第111話 巨乳体操

「シャロン。ここなら俺とユーリヤしか居ないし、そのフードが付いたローブを脱いでも大丈夫じゃないか?」

「そうですね。ありがとうございます」


 窓すら無い完全な密室の中なので、周囲の目を気にする必要がないため、シャロンが目深に被ったフードを上げ、ローブを脱ぐ。

 うん。普段、シャロンは顔があんまり見えないけど、せっかく可愛いのだから、出した方が絶対に良い。

 ローブの下は袖の無い薄着なので、前からも上からも横からも、肌色の大きな膨らみがよく見える。


「よし、じゃあまずはシャロンの運動能力を見てみようと思うんだが、その前に準備体操だ」

「分かりました」

「じゃあ、俺と同じ動きをしてくれ」


 先ずは手首や腕を良く伸ばし、肩もしっかり回して、先ずは腕を中心にストレッチをする。

 その次は脚のストレッチという事で、先ずは屈伸運動から。膝を曲げて、伸ばして、曲げて……


「ぐれいとぉぉぉっ!」

「え? ヘンリーさん、どうしたんですかっ!?」


 しまった。

 シャロンが膝を曲げれば、大きな胸が柔らかそうにムニュンと形を変え、膝を伸ばせば、下を向いているから大きな谷間が丸見えになり、気付けば大声で大絶賛してしまっていた。


「にーに。わたし、じょーず?」

「うん。流石、ユーリヤ。一度見ただけで屈伸をマスターするなんて、凄いね」


 危ない、危ない。

 楽しそうだからと、一緒にストレッチの真似をしていたユーリヤのおかげで、シャロンの素晴らしい胸に思わず心から叫んでしまったのではなく、ユーリヤを褒めたという事に出来た。

 士官学校時代、実技の授業前に必ずやる準備体操を真面目にしていただけで、こんな事になるとは思わなかったよ。


「じゃあ次は、脚を開いて、右足は真っ直ぐで、左足をぐっと曲げる伸脚ぅぅぅっ!?」


 いやいやいや、どうしてシャロンは短いスカートなんだよっ!

 これも普通の準備体操だからね? 別に俺が狙ってやったんじゃないんだよっ!?

 まぁそれはさておき、シャロンは淡いピンクか。ありがとうございますっ!

 ちなみに、ユーリヤも短いスカートだから同じ事になっているんだけど、まぁ本人が楽しそうだから良いだろう。


「で、次は脚を閉じて、そのまま真っ直ぐ上に、小さくジャンプ……ぶふぉぁっ」


 いや、これは何も言うまい。

 ……よし。これは士官学校で昔から行われている由緒正しき準備体操であり、俺が考えた巨乳体操などではないので、ニーナとジェーンにも訓練前の義務としよう。

 最後に深呼吸をして、本当はここから軽いジョギングになるんだけど、流石に室内なので省略する。


「これで準備体操は終わりだ。じゃあ、シャロンの運動能力を見てみようか」

「え、えっと、今すぐですか? 少し休憩を……」


 ……マジか。

 資料庫勤めが長いからか、シャロンは運動不足ではないだろうか。

 冗談抜きにただの準備体操だし、ユーリヤなんて「ねー、にーに。続きはー? もっとあそぼー?」って、一人で飛び跳ねているんだが。

 とりあえず、剣術以前に基礎体力作りからだな。

 これでは、旅に連れて行く事は難しい……まぁ最終手段としては、瞬間移動で連れて行く事も出来るけどさ。


「……じゃあ、身体能力の件は後にして、休憩を兼ねて剣の持ち方を教えようか」

「……はい、お願いします」


 本当は立ってやるべき事だが、胸が重いからかシャロンの息が少し荒いので、椅子に座らせ、具現化魔法で作った刃の無いショートソードを渡してみる。


「これが剣……重いですね」

「……そ、そうか。とはいえ、剣くらい扱えないと、獣人村までの道のりは連れていけないからな。頑張ろうか」

「はい、先生!」


 せ、先生だと!? 何だ、この響きは?

 年下にしか見えないロリ巨乳から先生と呼ばれた時の、このこそばゆい感じ……こ、これは一体!?


「先生。持ち方はこんな感じですか?」

「先生。視線はどこを向けば」

「先生。足はどうしたら良いんですか?」


 シャロンが俺の事を先生と呼び続けていたからか、


「せんせー! にーに、せんせー!」


 ユーリヤまでもが、俺の事を先生と呼び出した。

 先生……そうか、俺は先生なんだっ!

 俺は先生として、シャロンを立派な剣士に育ててみせるっ!


『いや、ヘンリーさん。趣旨が変わってますからね? ヘンリーさーん!』


 アオイのツッコミをスルーして、シャロンの指導にあたる。


「よし、シャロン。剣の持ち方は少しずつサマになってきた。次は足の運びを練習するぞ!」

「はい、先生!」


 俺とシャロンとユーリヤが、狭い部屋の中でちょこまかと動き続ける。

 だが、先生と呼ばれて浮かれていた俺は、すっかり失念していた。

 ここが窓すらない密室で、体力の無いシャロンが水分補給すらしていない事を。


「せ、先生。私、何だか変なんです……身体が、身体が熱いですぅ」

「しゃ、シャロン!? シャロン!? ……ヒール!」


 暑さで目を回してしまったシャロンを具現化魔法で作ったベッドへ寝かせると、慌てて風魔法と水魔法を使って室内を涼しくする。

 ついでに水とコップを作りだし、暫くシャロンを介抱する事にした。

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