第66話

 次の日。

 昨日と同じように、部屋の中で軽く鍛錬をし、領主様たちと一緒に朝ごはんを食べる。

 その後、メイドさんが、


「――本日、王都に到着予定ですが、昨日門番の方に、この街から王都の間に盗賊が出ているとの情報をもらいました。その後しっかりと調べてみると、かなり信憑性は高いようです」

「そう……。規模は分かる?」

「一応、100人前後と聞いております。盗賊にしてはかなり大きいのではないかと」


 盗賊は普通、2、30人もいれば、規模がそれなりに大きいとされている。

 そういう意味で、100人というのは異常とも言えるだろう。


「……最近出来たものじゃないね。これは、警戒しながら進んだ方がいいか」

「そうですね」

「……あの」


 レンはふたりのやり取りに口を挟む。


「ん?どうしたんだい?」

「えっと、僕が警戒しておきましょうか?」


 レンは魔眼の『千里眼』と『魔力感知』が使える。

 この2つを併用して使えば、たとえ盗賊が隠れていようとも見つけられるだろう。


 それを領主様に伝えると、


「うーん、でもレンくんに頼るってのもなぁ……」

「いえ、ずっとお世話になりっぱなしなので。出来れば盗賊が出てきたときに、僕に相手をさせてもらえると嬉しいんですけど」

「え、どうしてだい?」

「冒険者になった時に、盗賊を殺す可能性ってあるわけじゃないですか。だから、それを先に経験しとこうかなって」


 冒険者ギルドに持ち込まれる依頼として、盗賊の退治は存在する。

 盗賊に、村を襲われた、商人の馬車が襲われた、そういったことでこの依頼は持ち込まれるのだ。

 その依頼は、冒険者ランクがCランクからBランクに上がる為に必ず受ける必要があるものだ。


 盗賊殺しは罪に問われることは無いのだが、人殺しということもあり、好き好んで受ける人はそういない。

 殺さなくてはいけなくなった状況で、躊躇してしまう人も少なくはないという。

 まぁ殺さずとも冒険者ギルドにその身柄を届ければ、その国の法律で裁いて貰えるのだが。


 閑話休題。


「うーん、そう、だね……。うん、じゃあ任せようかな。人数が多ければ助太刀するけどね」

「はい、お願いします!」


 そして、その後すぐに馬車に乗り込み、まもなく馬車は出発した。






 レンは常に右眼を『千里眼』にし、時折左眼を『魔力感知』にする。

 まぁ、今通っているところは一面に広がる草原なので、わざわざ左眼を変える必要はない気がするが。


 レンが意識をたまに切りかえている間にも、車内では雑談が飛び交っていた。

 今は、ステータスの話だ。


「――へー、レンくんは水と氷と闇のレベルが10なんだぁ……」


 ステータス・ブレスレットからステータスを出し、他人に見えるようにして、それを領主様に見せると、頬をひくつかせながら領主様は言った。


 まぁ、それも仕方ないだろう。

 なにせ、普通の人が上げられたとしても、レベルは8が限界なのだから。

 余程相性が良くないと10には上がらない。


 さらに言ってしまうと、その相性のいい属性だけを育てないと、そこまで上がらない。


「えぇ、なんか相性が良かったみたいで」

「……それ、相性いいなんてもんじゃないから。異常だから」

「でも、それ以外は1ですよ?」

「逆にこんなに10があるのに、それ以外が5とか6だったらおかしいから!いや、これでもおかしいけど……」


 いつか言ったかもしれないが、魔法のレベルはブレスレットに内蔵されているスキルツリーと呼ばれるもので上げる。

 1つレベルを上げるのに、日々魔法を使って貯まるポイントを消費するのだ。


 で、ここで重要になるのが、魔法の相性だ。

 魔法の相性がいいと、必要ポイントは少なくて済む。

 だが、逆に相性が悪いとポイントを多く消費するのだ。


 レンの場合は水と闇がすごく相性がいい。

 それがとてつもなくいい場合は、ポイントは消費しているものの、普通よりも圧倒的に少なくて済む。


 つまるところ、レンにとって氷魔法はもはや必要ポイントがゼロと言ってもいいくらい相性がいい。

 だが、必要ポイントはどのくらい必要なのかは上げてみないと分からず、むしろ足りなければ上がらない。

 だから、ポイントを貯めるだけ貯めて、一気に解放した結果、水と氷の魔法のレベルが10になったのだ。

 ポイントは一時的にそれでなくなった。


 召喚魔法は、村の襲撃以降に闇魔法を10にして以来、一切上げていない。

 おそらく、今でも上げることは出来るだろうが、それを今やる必要はないだろう。


 閑話休題。


「……ふぅ。レンくんの異常さがよくわかったよ……」

「あはは……」

「一応忠告ね。そのステータスを人に言いふらしたりしたらダメだよ。いい様に利用されるだけだから」

「分かってますよ。別に自分が異常なのはよく理解してますし」


 大おば様にはよく、レンは異常な力を持っているんだから、それが普通だと思わないこと、と言われていた。

 実際にどのくらいが普通なのかは分からないが、それは学園に入ってからのお楽しみ、ということで、少し楽しみにしている。


「そう、ならいいけど。あ、そうだ。そのステータス・ブレスレットだけど――」


 領主様がレンに話しかける。

 だが、レンのは近くの集団を捉えた。


「――領主様。盗賊です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます