第80話

 時間が動き出すと同時に、数々のランスが動き出し、一点に全てが当たり、砂埃が舞う。

 だが、起こるはずの、属性魔法による現象が起きない。


 具体的には、火であれば燃えたり、水であれば湿ったり。

 それら全ての現象の一切が、起こらなかった。


『――ったく。やってくれたなぁ?』


 そう言いながら、砂埃のなか、人影が現れる。


『時間を止めるわ、色々な属性の魔法を一気に使うわ、お前ほんとに人間かよってな。まぁ、効かなかった訳なんだが』


 セーレの持つ、真紅の剣にまとわりついているモヤはかさを増し、大剣程の大きさになっている。

 また、セーレの周囲に漂う砂埃は渦を巻き、真紅の剣へと吸い込まれた。


『ま、お前の魔法のおかげで剣を強化出来たんだがな。お前の魔法が相手を強くするとか、なぁ?笑えるよなぁ?』


 くくく、と笑いながら、ゆっくりとセーレはレンに向かって歩みを進め、だいたい10メートル離れたところで止まった。


『俺の剣はなんでも吸い込んで強化する。つまり、お前の魔法を吸うことでも強化されるし、お前が血を流すことでも強化される。ま、能力を聞いたところで対処なんて出来ねぇし、お前は死ぬから無駄なんだがな。――さ、行くぞ』


 セーレが剣を構えたと思った直後、視界から消える。

 そして、後ろから殺気を感じ咄嗟に飛び退くと、レン狂戦化のいた場所が陥没した。


「――っ!?」

『ほぉ、今のを避けるか。だが、その体勢じゃあ次は避けられねぇなぁ?』


 今のレンは、空中で着地の体勢に入っている。

 つまり、いま追撃をされた場合細かい動きはできない。


『死ね』


 剣が、レンの首元に吸い込まれていく。


「っ!」


 咄嗟に2本の短剣で、剣筋を逸らし、『氷槍アイスランス』を2本放つ。

 魔法は剣に吸い込まれるが、レンはその間に着地をした。


 そして、レン狂戦化はセーレに突っ込んでいく。

 下手に受け身になるよりも自分から攻撃した方がいいと考えた結果だ。


 2本の短剣を両手に順手で持ち、走りながら数々のランスを放つ。


 セーレの正面、後ろ、上……。

 色々な方向から当てに行く。

 いくつかは吸収されたが、当てることも出来た。


『っ!小ざかしいっ!』


 セーレは剣を振り砂埃を払い、レンに向かって走る。

 そして、レンの短剣と真紅の剣がぶつかり……




 パキリ、とヒビの入る音と共に、レンの2本の短剣は粉々に砕けた。


「っ!?」


 セーレがニヤリと笑い、剣を振り下ろす。

 レンは咄嗟にバク転の要領で剣を避け、離れた位置に着地した。


(剣が……)

「…………。マスター、時間切れ、です……」

(っ!)


 レンの意識が浮上し、地面に膝をつく。


『く、くくっ!クハハハハハハハハハハハハハッ!剣が俺の剣に耐えられなかったかっ!?ふはっ!ははははははっ!』

「――死ね」


 レンは刃のない剣を鞘にしまう。

 そしてレンはゆっくりと立ち上がり、セーレを睨みつけた。


「――『狂戦化バーサーク』っ!!!」


 レンの意識が消えかけるが、何とか意識を保ち、自分の意思で身体を動かす。


 その反動か、身体中に紫色の痣が浮かぶ。

 しかし、レンにはそれを確認するほど心に余裕がなかった。


 あの短剣は、ギリーやナフィ、ネクソンと一緒に作ってもらった思い出だ。

 それを壊されて、許せるはずもない。


 たとえそれが、ずっと使用していたことによる反動だとしても。


「あいつは……殺す」


 レンは腕に風の魔法を纏わせ、セーレに突っ込む。


『はっ!血迷ったかぁ!いいぜ、一思いに殺してやるよっ!』


 セーレが剣を振り下ろす。

 レンはそれを左腕で受け、さらに突っ込む。

 左腕の魔法は吸われたが、その代わりに傷は負っていない。


『んだとっ!?てめ……っ!』


 レンは右腕を前に出し、魔法を発動する。


「『爆風ブラスト』!!」


 風は渦巻き、セーレを校舎へと叩きつける。


『――がっ!?』


 セーレはゆっくりと起き上がる。

 レンは追撃しようと、走り出そうとした。


 だがそこに、


『――何を、チンタラやってる?』


 セーレの声とは違う声が聞こえた。

 探してみると、校舎の2階から見下ろしている魔人がいた。


――――――

なろうに追いついたので、これ以降はなろうと同じく毎週日曜の更新とします。

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