第71話

 アジトに入った瞬間、至る所から見られているような感覚に襲われた。


「……っ!?」


 レンが視線を巡らせて視線のありかを探すも、近くに盗賊はいない。

 すると、領主様は何を思ったのか唐突に剣を抜いた。


「領主様……?」

「……レンくん。来るよ。殺さないだとか、そんな甘いことは言えないと思うから、気をつけて」

「え……?」


 と、レンが困惑している間に何かがレンたちに向かって飛んできた。


「――っ!?」


 咄嗟にレンは短剣で飛んできたものを弾き飛ばす。

 レンが飛んできたものを確認すると、それは普通の短剣よりも小さな、柄の後ろに穴の空いた短剣のようなものクナイだった。


 そしてそれを確認した直後、短剣のようなものクナイが次々と通路の奥から飛んでくる。


「くっ……!」


 通路全体が暗いからか、何処から飛んできているのかが直前まで分からない。

 しかも死角をつくように飛んでくるものまであり、それはどれも人間の急所を狙っているものばかりだった。


 レンは何とか怪我なく対応出来たが、それなりに精神的にくるものがあった。


「領主様……これはどういうことなんですかね……っ!?」

「さぁね。大方、外の盗賊を倒したタイミングで既に近くにいるのが伝わっていたんだろうさ。それで、入ってきたのを確認したから、気配を消すのに長けた盗賊を放ってきたんじゃないかな」

「なるほど……。これは、先に潰した方がいいですよね?」

「そうだね。よろしく頼むよ」

「はいっ!」


 レンは闇の中へと突っ込んでいき、


「『光球ライト』!!」


 闇が晴れると、そこにいたのは全身黒ずくめで顔も仮面で隠した人達。

 明らかにこいつらが投げてきたのだと分かる。


 その黒ずくめ人達は、レンが『光球』を発動させると明らかに狼狽し、途端に動きが鈍くなった。

 そこを一気に畳み掛ける。


 レンは黒ずくめのひとりの懐に入り込み、そのまま一閃。

 胴を大きく横に凪いだ。


 そして、次。

 1人が倒されたことで我に返ったのか、再び動きが統率されたものになった。

 レンに向かって短剣のようなものクナイを投げ、そしてレンの避けた場所にも同時に投げる。


 レンはそれを一切動揺することなく、ただ作業的に弾いていく。


「――っ!?」


 それを見て黒ずくめはまたも動揺したのか、一瞬だけ動きが止まった。

 そして、その一瞬が命取りになる。


 レンは咄嗟に『光球』を自分の後ろに置き、影を長くする。

 その影が黒ずくめのひとりの影にぶつかった瞬間。


「『影縛りシャドウバインド』」


 たまたま黒ずくめの全員の影がくっついていたので、そのまま全員を一気に縛り上げる。


 この後は、レンの影がくっついていなくても、魔法を解除しない限りずっとこのままになっている。

 なので、レンたちはそのまま先に進み、後で回収することにした。


 こうして、アジトでの第1戦は終わった。

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