第76話

 それから、およそ2年。

 レンはもうすぐ学園を卒業する時期になっていた。


 この2年間で起こったことと言えば、入学初日に貴族の息子イチャモンを付けられ決闘になり、レンが圧勝したりだとか、入学試験の日に助けた2人の少女、リナとミナの双子の姉妹とパーティを組むことになったこと、くらいだろうか。


 それ以外は基本的に何事もなく時は過ぎていき……。






 ――卒業を控えた、ある日。


 レンは学園内をリナとミナと一緒に学園内を散策していた。


「――もうすぐ卒業だし、ここに入れるのも最後かもしれないから一度学園を隈無く見て回ろう、って言ったのはいいけどまずはどこに行こうか?」

「はいはいはい!初めに私たちが会った東門の近く行きたいのです!」


 元気よく手を挙げながら、赤髪のリナが答える。


「――ん、賛成」


 青髪のミナも頷く。

 それを見てレンは、


「りょーかい。じゃあ行こうか」


 数分後、レンたちはその場所に着いた。


「懐かしいのです!変な人に絡まれた時にレンに助けられたのです!」

「そうだね……。あれから2年だもんね……」

「……ん、意外とすぐだった。リナ、お母さんたち、平気かな……?」

「どうだろ……。――あ、そうです!レン、卒業したらレンはどうするのです?」

「ん?うーん……。どうだろ。――多分1回村に帰って直ぐに旅に出るかな?」


 レンは少し考えた上で、そう答えた。

 すると、


「村に帰ったあとでいいので、私たちの街に来て欲しいのです」

「いいけど……。なんで?」

「それはですね、私たちの村は3年以上前から定期的に魔物に襲撃されているからです」

「定期的?」

「です。だいたい1ヶ月に1回くらいのペースです」

「それ、偶然じゃなくて?」

「それは無いのです。その1ヶ月に1回以外の襲撃以外のときは、魔物は街の周囲を囲うように配置されているのです。街に入る分にはおとなしいですけど、出るときには襲ってくるです。私たちは街の少ないお金で、街にいる冒険者を雇って王都に来たのです。私たちは、王都にいる凄腕の冒険者を連れて街に帰って、どうにか魔物を倒してもらわなければならないのです。学園に来たのは自分たちが少しでも力を付けられるように、ってお母さんに言われたからなのです」


 リナは悲しそうな顔をし、ミナは無表情ながらも手は力強く握りしめられていた。

 それを見て、レンは決意の篭もった目でリナたちを見つめ、


「――分かった。村に1回帰ったあと、直ぐに向かおう。聞いてる限りだと、出ようとしなければ何事もないみたいだからね。ついでに、大おば様にそのことを聞いてみるとしよう」


 魔物が統率されて動いている、ということは魔物を統率する者がいるということ。

 そしてそれはおそらく、魔王軍である可能性が高いだろう。


 そう思いつつそう言うと、リナたちは手を取り合って喜んだ。


「やったです!レンがいれば街は何とかなるですよ!」

「ん!レン、最強。街救える」

「そんなことないと思うけどなぁ……」


 レンは苦笑いしつつも、この仲間がいるという空気を改めて悪くないと思っていた。


 だが……。

 平和な時間は一瞬にして崩れ去る。


 突如、校舎を挟んだレンたちの反対側から爆発音が聞こえて、それと同時に建物の破片が空高く舞い上がった。


「「「!?」」」


 一瞬にして、この場にいる全員の視線はその方角を向いていた。


「レン……!」

「うん、まずいね……。行くよっ!」

「了解っ!」


 リナは大きな声で返事をし、ミナは力強く頷いた。


 実はこれ、かなり深刻な状態だった。

 校舎には魔法による攻撃を防ぐ結界が貼られており、決して簡単に壊せるものではない。

 レンであっても、それなりに全力を出さないと壊すことは出来ない。


 しかも、このとき壊れるのは結界であって、建物に穴が空くことすらない。

 建物の建材には、魔法に強く魔法の効果を反射するものが使われているからだ。


 これらを総合的に判断すると、レンが全力で魔法を打っても建物が爆発することは無い。

 出来て結界が完全崩壊し、建物に大きな傷がつくくらいだろう。


 つまり、今の爆発を引き起こしたのはレンと同等か、それよりも強くなければ出来ないはずだ。

 だが、レンの知る限り学園内の上位にレンよりも強い人はいない。

 下にいる者が実力を隠していた可能性がない訳でもないが、レンが気づかないことはないだろうし、何よりその者にとって利のないことだ。


 十中八九、魔王軍だろうとレンは考えていた。

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