第78話

「……っ!」


 レンはセーレから漂う圧迫感に1歩後ずさる。

 セーレは飄々とした笑みを浮かべつつも、レンの動向を見守っている。


 そんな膠着状態が1分ほど続いた頃、


「――レン!助太刀するのです!」


 リナとミナが、周囲の冒険者達を医務科に置いて戻ってきた。

 だが、とてもじゃないがリナ達には分が悪い。


「……!リナ!王女を連れて逃げろ!」


 レンはセーレから目を話さずにそう言う。

 しかし、


『――させねぇよ』


 気がつくと、セーレはリナの目の前に移動していた。


「「っ!?」」


 リナは咄嗟に防御するべく、腕に付けた小盾を前に出そうとするものの、間に合わずに腹を蹴られて吹き飛ばされた。


「――かは……!」

「リナっ!」

『おっと、よそ見していいのか?』


 その声が聞こえると同時にレンの左頬に衝撃が走ると、レンは校舎に叩きつけられた。


『王女の血は回収したが、王女の身が使えないわけではないからなぁ』


 先程とは打って変わって余裕そうな声音で、セーレは王女の頭を持ち上げる。

 その王女の目は虚ろで、もはや生きてるかすら怪しかった。


『……さて、もう終わりか?さっきまでの威勢はなんだったんだ?』


 そう言って、セーレは王女の頭を手放すと、レンの元へと歩いていく。


『おまえは魔力が多いし、殺すには惜しい。戦意を無くすぐらいまでボロボロにして、魔界へと連れてくか。いい触媒くらいにはなんだろ』

「…………」

『……おいおい、まさか今ので死んじまったのか?はっ!人間は脆いねぇ!』


 そう言いながら、セーレはゆっくりとレンの元へと足を進める。

 そして、レンの目の前にやって来てレンの頭を持ち上げる。


『ほんとに死んでんのかぁ?反応がねぇし……』

「……………………『狂戦化バーサーク』」


 その瞬間レンに黒いモヤが渦巻き、モヤが空高くまで上る。


『っ!?おいおいおいおい……。なんだよこれ。……ちっ、先手必勝だ』


 そう言って、セーレはさっきよりも重い攻撃はレンに仕掛ける。

 だが、それらの攻撃は黒いモヤに阻まれ届かない。


『マジかよ……』

「……リナ、ミナ。王女を運べ」

「……わ、分かった!ミナ、急いで!」

「――ん」


 レンは、立ち上がってこっちの様子を伺っていたリナとミナに王女を任せる。

 命の保証は出来ないが、少しでも生き残る可能性に賭けよう。


『――っ!やらせるかよっ!』

「それはこっちのセリフだ」


 音速を超えたスピードでリナ達に攻撃しようとしていたセーレを、レンはセーレの前に回り込み受け止める。


『……なにっ!?』

狂戦化バーサーク、全てを移譲する」


 レンは狂戦化へと呼びかける。


 [……承知しました。目標は殲滅で?]

「うん」

 [では、表層意識へ浮上。対象を殲滅します]


 その瞬間、レンの意識は『狂戦化バーサーク』に乗っ取られた。

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