第96話

「……僕が、この場から?何故?」


 レンはフォラスに問いかける。


「ええ、そうです。あなたの戦闘能力は分かりました。その上で、あなたは私のこの実験場において邪魔であると判断しました」

「……実験場」

「ええ、そうです。この村は私が実験をするための会場なのですよ。村人は実験体。この魔物たちはその村人たちを閉じ込める檻と門番、といったところでしょうか」


 フォラスは一切悪びれることも無く、そう言う。


「まぁ、2年前にふたりの少女に逃げ出されてしまったことは正直驚きましたが……まぁ、戻ってきたことですし、いいでしょう」

「……何故、僕だけなんだ?他にも冒険者が外からやってきているだろう」

「ふふっ。それはあなたがこの檻の中で害虫になり得るからですよ。他の方々は害がほとんどないですから、私の実験体が増えるだけのこと」


 フォラスはくすくすと気味の悪い笑みを浮かべながらそう言った。


「……っと、そろそろ魔物が限界ですか。これ以上やると、暴走してしまいますし。で、どうします?」

「……断る。この現状を捨てておけるわけがないだろう」

「……ま、そういうんでしょうね。では、あなたにとって大切な人を傷つければ気が変わりますかね?」

「――なっ!?」


 フォラスがそう言うと、その手元にリナとミナが現れ、ふたりの首をフォラスが掴んだ。


「――か……っ!」

「……ぐ」

「――リナ!ミナ!」

「ふふっ!自分を恨むので――っと」


 レンは短剣を構え、フォラスに突撃するが、難なく避けられる。


「危ないじゃあないですか」

「リナとミナを離せ!」

「ふふっ!それは出来ませんねぇ!――あ、いいこと思いつきました。あなたが攻撃する度にこの娘の四肢を食わせていくとしましょうか」


 フォラスがそう言うと、リナの身体がひとりでに浮き、魔物の中に入る。


「――リナ!」

「れ、レン!助け……!ぎ……っ!っあぁあああ……!」


 リナの身体が再び空中に浮くと、右手と右足が無くなっていた。


「……おや、やりすぎですね。片腕だけで良かったのですが。まぁ、仕方ないですね」

「……お前ーーっ!」

「おっと、そこから動かないでください。動いたらもう一人もやりますよ?」

「……くっ!」


 レンはすんでのところで踏みとどまるが、正直今にも飛び出しそうだ。


「……れ、レン!」

「ミナ……!すぐ、直ぐに助けるからっ!」

「レン……!私の、ことは、いいから、こいつを、倒して……!」

「……っ!」


 レンはそこで、昔ナフィやギリー、ネクソンを助けられなかったことを思い出す。


「……昔みたいに、仲間を、殺させはしないっ!」


 レンはフォラスに突っ込む。


「……おやおや、突っ込んで来ますか。では」


 フォラスはレンの突撃を避け、ミナを魔物の中に入れる。


「ふふっ。さぁ、あなたはどうす……っ!?」


 レンはを蹴り、反転する。


「死ね」


 レンが柄に力を込めると、針が飛び出し血が吹き出す。

 その血が刀身を伝い、刀身が淡く輝いた。


 その短剣で、レンはフォラスの首を切り落とした。


 その流れで、レンは魔法を発動する。


「『永久凍土コキュートス』!」


 リナとミナなどの人間を避け、村の周囲一帯の魔物を全て凍らせた。

 その氷はピシピシとヒビが入り、砕ける。


 村の周りから、魔物がほとんど消え去る。

 それと同時に、レンは魔力を失いすぎたために倒れた。

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