第99話

「こ、ころ、す……?」

「そうじゃ」


 レンが目を開きながらそう言う。


「な、なんで……?」

「必要な事だからじゃ」


 大おば様は淡々と当たり前であることのように言う。


「……まぁ、直ぐに決められるものでは無いのぉ。明日の夜までには覚悟を決めておくんじゃ。これは決定事項、それが出来なければこの世界は滅ぶだけじゃ」

「…………」

「明日はゆっくりと過ごすといい。間もなく戦いの連続じゃ。休めるうちに休んでおくんじゃ」

「……ぅん」


 レンは席を立ち、ドアへと向かう。


「おやすみ、レン。また明日、の」

「……うん。おやすみ、大おば様」


 レンは自分の泊まっている部屋へ行き、疲れていたのかそのまま眠ってしまった。






 翌日。

 昼頃に起きたレンは、昨日の大おば様の言っていたことを部屋でずっと考えていた。


 自分が大おば様を殺さなければ、世界は滅ぶという。


 確かに、レンは実際に身の危険を感じるようなら殺すだろう。

 事実、魔人は人型ではあるが自分の身の危険と周りの人々の危険を感じたからこそ、レンは殺すことが出来ている。


 もしも魔人相手に一切の身の危険を感じず、魔人が対話を望んできた場合、レンは一切の躊躇なく魔人を殺せるとは思えない。

 積極的に魔人を倒し、いずれは魔王を倒そうと考えたのも、自分と同じように自分の大切な人を目の前で殺されるような人がいなくなることを望んでのこと。

 魔人、魔王という存在が、もしもこの世界に対して一切の影響を与えず、ただそう呼ばれ存在しているだけならば、レンはその存在に対して興味すら持たなかったことだろう。


 だから……、レンがもしも大おば様を殺すような状況になるとしたら、それは大おば様がレンにとっての敵になり得る時だろう。

 だが、そうは考えても大おば様にその考えを言うつもりはない。

 もしも言ってしまったら、それは大おば様が自ら敵になろうとするだろうから。


 それはレンの望むところではないし、きっとそれはレンの心の棘になる。

 レンが殺さなくても、大おば様は明後日に死ぬ。

 そうした場合に、この世界は滅びの道に向かうだけならば、レンが覚悟を決めてこの世界を救うべきなのだろう。


 それがきっと、大おば様の望むところなのだろうから。


 レンは覚悟を決めて大おば様のところへ向かう。

 太陽はもう、傾いていた。






 コンコンコン。


 レンは大おば様の部屋のドアをノックする。


「……レンかの」

「うん」

「入ってよいぞ」


 レンが入ると、大おば様はゆっくりと身体を起こす。


「……覚悟は、決めたかの?」

「……うん。僕は、大おば様を殺すよ」

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