第93話

「その剣は前の剣よりも切れ味が少しばかり悪いが、魔人相手には最高の切れ味を発揮する。しかも、レン以外が使おうとすると、そいつの腕がズタズタに切り裂かれる」

「へー」

「そいつがありゃ、お前は狂戦化バーサークを使わなくても魔人を倒せるって訳だ」

「そうなんだ。でも……僕に倒せない魔人がいるし、ましてや魔王なんて……」


 レンはバティンのことを思い出す。

 セーレとの戦いで疲れていたとはいえ、狂戦化バーサークを使った攻撃が簡単に防がれた。

 正直、この短剣を使っても結果が変わるとは思えない。


「……まぁ、そこら辺は婆さんが考えてある。さて、明日出発か?」

「うん、そのつもり」

「じゃ、早く寝ろ。街に行くのにまた三日歩くんだ。ゆっくり休んどけ」

「わかった」


 レンは再び神社の中に戻り、眠りについた。





 翌日。

 レンたちは村を出る準備をしていた。


 大抵のものはレンの異空間収納ストレージに入っているが、食料などは限りがある。

 道中で魔物が出ると思うので、必要ないとは思うが念の為だ。

 大おば様から三日分の干し肉を貰い、異空間収納にしまう。


「――さて、準備出来たかな?」

「ん、平気」

「平気だと思うのです!」


 レンか確かめるように聞くと、リナとミナはそう答える。

 すると、


「あ、ちょい待て。嬢ちゃんたちに武器を渡しとこう」


 おじさんが持ってきたのはレンにとっては思い出したくない記憶を呼び起こすもの。

 つまり、


「ギリーとネクソンの武器……」

「「え?」」

「そうだ。そのまま墓に置いてあるだけでは悪い。どうか、あいつらの思いも連れて行ってやってくれ」

「……わかった」


 レンは渋々ではあるが、頷く。

 だが、受け取った当の本人たちは萎縮しているようだ。


「ちょっ、いいのです!?大切なものなのですよね!?」

「ん、これ大事。返す」


 ふたりが短槍と大剣をおじさんに返そうとする。

 だが、


「いや、持っていこう。ギリーもネクソンも、ずっとこの村にいるよりも冒険した方がいいだろうからね」


 レンは持っていくことを選んだ。

 いつかは向き合わなければならない過去だ。

 これを機に、何とか乗り越えていかなければならないと思う。


「……レンがいいなら、いいんだけど」

「ん、わかった、大事に使う」

「うん、ありがと」


 レンはそう言い、おじさんに向き直る。


「これ、持ってくよ」

「おう。あいつらを冒険させてやれ。――さて、婆さん。俺はもういい。婆さんから渡すもの渡してやれ」

「……ほいほい。じゃ、レンに力をあげるかの」

「……は?」


 大おば様はそう言い、レンの頭に手を載せる。


「……!?が……っ!ぐぅぅぅぅうう!!」

「れ、レン!?」

「安心せい!少しばかり脳に刻んでるだけじゃ!」

「え、ええ!?」


 数分後、大おば様はレンの頭から手を離した。


「はぁはぁ……!」

「……うむ。成功じゃな」

「お、大おば様……?」

「レンにわしの力を渡した。ただ、そう長くは持たぬ。どうにかもって2ヶ月くらいかの」

「そ、そうなんだ」

「ただ、その頃にはもうお主の戦いは終わっておるはずじゃ」

「……え?」


 レンは困惑した声を挙げるが、大おば様はその声に応えない。


「1ヶ月後、もう一度戻ってくるんじゃ。そこで、全てがわかる」

「……それってどういう」

「かか……!まぁ、その時までのお楽しみってやつじゃな」

「ええー」


 急に大おば様は真剣そうな表情になったかと思うと、レンに忠告する。


「……レン。死ぬんじゃないぞ」

「……うん」


 レンは短くそう答え、村の外を向く。


「それじゃ、いってきます」

「おう、行ってこい」

「1ヶ月後、待っておるぞ」

「うん!」

「お世話になりましたですー!」

「ん、ありがとでした」


 レンたちは王都を経由し、リナたちの村へと向かった。

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