第88話

「――長かった……っ!」

「ん、景色もあまり変わらないから尚のこと」


 リナが村を目の前にそう言った。

 それにミナも同調する。


 村の周囲に魔人襲撃時の戦闘跡はなく、代わりに死んだ村人たちのお墓が置かれている。

 また村の中も綺麗に整備されているようだ。


 ただ、置かれている家の中は全てもぬけの殻だ。

 全員、亡くなってしまっている。


 レンは懐かしさと、悲しさや悔しさを感じつつ、大おば様のいる神社の方へと向かっていく。


 そして、神社の階段を上り、


「大おば様ーー!いるーー!?」


 大おば様を大声で呼んだ。


「大おばさ――っ痛!」

「うるさいんじゃよ、レン。わしの耳はそんなに遠くなっておらんわい」


 レンが後ろを向くと、あまり変わっていない様子の大おば様の姿。

 気配に気づかなかったが、それは大おば様相手にはよくある事だ。


「あっ、大おば様。いたんだ」

「お主が呼んだんじゃろうがっ!」


 恐らく、大おば様は短距離を転移したのだろう。

 いきなり隣に現れた大おば様に、リナとミナは驚いている。


「はぁ、それでレン。この子たちは?」

「あ、ふたりは僕の仲間。一応紹介?しとこうかなって」

「ほぅ。レンに仲間とな。あまり期待しておらんかったが、ちゃんと出来たんじゃのぉ」


 そう言って、大おば様はレンの頭を撫でる。


「ちょっ、やめ……」

「それで、ふたりとはヤったのかの?」

「……え?」


 唐突な大おば様のぶっ込みに、レンが固まる。


「だから、このふたりとヤったのかと……痛っ」

「止めろエロババア!レンが困ってるだろうが!」


 レンが固まっていると、後ろから大おば様をおじさんが丸めた紙で殴っていた。


「あ、おじさん」

「おう」

「いたんだ」

「婆さんの後ろにずっといたわっ!」

「……クリスぅ。わしを殴るとは、いい根性しとるのぉ。後で覚悟しておけ」

「なっ……んだとぉ!?」

「おぉ?やんのかクリス。わしに反抗するのか。随分とえらい身分になったものじゃのぉ?」

「あぁ?」

「おぉ?」


 大おば様とおじさんがふたりで芸人のように揉めている。

 レンは一度、はぁ、とため息をつき、ふたりにむけて殺気を放つ。


 すると、二人は、


「「っ!?」」


 咄嗟に飛び退いた。


 ふたりは周囲を確認し、レンがやったのを確信すると、


「「何をするんだ(じゃ)レン!」」

「ふたりも、何をしてるの?僕の前だけでならいざ知らず、一応客人の前なんだけどね?」

「「あ」」

「ちょっと、そこに座って?」

「「はい……すいません」」


 レンの説教は一時間近く続いた。

 これはレンとおじさんと大おば様の3人だけになった村で、日常的に起こっていたことだ。


 レンは心の中で、この村に帰ってきたことを改めて実感するのだった。

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