第12話 狩猟祭(受付)
あれから1か月経ち、無事に畑の収穫も終わり狩猟祭当日となった。
ガイエルは無事に故郷に帰れただろうか。
ドワーフの国に来たら歓迎するぞとは言っていたが、暗に『お前も逃げとけ』って事だろうか。今の所戦争が始まるとか始まったとかという話はないが。
狩猟祭は3日間行われるが、実質狩猟日は2日間で、3日目は片付けや報酬の清算などの雑務と村での打ち上げになっている。我々ギルド職員は森の手前200m程度、村からおよそ500m離れた場所に大型のテントを構え、冒険者の対応にあたる。
この距離なら村でいいんじゃねーのとは思うが、出張してる感が大事らしい。
太陽が昇り始め、徐々に参加者が集まってくる。
冒険者と村の狩人を合わせて20人程度だ。実にこぢんまりしたお祭りである。
参加者はミセリがいる受付で参加登録をしている。
「受付が済んだ方はこちらへ来てくださーい!武器を確認しまーす!」
俺は解体部のテントから声を上げる。
どの程度の武器で参加するのか、状態はどうかを確認し、鈍っているようなら簡易的ではあるが研ぎを入れ、武器が心もとなければレンタルするのだ。戦力の管理とも言える。
「はいありがとうございます。立派な斧です。よく手入れされていますね。」
「この棍棒ではちょっと厳しいかもしれないのでこちらのショートソードも持って行ってください。ブレードベアが出たら逃げてくださいね。」
受付を済ませた冒険者の武器を次々と見分して記録していく。
この森での要注意魔物はブレードベアだ。前脚の爪が刃物のように発達した大型の熊で、その一振りで冒険者をなます切りにすると恐れられている。また、その爪に対応して表皮も刃が通りにくく、中途半端な武器では戦うのが難しい。
めったに出現することはないが。
「よろしく頼む」
「お預かりします」
新たな参加者が来たので武器を受け取る。
銀色に輝く見事なロングソードだ。柄には細かい装飾が施され、実用品というより客間に飾って置いておくような代物ではあるが、刃はしっかり研がれているし強度も高い。見た目以上の軽さは所謂ミスリル製品か。
思わず顔を上げて武器の主を伺う。
銀髪のセミロングのストレートと通った鼻筋に少し吊り上がった目、細身だが出るとこがしっかり出ている美女。そして何より銀髪から覗く犬のような耳と背後に見えるふかふかの尻尾。
獣人だ。
一緒にいる連れも獣人のようだ。
珍しいな。
「えーと、アッシュ様ですね。素晴らしい剣を拝見できて眼福です。あなたのような方に使われてこの剣も幸せでしょう。」
ギルド証で名前を確認して剣を返す。
「お主は手より口が回るようだな。解体屋風情に褒められてもうれしくもないわ。」
おーおー冷たい反応だこと。だがそれもいい。
鼻で笑いつつ剣を鞘に納めて銀髪の獣人は立ち去った。
「口が悪くてすまないね。お嬢はああ見えて優しいお方なんだが」
お供の獣人がフォローしながら武器を渡してくる。
どうやら銀髪の美獣人はいいとこのお嬢様のようだ。
「いえいえ、お気になさらず。慣れてますんで。」
お供の獣人はベイン。濃い茶の髪にメッシュが入った感じでケモ耳はお嬢同様に犬っぽい。
目つきも切れ長でお嬢と近い雰囲気を感じるイケメンだ。お嬢ともども背が高いのも種族の特徴なのかもしれない。
ベインの武器は大小一組の曲刀で、日本刀とカトラスの中間みたいな形状。
耐久度も切れ味も十分に備わっているが見たことがない素材を使っている。
あとで話を聞いてみよう。
「確認できました。ありがとうございます。後でこの剣の事をお伺いしてもいいですか?」
「時間がある時ならかまわないよ」
イケメン獣人はにっこり笑って武器を受け取りお嬢の後を追っていった。
獣人は王都では珍しくない種族で、この国では特に被差別種族というわけでもない。敵対する者もいれば、友好的な者もいる点も人間と変わりない。しかし人間と比べれば圧倒的に人数は少なく、辺境ではなかなかお目にかかることがない。
ちなみに獣人も美男美女ばかりというわけではなく、さっきの二人はたまたまだ。
特にきらびやかな服装ではないが持ってる武器と立ち振る舞いからしても二人の獣人は卑しからぬ身分のように見えるがなぜこんな所にいるのだろう。村長の
他にも変わった冒険者が来ているのだろうか。
ちょっと楽しみになってきた。
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