第97話

「――ん、んん……」


 レンの意識がゆっくりと浮上する。


「――あ、リナお姉ちゃん!ミナお姉ちゃん!起きそう!」

「――ほんとっ!?」

「――ん、すぐ行く」


 レンがゆっくりと目を開けると、木の天井が目に入った。

 すると、外から焦ったような、ドタドタと走る音が聞こえてきた。


「――レン!」

「……リナ。……っ!」


 リナの身体は痛ましく、右腕の二の腕から先がなく、右足も太ももの真ん中辺りから先がない。

 今は横から知らない少女が支えることで、何とか立っている感じだ。


 レンがその光景に悲しそうな顔をしていると、ミナがやってきた。


「――ん、レン。平気?」

「ミナ……。……えっ」


 ミナは左腕がなく、両目に包帯が巻かれていた。


「目が……」

「ん。見えないけど、平気。村は、レンのおかげで救われたから」

「そうなのです。みんな、レンに感謝してるです。このまま行ってたら私たちの怪我よりも酷いことになるのです」


 ふたりがレンの心配を察したかのように、そう答える。


「……でも、ふたりに酷い怪我を。もう、戦えないだろうし」

「あはは。別にそれはいいのですよ。私たちが学園に入ろうと思ったのはあくまでもこの村を助けたかったからなのです。救えるなら死んでもいいと思っていたですし、それ以上のことは望んでいないのですよ」

「ん、でも。私たちはもう、レンについていけない」

「……そうです。この状態だと、私たちはレンに迷惑しか掛けないのです。だから、」


 リナの目に涙が浮かび、言葉に詰まる。

 それを、ミナが引き継いで言う。


「私たちは、レンのパーティを抜ける」


 ミナも目に涙を浮かべながら、そう言った。





「…………」


 そう言われることを、予想はしていた。

 リナとミナの現状からして、このまま冒険者を続けることは不可能だから。

 だが実際に言われてみると、引き留めようとするような言葉を発することが出来ない。


 そんなことは無いと、このままパーティを組み続けてくれ、と。

 だが、そんなことを安易に言えるような状況でもないのが現実だ。

 そんなことを言ったとして、もしもリナとミナがレンの旅に着いてきてくれたとしても、ふたりはきっとレンのお荷物になっていることを気にし続けるだろう。


 だからこの場合、こう言うのが正解なのだろう。


「分かった」


 と。

 下手な言葉でふたりを傷つけるよりも、ふたりが提案してきたことを受け入れた方がいい。

 それがきっと、ふたりのためにもなるだろうから。


 レンは自分の力のなさを感じ、ベッドの下で拳をきつく握りしめた。






 その翌日。

 レンは村を旅立った。


 怪我はそうなかったし、ただ魔力が少なくなったから倒れただけだ。

 目を覚ました時点で、動けるも同義。

 だが、あの後ふたりとはちゃんと話しておきたかったので、一日先延ばしにしたわけだ。


 ふたりとはあの後もしっかりと話し、たまに遊びに来ることを約束した。

 パーティが解消したからと言って、空気が悪くはならなかったのはよかった。


 1ヶ月と言った大おば様の約束には、行きにかかった時間を考えると、余裕で着くことができそうだ。

 だが、そんなレンの心は虚しさでいっぱいで、そのレンの心を表すかのように、雨がしとしとと降り始めていた。

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