第74話

 それから2日後、レンの入学試験の日になった。


 宿屋は受験生らしき人物で埋まっており、流れでまたもルイス様(王都に入ったんだから領主様はやめろと言われた)のお世話になることになった。

 場所は高級そうな宿ではなく、王都内にあるルイス様の屋敷。

 ルイス様の領地にある屋敷よりも、少し小さいくらいの屋敷だ。


 レンはルイス様に書いてもらった、学園までの地図を元に歩いていく。

(ルイス様が案内してくれるとも言ってくれたが、丁重に断った)


「――ここが、学園……」


 レンの前に広がるのは、城と見間違えるような立派な建物。

 横には闘技場らしき建物もいくつかある。


「……あっ、受験票に変えないと」


 レンはメダルを手に、門の近くの受験票と交換する場所へと向かっていった。






 レンは受験票を手に、校舎の敷地に入っていく。

 すると、校舎の脇の影で、


「――おい、ここはおめぇみてぇな北の流れどもが来る場所じゃねぇんだよっ!なぁ、帰れよ。なぁ!?」


 いかにも貴族の息子らしき3人が、2人の少女を脅している。


「嫌なのです!リナ達は学園に入ってやらなきゃいけない事があるのです!」

「あぁん!?俺様たち貴族に逆らうってのか!?」

「うるさいです!私たちはやらなきゃ行けないのです!」

「あぁ!?なんだとこのガキ……」


 貴族の息子らしき人が、少女に殴りかかろうとすると、後ろにいた二人のうちの一人が耳打ちをする。


「……あ?なんだよ。……ほぅ、ほうほう。それはいいな……」


 それを聞いた貴族は、少女達を見てにやりと笑う。


「喜べ愚民。お前らは俺様の奴隷になれ。そうすりゃ、認めてやる」

「……なっ!?」

「どうだ?悪くないだろう?」


 それを聞いて、さすがに見ていられなくなったレンは、


「――それは、ダメだと思うよ」

「……ああ?なんだ糞ガキ。貴族様に逆らっていいと思ってんのか?」

「あなたは貴族様の息子だろう?それは厳密には貴族ではないらしいじゃないか。それはどうなんだい?」


 レンは一応多少の敬意を含んだ言い方でそう言う。

 すると、


「はっ!そんなもの父上に頼めばどうとでもなるんだよ!」

「そう……。でも、冒険者に貴族も平民も関係ないんだろう?今日試験があるのは冒険者科だけだって聞いてる。それじゃあ、ここにいるみんなは貴族平民抜きにした冒険者志望の人達、ってことになるんじゃないのかな」

「う、うるせぇ!俺たちゃ偉いんだ!貴族を知らねぇ平民が口を出すんじゃねぇ!やるぞおめぇら!」


 そう言うと、3人は一斉にレンに向かって剣を抜いた。


「……そんなことして、いいの?」

「はっ!そんなものお前を殺して揉み消してしまえばいい!」

「……そっか。じゃあ傷を負っても文句は言わないでね」


 そう言うと同時に、3人は一斉に飛びかかる。


「……遅い」


 レンは3人の鳩尾に短剣の柄の後ろを思い切り押し付けた。

 何本か骨が折れたかもしれないが、そんなもの知ったこっちゃない。


 目撃者はそこにいる2人の少女と、そこら辺にいる受験者がレンの潔白を証明してくれることだろう。

 何せ、ここは校舎の脇と言うだけで人目には付きやすいのだから。

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