第15話 パンツを賭けろ!(制服編)

「ソフィアは僕の大切なチームメイトだ。彼女に何か用事があるのなら、この僕、オリバー=カーソンが話を聞こうじゃないか」


 突然オリバーと名乗る男が現れ、ソフィアを庇うように俺の前に割り込んできた。

 何のチームメンバーかは知らないが、どうやら同級生らしいし、ソフィアの恋人だろうか。


「……オリバー。ウチは今、この人と話があるの。勝手な事をしないでくれるかしら」

「待ちたまえ、ソフィア君。見たかい、この男の目を。僕には分かる。この男は、制服の上からでもソフィア君の事をエロい目で見ている。貴族であり、名門ロックフェラー家の令嬢である君を、どこの馬の骨とも知れない奴の視界に、大切な君を入れる訳にはいかないんだ」


 いや、エロい目で見たくても、ソフィアは服の上からでは起伏も何も分からないような体型なので、見ようが無いと思うのだが。

 しかし、このオリバーとか言う男……家柄を自分の評価と勘違いしている奴は戦闘科にも居たけど、その典型だな。


「アンタ……言っておくけど、ウチは脱いだら凄いのよ!?」

「ソフィアは脱いでも何も……いや、何でも無い」


 未だ何も言っていないのに、目を見ただけで俺が何を言いたいか分かるとは。

 ソフィア、やるじゃないか。ただ、凄く冷たい視線が返って来たけど。

 だが、ソフィアはソフィアで、オリバーの事を完全に無視しているが、この二人は一体どういう関係なんだろうか。

 ただの同級生よりは近しい気がするし、とはいえ恋人関係にも見えないが。


「ところで、こいつはソフィアの友人か? だったら、俺とソフィアの話を邪魔しない様に行ってくれないか?」

「違うわよ。学年は同じだけどコースも違うし、そもそも昨日選抜チームに選ばれて、初めて名前を知ったくらいなんだから」

「選抜チーム? ……それって、魔法大会の?」

「もちろん。ウチは二年生代表として魔法大会に出場するけど、アンタはどうなの? 正直、あんな勝ち方は魔法大会では通用しないでしょうけどね」


 あんな勝ち方……ソフィアが気絶している間にパンツを見た事か? それとも、ソフィアが詠唱中にダッシュで近寄って物理攻撃した事か?


「あなたとハー君との間に何があったか知らないけど、ハー君は凄いんだよ! もちろん魔法大会にだってエリーと一緒に出るんだもん! 二年生になんて絶対に負けないんだもん!」

「ほぉ。聞き捨てなりませんね。昔の事とはいえ、そちらの男は僕のソフィアと何かあったんですか?」

「ちょっと待ちなさいよ。何が、僕のソフィアよ。ちょっと魔法が出来るからって、調子に乗らないでっ!」


 おぉっと。エリーとオリバーが混ざってきたから、非常にカオスな状態になってきた。

 ここは、混沌に乗じて俺もソフィアに宣言しておくべきだな。


「よし、じゃあ魔法大会で俺たちが勝ったら、ギルドでの約束を学校の制服姿でも適用する事。いいな?」

「ちょ、ちょっと、どさくさに紛れて何を言っているのよ!」

「ふっふっふ。言っておくが、ソフィアは俺に借りがあるんだぜ? もしも俺たちに勝てたら、例の約束を無かった事にしてやるよ」

「くっ……か、勝てば良いんでしょ、勝てばっ! 絶対に負けないんだからっ!」


 良し。これで、ソフィアの制服姿でパンツが見られるようになったも同然だ。

 はっきり言って、ソフィアレベルが三人集まった所で敵じゃないからな。魔法大会が待ち遠しいぜっ!


『あの、確かに彼女になら私が何も手伝わなくても勝てるのでしょうけど、だからこそ余計にヘンリーさんのゲスさが滲み出てるんですけど』

(いやいや、これは魔法大会へのモチベーションを上げるための、自分へのご褒美だよ。ただ勝つよりも、何か賞品が有った方がやる気が出るだろ?)

『それが女の子のパンツですか……せっかく勇者をも凌ぐかもしれない才能がありそうなのに』


 だから、勇者を見た事あるのかよ!

 まるで勇者をよく知っているかのような、アオイのいつもの物言いに突っ込もうとした所で、


「このっ! また僕のソフィアと喋ったな!? 約束しろ! 僕が勝ったら、二度とソフィアの視界に入らないと!」

「おぅ、いいぜ」


 またもやオリバーが割って入ってくる。

 一先ず、二つ返事で約束すると、


「今の話、忘れないように。では、当日を楽しみにしていますよ」


 そう言い残して、先に歩いて行ったソフィアをオリバーが追いかけて行った。

 ソフィアも変なのに絡まれているみたいだし、あのオリバーって男の鼻をへし折ってやろう。


「ハー君。最後に何だか凄い約束をしていたみたいだけど、大丈夫?」

「ん? ようは勝てば良いんだよ。大丈夫、大丈夫」

「でも、エリーたち、まだメンバーも揃ってないよ? 最悪不戦敗も有り得ちゃうよぉー」

「……しまった! 三人目のメンバーの事を、すっかり忘れてたーっ! エリー、どうしよう!?」

「えっ!? そんなのエリーも分からないよぉ」


 今更ながらに思い返せば、三人目のメンバーをどうするか、食堂でお茶でも飲みながらじっくり考えようという話をしていたのだ。

 一先ず、当初の目的のために、飲み物を買ってテーブルへ。

 エリーに基礎魔法コースの生徒の事を教えてもらう。


「ダーシーちゃんは精霊使いクラスなんだけど、ちょっと魔法が苦手みたいなんだー」


「それからー、エヴァちゃんは僧侶クラスなんだけど、ゴーストや悪魔っていうのが怖いんだってー」


「あとはねー、トリニティちゃんは最近料理に凝ってるって言っていたよー。週末になると、美味しいご飯屋さんを巡って、勉強しているんだってー」


 なるほど……と、エリーの話を聞いていたけれど、最初は未だ良かったのだが、話が進んで行くにつれて、段々とただの雑談になっていた。

 何だよ、ご飯屋巡りって。魔法大会の話はどこへ行ったんだ。


「……つまり、纏めると三人目として代表に入ってくれそうなメンバーは、現時点では候補すら分からないって事か」

「うーん。そう、かな。みんな痛いの嫌だろうしね」

「俺が全部守って見せる……って言っても、すぐには信じてくれないだろうしな」

「エリーはハー君の事を信じているよ! 格好良い騎士様みたいに、エリーの事を守ってくれるんだもん」


 エリーが顔を輝かせ、熱っぽい瞳で見つめてきたかと思うと、突然距離が近くなる。

 小さなテーブルを挟んで座っているので、額がぶつかってしまいそうだ。


「お、おぅ。任せとけ」

「うんっ! ……あ、そうだ。確かハー君って、召喚士なんだよね? 三人目のメンバーを召喚魔法で呼んじゃうっていうのは、どーかなー?」

「召喚魔法で三人目のメンバーを?」

「ダメなのかなー? 魔法大会だし、魔法で呼んで、ハー君がコントロールするのなら良さそうな気がするけど」

「……なるほど。確かに、有りかもしれないな。エリー、悪いけどイザベル先生にルール上問題ないか聞いてきてくれるか? 俺は魔法訓練室で召喚魔法を使ってくる」

「分かったー! 行ってくるねー!」


 エリーが嬉しそうに駆け出して行く。


(という訳で、アオイ。召喚魔法で魔法に強い人物を呼び出したいんだが、どうやったら出来る?)

『……あの、逆に聞きたいんですけど、召喚魔法って何ですか?』

(えぇっ!? ど、どうしたんだ!? アオイは色んな魔法に精通しているんじゃなかったのか!?)

『魔法には詳しいですよ。大賢者と呼ばれたくらいですから。ですが、私は召喚魔法っていう魔法なんて、聞いた事が無いんですけど』

(いやいや、そんなはずないだろ? ……ほら、見てみろよ。入門用の魔導書にもちゃんと載っているしさ、それにアオイだって召喚魔法で呼び出したんだよ!?)


 魔導書の召喚魔法の章を開くと、俺が使った「サモン」の魔法が載っており、簡単ながらも解説が書かれている。

 比較的新しい魔法で、遠く離れた場所に居る幻獣や魔獣を召喚し、使役する――と。


『んー、ですが、その魔法陣? とやらも知らないですねー。解説にも書かれている通り、新しい魔法――私が現役の頃より後に作られた魔法なんだと思いますよ』

(マジかよ……)


 自信たっぷりにエリーへ任せろと言ってしまったので、とりあえず魔法訓練室へ移動し、自力で召喚魔法を使ってみる事にした。

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