第110話

「……君たち、は……?」


 レンは動揺しながらもそう聞く。


 正直なところ、レン以外の人がこの空間、この城の中にいるはずがないと思っていた。

 だが現実にこうして居る訳だから、どこか別に入るところがあったのだろう。


 レンはとりあえずそう解釈して、相手の返答を待つ。


「……ひとつ、聞きたいんですけど、あなたは人族、ですか?」

「え、う、うん。そうだけど」


 真ん中にいた少女がそう聞いてくる。

 何故そんなことを聞いてくるのかは分からないが、よくよく見るとその娘の頭には獣の耳がついている。


 その娘だけじゃない。

 それ以外の子たちにも、同じように耳や角などの獣の特徴をがある。


 この子たちは……


 レンがそう考えたところで、彼女らが相談を終えたようだ。


「……そうですか。私たちが何なのか、分かりますか?」

「えっと……獣人、だよね?」


 彼女らは獣人。

 レンたちの星、ネソラとは別の星に住んでいる者たちのはずだ。


 一様に、彼ら獣人は獣の特徴を持っている。

 耳や鼻がよかったり、運動神経が異常によかったり。

 その種族だけが使える魔法があるというのも聞いたことがある。


 そんな獣人たちではあるが、違う星にいるとあって普通の人が存在を知ることはほとんど無い。

 そもそもの問題として、獣人の住む星がネソラとは別にあることを知っている者すら少ないはずだ。


 レンも大おば様の家にあった本に書いてあったのを見ただけで、本当にいるとはあまり信じていなかったのだから。


「……ええ。私たちはあなた達の言うところの獣人です。私はイリヤ。後ろにいるのが――」

「ゲンスだ」

「マフカ」

「……ラード。寝てい?」

「だめ、起きて」

「僕は、レン」


 中々に特徴的な人たちだなぁと思いつつも、自身も名前を言う。


 狼の耳を持っているのがゲンス。

 龍の角が生えているのがマフカ。

 狸の耳で眠そうにしているのがラード。


 そして狐の耳を持っている、イリヤ。


「私たちは魔王を討伐しに来たの。あなたは?」

「僕も、そうだよ」

「なら、とりあえずは一緒に行きましょうか」

「うん」


 レンは彼女ら全員と握手をし、真ん中の大きな扉の前に立つ。


「……さぁ、行きましょうか!」

「「「「おう(うん)(ん)!」」」」


 イリヤが扉を押すと、重さを感じさせない動きで開いていく。

 直後、イリヤが刀を抜き、何かを斬った。


「……ふっ!」


 イリヤが斬ったのは黒い鳥の羽。

 先端が尖っており、何かを貫くのに特化しているのが分かる。


『……ほぉ。あれを防ぐか。なら、ベリアル』


 何かの爆発音が聞こえたかと思えば、イリヤの左肩が貫かれた。


「……っ!物陰に隠れて!」


 イリヤの声にはっとしたレンたちはすぐさま動く。

 幸いにも、中には先程と同じように円柱状の柱はいくつも立っているので隠れる場所には困らなかった。


「……イリヤ、大丈夫?」


 マフカが、イリヤにそう問いかける。


「……ええ、平気。油断したわ」


 レンにはイリヤが何をしたのか、されたのか分からなかった。

 気がついたら、イリヤが肩を貫かれた。


 この感覚は、村を襲撃された時に似ているかもしれない。

 あの時の自分は、本当に何も出来ないほどに無力だったから。


 レンはギィッと歯を食いしばる。


 今の僕は、あの時のようになにも出来ないわけじゃない。目の前で仲間が死んでいくなんて、そんなこと二度とやらせはしない。


「私が獣化するから、サポ……って、レン!?」


 レンは柱の陰から飛び出し、突撃する。


『わざわざ撃たれに来たのか!?愚かだなぁ!』

「……『影潜りシャドウダイブ、纏い』」


 レンは服の下の影に潜るための空間を作り出す。

 そして、爆発音が聞こえたかと思えばレンの心臓を撃ち抜く。


 だが、当たらない。


『……なに!?』

「『身体強化、目』」


 またも放たれるが、今度は見えている。

 レンは短剣で金属の弾を逸らしつつ、接近し、


『……!!』


 斬る。


『――!ば、バアル!』


 今度は何発も勢いよく放たれる。

 だが、当たらなければどうということはない。


 レンは避けながら近づき、斬る。


『――く、来るんじゃねぇ!』


 黒い羽を生やしたそいつは、羽根を鋭く尖らせてレンを攻撃する。


「……効かないよ」


 レンは羽根を切り刻み、首を切り落とした。


「……今度は、戦えたよ」


 レンはそう呟き、上を向く。

 少しだけ、強くなれたような気がした。

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