第109話

『ガァ……!!』


 柱の影から現れる三つ首の犬の魔人。

 三つの頭には、氷、炎、雷の魔力が充填されている。


 それらがレンに向けて一斉に放たれる。


「――フッ!!」


 レンは魔力を込めた短剣で全てを切る。

 その衝撃で腕を覆う水晶が鈍い痛みを放つが、気付かないふりをする。

 この痛みに気を取られては、きっとそれが敵にとって大きな隙になるだろうから。


「『氷縛アイスバインド』!」


 レンは氷の鎖で、三つ首の口元を縛る。

 だが、


『ガァッ!!』


 魔人の身体が唐突に勢いよく燃えだし、氷を溶かした。


「……ちぃっ!!なら、魔力ごと斬る!」


 レンはかつてないほどの魔力を短剣に込めていく。

 すると短剣の形をした、魔力で出来た大剣が出来る。


「はぁぁああああ!!」


 レンが大きく横振りに薙ぐと、三つの頭全てが切り落とされ、動かなくなる。

 それと同時に、こちらに向かって飛んできている炎を纏った鳥も左右に両断した。


「あと、二体!」






 レンが大きな門の方へと向かっていると、唐突になにかに足を掴まれた。


「――なっ!?」


 足元を見てみると、地面から多くの腕が伸びている。

 レンは自分の足を掴む手を斬り、『空歩スカイウォーク』で飛び上がる。


「……なに、これ?」


 うねうねうねうね、と足元を覆い尽くす無数の腕。

 正直、すごく気持ち悪い。


『……ちっ。捕まえきれなかったか』

「――!」

『ウァラク!』

『わーってるよ!』


 奥にいる二つ首の竜に乗っている魔人が返事をすると、竜が紫色の霧を吐き出した。


『それは吸うと直ぐに死に至る毒!それで貴様は終わりだなぁ!!』

「――『凍結フリーズ』!!」


 レンは魔法を発動すると、紫色の霧は動きを止める。


『――なっ!?なにを、なにをしやがった!!』

「……別に。目に見えるものだから凍らせられると思っただけだ、よっ!」


 レンは竜の口元を凍らせ、近づいてふたつの首を斬り落とす。

 そして、上に乗っている魔人の首も斬った。


「……あと、一体」

『ちぃっ!!霊共!集まりやがれ!』


 魔人がそう言うと地面から生える無数の腕は引っ込み、魔人の目の前に鎧武者が形成される。


『こいつを倒せるわけはあるまい!!こいつらは霊だ!物理攻撃は効かないし、魔法も対策済みだ!』

「『ブラックホール』」


 レンが魔法を唱えると鎧武者の下に黒い穴が形成され、身体が沈んでいく。


『な、な、な……っ!』

「広がれ」


 レンは鎧武者の身体が完全に沈んだのを確認した後、魔人の足元にも魔法を広げていく。

 魔人は逃げようとするが、魔法の方が圧倒的に速い。


 魔人の片足が沈んだと思えば、どんどんと飲み込んでいく。


『な、に……!?くそ、が……!』


 魔人はあっという間に飲み込まれ、黒い穴は閉じていった。


「……これで、今は終わり」


 レンは柱に背をつくと、ずるずると座っていく。


「少し、休む」


 そのまま、レンは少しだけ眠りについた。






「……よし」


 レンは起き上がり、固まった身体をほぐす。

 どのくらいの時間眠っていたのかは分からないが、かなり限界まで来ていた魔力が少しばかり回復している。


「行こう」


 レンは門の方へと近づき、軽く押す。

 それだけで、門は重さを感じさせない動きで開いていく。


 レンが門に入ると、そこは大きな広間だった。

 さらに大きな門がひとつあり、レンの入ってきたのと同じような門がもうひとつある。


 その、同じような門は開き、前には4人の白い髪をした少年少女が立ってレンに武器を向けている。

 だが、レンの姿を見るやその少年少女は驚いたような表情になり、


「……え?」


 誰のものか分からないその声が、広間によく響いた。

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