第6話 1週間

「おかえり」


「……」


 私がここに来てからおよそ1週間が経った。


 私は何をするわけでもなく、ただ自分のしたいことを好き勝手に過ごしていた。


 誰かの心を垣間見て、その心と繋がる魂に横槍を入れるような、そんな無意味な時間。


「今日もまた憂さ晴らしかい?」


「その言い方は止めて。なんだか私が悪人みたい」


「これは失礼」


 そう言って彼は私にアイスを差し出してきた。


 空腹なんてもう感じないのに、おかしな話だ。


「ありがと」


 私は彼の隣に腰かけて、貰ったアイスを口にする。


 日によってこのアイスは味が変わるので、正直嫌いじゃない。


「今日はどんな心を見てきたんだい?」


「とんだ幸せ者の話よ。人生はプラスに終わるようにできているとか言っちゃうような偽善者様といったところかしらね。少なくとも私はちょっといいことがあったからといってそれまでのマイナスが帳消しだなんて思ったことはない」


 それは私が生きていたころから変わらない考えだった。


 どうしてそういう考え方をするようになったのかは覚えていないが。


「そうかい。それはそれは…」


「何よ」


「なんでもないさ」


 彼はいつもそう。


 ただ私の話を聞いて、相槌を打つだけ。


 そこに肯定も否定もない。


「それじゃ」


「もう行くのかい?」


「えぇ」


 私はそれだけ答えて、彼の元を後にした。


 ***


 彼女の心を調べた。


 彼女の心には大きな闇が渦巻いている。


 器と魂だけの抜け殻状態の今はまだ問題はないだろうが、それも時間の問題だ。


 心と魂の繋がりというのは簡単な物じゃない。


 そう遠くないうちに、彼女は自分の心に再びめぐり合うだろう。


 彼女はそれに耐えられるだろうか。


 大きすぎる闇が彼女の魂まで蝕んでしまわないだろうか。


 そうならないように、僕は出来る限りこの闇を除去しておかなければ。


 …でも、なぜ僕はここまでするのだろうか。


 多少の興味を持ったとはいえ心の無い僕が、どうして彼女にここまで入れ込むのだろう。


 いや、考えても仕方がないか。


 心の中の記憶をたどり、彼女の闇に触れよう。


 それが心を理解すること、ひいては彼女のためになると信じて。

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