第83話

 レンがゆっくりと目を開けると、目に入るのは一切のシミがない白い天井。

 知らない天井、という訳では無いが実際にこうしてベッドに眠るのは初めてだ。


「……医務室、か」


 レンはそう呟き、身体を起こそうとする。

 だが、


「――っ!?」


 身体中に痛みが走り、まともに動くことが出来ない。


「……これは参った」


 レンはそう言い、再び天井を見上げる。

 すると、ベッドを仕切っていたカーテンが開き、白衣を着た女子生徒が現れた。


「――包帯の取り替えに来ましたー、ってまだ起きてるわけないよね。さて、と…………――っ!?お、起きてるっ!?」


 その女子生徒はレンの姿を見るや、そう言う。

 顔は、独り言を聞かれたのが分かったからか真っ赤になっていた。


「す、すいませんっ!すぐに先生を呼んできますっ!あとっ、聞かなかったことにしてくださいーーっ!」


 女子生徒は勢いよく病室を仕切るカーテンを閉め、走っていった。


「……なんだったんだ?」


 レンがそう言うものの、誰も答える人はいなかった。







 数分後。


 女子生徒がひとりの女性を連れて戻ってきた。

 その女性はこの学園の先生で、この医務室の担当教員のはずだ。


 はず、というのは女性の目の下のクマがかなり濃く、初めて見た時と印象が違いすぎるからだ。


「し、シエラ先生ですか……?」

「……ええ、そうよ。全く、休ませて欲しいものだわ」

「すいません、先生。ですが彼が目を覚ましたら報告しなさいと言ったのは先生です」

「そうなんだけどね。やっと一息つける、って時に呼びに来ないで欲しかったわ。――まぁ、言ってても仕方ないし、さっさと診て寝ましょう」


 そう言うとシエラ先生はレンの身体を起こし、全身をくまなく触っていく。

 時折傷口に当たって痛かったが、それ以外は何かをされたという感じはなかった。


「……うん、まぁここまで回復すればあとは自然回復でいいでしょ。ただ……」


 シエラ先生はレンの右腕をとり、紫色の痣を指さす。


「この痣に関しては私には無理。教会に行かないとどうしようもないと思うわ」

「え、なんでですか?痣なら簡単に治せるじゃないですか」


 シエラ先生に、女子生徒がそう聞く。


「ええ、ただの痣ならね。少なくとも、この痣は人体が傷ついて出来たものじゃないわ。もっと別の要因が傷ついたんだと思う。まぁ、これ以上は私にも分からないんだけど」

「そうなんですか……。わかりました、動けるようになったら教会に行ってみることにします」

「うん、そうするべきよ。さて、シャーレ。行くわよ、早く寝たいもの」

「は、はーい。ではレンさん、お大事にー」


 そう言うと、ふたりは出ていく。

 レンはそのままベッドに転がり、そのまま意識を手放した。

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