第69話

 領主様は剣にこびり付いた血糊を振り落とし、鞘に収める。

 そして、周囲に転がる盗賊たちを見回し、


「……さて、どうしようか」

「……え?」

「いやね、これだけの数の盗賊がいるとなると、街まで運ぶのが大変なんだよ。街まで近いんだったら方法がなくもないんだけど、多分ここから馬車でいっても2時間はかかるからさ」

「……殺す、っていうのは……」


 レンがちらっと盗賊を見ると、その盗賊はレンの視線に気づいて身を強ばらせた。


「うーん、それでもいいんだけど、どっちにしてもなぁ……。燃やしてから埋めるのも面倒だし、何よりあの人の燃える臭いはちょっとね……」


 この世界で、死体は燃やしてから埋めるのは常識だ。

 そうしなければ、ゾンビやスケルトンといったアンデッドの魔物に変わる可能性があるからだ。


 死ぬ際に負の感情を持っていなければ、そのまま埋めても問題はないとされているのだが、この盗賊達は間違いなく負の感情を持つことだろう。


 あとの方法としては、神聖魔法の使える人を呼んできて、浄化してもらうという手なのだが、今この場に神聖魔法を使える人間はいない。


「うーん……。――うん?」


 レンがふと盗賊たちを見てみると、その盗賊たちの上で何かぷるぷるしたものが跳ねている。

 スライムだ。


 レンは首のあたりにいるはずのプラムを確認しようとするが、そこにプラムはいない。

 しかも、そのスライムは光の当たり具合で色が何色にも変わっているではないか。

 プラムであることは明らかだった。


「――あっ!こら!プラム!」

「……えっ?なに?プラム?」


 領主様の困惑したような声を後ろに、レンは急いでプラムの元へと駆け寄った。


「なにやってんの!?」


 そう言うと、プラムは体の一部を触手のように伸ばし、あるものを掲げた。


「……皮袋?」


 プラムが掲げたのは、何かがいっぱいに詰まった皮袋。

 すると、プラムはその皮袋の口を開き、そのまま自分の上にひっくり返した。


 そして、ごろごろと出てきたのは色とりどりの魔石。

 それが全て、プラムに吸収されていく。


「……え?」


 そして、1個、また1個とプラムに吸収される度に、プラムの体が肥大化していく。

 最終的に、プラムの体はレンの身長程にもなった。


「……わぁ、すごいねぇ」


 そう間延びした声で言ったのは領主様。

 いつの間にか、レンの後ろに来ていたようだ。


「これ、レンくんの召喚獣かい?」

「あ、はい。そうです」


 ふたりしてプラムの大きくなった体を眺めていたのだが、突如、ポンッといった音とともに、プラムの体が2つに分裂して、初めの大きさになった。


「「……え?」」


 ふたりの驚いたような表情を他所に、2体のプラムはそれぞれ盗賊たちに近づいていき、胸に触手を一突きした。

 その盗賊はビクンと1回はねたあと、ピクリとも動かなくなった。


 そして、その動かなくなった盗賊を、プラムはポンッと一回り大きくなり、大きな口のようなものを開けて丸呑みした。


「「……は?」」


 シュワシュワとプラムの体内で溶けていく盗賊。

 なかなかにグロテスクな光景だ。


「……ねぇ、あれなにやってんの。レンくん」

「……分かりませんよ。でもまぁ、処理が楽になりましたし……」

「……そうだね。そう考えようか」


 ふたりが現実逃避している間に、プラムはどんどんと盗賊を吸収していくのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます