第95話

 村にどんどんと近づいてくる魔物の群れ。

 村に侵入されるのは時間の問題だった。


 レンたちは三方向に別れ、魔物を殲滅して行く。


「――多重詠唱マルチタスク氷槍アイスランス』『炎槍ファイアーランス』!」


 魔物の群れに、レンは魔法を叩き込む。

 狙いはつけない、それでも当たる程に密集しているから。


 放った魔法はそれぞれ3体の魔物を貫き、消えた。


「……これが、大おば様から貰った力」


 前のレンではありえないほどの魔法の威力。

 前のレンでは2体目に傷をつけられればいい方というレベルである。


 だが、それだけの威力があろうと魔物を殲滅するには圧倒的に足りない。


「……質より数、かな」


 レンはそう呟くと、魔法を発動する。


「『アイシクル・レイン』」


 空に氷で出来た、先の尖った氷の塊が出現する。

 それを、レンはリナとミナのいる方にいかないように調整しながら、真下に落とす。


 それだけで20体は死んだだろう。

 だが、その穴も直ぐに別の魔物で埋まる。


「……うーん。これキリがないな。――そうだ、あれやってみよう」


 レンはひとつ試したいことを試すために、地面に手をつく。


「『落とし穴ピット』『土棘アーススパイク』」


 レンは魔物の群れの中央に大きく深い落とし穴を設置し、中に下から貫く鋭い棘をセットする。

 すると、後続の魔物は後ろの魔物に押されるように落とされ、死んでいく。


「……よしっ!上手くいった」


 レンが喜んでいると、後ろから何者かの声が聞こえてきた。


『ほぅ、よく考えたものですねぇ』

「――っ!?」

『ああ、お気になさらず。ほら、魔物が来てますよ』

「……っ」


 レンは前から迫る魔物を倒しつつも、後ろにいる者から注意を外さない。


『おやおや、随分と警戒されたものですねぇ』

「……そりゃ、突然後ろから声をかけられればそうもなる。しかも、こんな魔物が沢山いる状況ではね」

『それは失礼。まぁ、恐らくあなたも分かっているでしょうが、私がこの魔物を呼んだんですけどね』

「……だろうな」


 レンはその事に特に驚きはしなかった。

 戦闘中で気配に敏感になっているにも関わらず、そいつの気配に気づかなかったのだから。


『では、一旦話しやすいように魔物を止めますか』


 そいつが指をパチンっと鳴らすと、魔物たちは時が止まったように動かなくなる。


「……なんのつもり?」

『言ったでしょう?話しやすいように、と』


 レンは警戒心を最大限にそいつに向ける。


『では、自己紹介を。私はフォラス。分かっているでしょうが、魔王軍です。以後、お見知りおきを』

「……で、なんの用だ」

『おやおや。随分とせっかちなようですね。まぁいいでしょう。私の目的はひとつ、あなたは今すぐこの場から去ってください』


 フォラスと名乗る魔人は、閉じていた目をうっすらと開け、そう言った。

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