第89話

「……それで、レン。村に帰ってきたということは用があるのじゃろう?」


 妙にぐったりとしているが、それでいて少し嬉しそうな表情で大おば様がレンに聞いてくる。


「うん。まずは、学園を卒業した」

「それは胸のブローチを見ればわかる」


 学園を卒業した際、レンたち卒業生にはブローチが渡される。

 それを冒険者ギルドで見せることで、一番下のランクから上がる必要はなくなるのだ。


 冒険者ギルドのランクはGからSまで。

 レンたちはそのブローチを見せることでCランクから始めることが出来る。


 だが、卒業した者全員がCランクから始められる訳では無い。

 レンたちはSクラスだったのでCランクから始められるだけだ。


 実際、Cクラスで卒業した者は、Fランクからのスタートだ。

 正直、中退して冒険者になった方が早いだろう。


 Gランクはあくまでも冒険者としてやっていけるのかを、冒険者ギルドが判断するためのものだ。

 だいたい1ヶ月もあればFに上がれるだろう。

 だが、もちろん通い続けるメリットはある。


 学園には、簡単に見れないような資料が置かれているのだ。

 しっかりと勉強しようという意思があれば、Fランクから地道にあげることも可能だろう。

 実際、Cクラスの人間がAランクまで上がったという記録がある。


 Aランクは冒険者全体のうち、およそ1パーセントほどだ。

 Sランクは英雄や人外と言われるような人がなるものなので、冒険者と数えなくていいとされている。


 そもそも、王族などの依頼を受けるのがSランクだ、普通の依頼は受けない。

 つまり、その冒険者は学園で最弱のクラスに所属していたが、努力をして冒険者の最高位にまで上り詰めたのだ。


 Cクラスになってしまった学生たちは、その冒険者のようになるために努力する者が少なからずいる。

 そういう者達は、先に中退して冒険者として中途半端に活躍していた者達を抜かして栄光を得るわけだ。


 閑話休題それはさておき


 つまるところ、レンたちは貰える中で最高位の通過証明をもらったということだ。

 だが、それをふたりに言っても当たり前といったふうな様子だ。


「そんな事を知らせるためだけに村に帰ってきた訳では無いじゃろう?」


 レンは少し不貞腐れながらも、村に帰ってきた理由を言う。


「あと、大おば様とおじさんの課題を見てもらうために」

「おお、そういえばそんなものを出したんじゃったな。いいじゃろう、あとで見てやろう。他は?」

「短剣が折れちゃったから、おじさんに造って貰おうかなって」

「ほぅ、あの短剣が折れたのか。では、その腰にある短剣はなんなのじゃ?」

「ああ、これ?」


 レンは短剣に手を置き、


「村に戻ってくるのに丸腰は心配だったから、一応武器屋で買っておいたんだ。まぁでも、おじさんの武器の方が使いやすい」

「そりゃそうだろうよ。武器屋に置いてあるような万人に使えるような武器ではなく、レンに合わせて造ったんだからな。おし、あとで造っておこう。レン、壊れた短剣の柄はあるか?」

「え、うん。記念に取っておこうかと思って持っておいたけど」

「持ちなれた柄のほうがいいだろ?だから、そのまま使ってやろうかと思ってな」

「うん、分かった。――はい、おじさんよろしく」

「おうよ」


 レンは括りつけてあった紐を解き、おじさんに手渡す。

 おじさんは鞘から剣を抜くと、驚いたような顔をした。


「おいおいおいおい……。なんつー壊れ方してやがる。お前はいったい何と戦いやがった」

「1週間くらい前に魔人と」

「……マジかよ。おい婆さん」

「……なんじゃ、クリス」

「……あれ、やった方がいいな?」

「……任せるわい」


 ふたりだけが分かるような会話をすると、


「レン。俺は剣の制作に取り掛かる。その間に婆さんにそれ以外の出来ることをやってもらえ」

「え、う、うん」

「じゃあな、俺はしばらく引きこもる」


 そう言うと、おじさんはレンの頭をポンポンと撫で、神社を立ち去った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます