第70話

 ――やがて、プラムは残りひとりの盗賊を残して全員を吸収した。

 そして、その残りのひとりの盗賊も吸収しようと動き始める。


「――あっ!プラム待って!」


 ピクリと震えると、レンの元へやってくる。

 レンは先程の光景から、まさか自分も吸収されるのかと思ったがそんなことは無く、2匹はさも当たり前のようにレンの両肩に乗った。


「……ふぅ」

「この1人、どうするの?」


 若干離れた位置から見ていた領主様がレンに問いかける。


「えっと、尋問というか案内してもらおうかなって」

「……どこに?」

「盗賊のアジトです」

「……一応、なんでか聞こうか」

「えっと、確かメイドさんは盗賊の数が100人くらいいるって言ってたじゃないですか」

「そういえば言ってたね……」

「なのに、ここにいるのは30人くらいです。だったら残りもいるんじゃないかなって。それに、いなくてもお宝とかあるかもしれませんし」


 レンがそう言うと、領主様は顔に手を当ててため息をついた。


「――すっかり冒険者色に染まっちゃってまぁ……。でも、うん。そうだね。――ミュール!」

「はい、なんでしょうかルイス様」


 そう言って、メイドさんは馬車の御者台から降りようとする。


「……あっ、降りなくていいよ。聞きたいことがあるだけだ」

「はい、なんでしょう?」


 そう言うと、メイドさんは再び御者台に戻った。


「ここから王都まではだいたい2時間くらいだよね?」

「そう、ですね……。だいたい2時間くらいです」

「そう……。王都の門が閉まるまでは何時間だい?」


 メイドさんは少し考えるような仕草をすると、


「だいたい……3時間半くらいでしょうか。もしかしたらもう少し早いかもしれません」

「……そう。じゃあちょっと行ってくる。直ぐに戻ってくるつもりだから待っててくれ」

「……分かりました」


 そして、領主様は残りの盗賊の元へ向かい、


「――それじゃ、アジトを教えろ」






 盗賊はあっさりとアジトの場所を教え、殺さないでくれと命乞いをした。

 どうやら、プラムが仲間たちを吸収して行ったのがトラウマになったようだ。


 そして、盗賊のアジトの場所は今いる林の中から、そう遠くない場所にある事が分かった。


 レンたちはメイドさん達をその場に残し、そのアジトへと向かう。

 息子さんたちは大丈夫なのか、と思ったが、奥さんとメイドさんがとても強いらしく、そこいらにいる盗賊に負けることは無いそうだ。


「……見える?」

「えぇ、そんなに遠くないですね。ただ、そのアジトの入口に2人います」


 レンは『千里眼』を使いながら、そう答えた。


「……じゃあ、行こうか。とりあえずその盗賊を倒さないとね」

「はい」


 レンたちはアジトの入口が見える位置に向かった。







「――『影縛りシャドウバインド』!」


 レンは入口の盗賊の動きを止め、口元を影の鞭でふさぐ。


「むぐぅ……!むー……っ!」


 立ったまま、動くことなくもがき続ける。

 実にシュールな光景だ。

 しかも、影がそんなに色濃くないので、傍から見ると、固まったまま呻いているただの変人である。


 今、レンのいるこの場所は木の影が多く、レンからアジトまでは影が繋がっている。

 なので、多少遠くても動きを止めることや、影の鞭で口元を塞ぐことは出来るわけだ。


「――よし、それじゃあ行こうか」

「はい」


 レンたちは立ち上がり、アジトの入口へと向かう。


 そして、領主様が入口の盗賊を気絶させ、中へと入っていった。

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