと美人エロダークエルフ……って、まぁいいや。話を進めよう。


「早速ですが、このエルフの村から、森を挟んで南東に人間の村があるのを御存知でしょうか」

「一応、村があるのは知っておるよ。小麦畑が広がる良い村じゃの」

「へぇ、そんな村があったんだね。そこに住む人間は多いのかい?」


 千歳を越えるサロモンさんは俺が治める事になったマックート村の事を知って居て、エルフの村へ引っ越してきたばかりのヨセフィーナさんは知らない。

 一先ず想定通りだ。


「村に住む人間はあまり多くはないのですが、サロモンさんの仰る通り、小麦や野菜といった農作物や酪農なんかを営む小さな村です。で、つい先日、その村の領主になったんですよ」

「ん? ……お兄ちゃん。誰が領主になったの?」

「え? だから、俺がだよ」

「えぇっ!? お兄ちゃんが!? 宮廷魔術士じゃなかったの!?」

「いや、いろいろあってさ。ルミやヨセフィーナさんと一緒に魔族を倒しただろ? それ以前にも魔族を倒したり、王都を危機から救ったりしたから、褒美だって言われて領地が与えられちゃってさ」

「へぇぇぇー。お兄ちゃん、凄ーい! じゃ、じゃあ……も、もしもルミと結婚したら、エルフと人間との交流も出来そうだよね」


 ん? ルミは何を言っているんだろう。

 まぁエルフと人間というか、エルフの村とマックート村との交流は望む所だが……って、何でモジモジしているんだ? 俺の脚に擦り付けるようにして、体を揺らすのはやめて欲しいんだが。


「ほぉ……なるほどのぉ」

「へぇ……これは、イロナに伝えておかないとねぇ」

「ん? 当然、イロナは俺が領主だって事は知っているけど?」


 俺の指摘に、ヨセフィーナさんが「そういう事じゃないんだけどねぇ」とか言いながら、話をはぐらかす。

 よく分からないが、一先ず就任パーティを開く予定だという事を伝え、日程を次の週末にするという事が決まった。

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