第65話

「戦況は、武器王ウェポンマスターが味方側に来たことによって、完全に逆転したんだ。びっくりだよね、2人対帝国兵士およそ5万で、2人が圧勝したんだから」

「えっ!?――ちなみに、その2人って……?」

「もちろん、武器王ウェポンマスターと魔女だよ」

「ですよね……」

「その記録とかは全部、王立図書院に保管されてるから、気が向いたら行ってみるといいと思うよ。まぁ、君の近くにその本人達がいる訳だから、そっちに聞いた方が確実だとは思うけど」

「そですね……」


 いつか、覚えていたら図書院に行ってみるとしよう。

 もしかしたら、別の発見があるかもしれない。


 多分、忘れるだろうけど。






「――お、ちょうど着いたね」


 領主様がそう言ったので窓から外を覗いてみると、街の門が目の前に迫っていた。


「明日、着くんですよね?」

「うん。何事もなければね」


 領主様はそう言うと、メイドさんに硬貨の入った皮袋を渡した。

 そして、メイドさんは一度御者台から降り、門番の人と一言二言話したあと、お金を払って戻ってくる。

 そして間もなく、馬車は動き出した。


 前の街は門番もいなかったので、そんなものはなかったのだが、王都が近いからかそういったことも徹底しているようだ。


「――あ、入場税。僕も払わないと、ですよね?いくらですか?」


 レンはそう言って、領主様に入場税分の硬貨を払おうとする。

 だが、


「いや、大丈夫だよ。王都までの道のりでのお金は、全部僕が払うからね」

「え、でも……」

「いいからいいから。うちの領民達を守ってくれたわけだし、そのお礼だと思ってさ」

「う、うーーん……」


 レンは、断ろうかとも思ったが、大人しく領主様の言葉に甘えるとする。

 前にギルマスに言われた通り、冒険者は自分の利益のために動くべき、という言葉を実践する、冒険者としての第一歩だと思うことにした。


「……分かりました。また今度お礼をしますね」

「うん。それでいいよー。まぁ、学園でシャリスとラルクと仲良くしてくれれば、それでいいんだけどね」

「え……?息子さん達の学科と冒険者科と関わりってあるんですか……?」


 レンの貴族と冒険者間の印象としては、冒険者は貴族をただ権力を振りかざすだけ、と思い、貴族は冒険者を野蛮な生き物と見ているイメージだ。

 それは、普通の住民たちも感じている冒険者と貴族の関係に近い。

 そこに、自分たちの利害などが加わることで関係が成り立っていると思う。


 そういう意味で、領主様の息子である息子さん達は、冒険者と関わりを持つとは思えない。

 むしろ、変に関わりを持つと、同じ貴族の子どもたちに虐められる可能性があるのではないか、と思っている。

 だが、そんな考えはお見通しだったようで、


「ん?――あぁそういうことね。それは大丈夫、っていうか、僕らが元々冒険者だからね。あんま気にしてないんだよ。むしろ、変な貴族に絡まれないことの方が心配かな。本人達が望むなら、冒険者になってもいいし」


 そう言って、領主様は両隣りで眠っている2人の頭を撫でる。


「そうなんですか……?」

「そうなんだよ。ほら、宿に着いたから降りるよ」


 そう言って、領主様は2人を横脇に抱えて馬車を降りた。

 目の前には相も変わらず、高級そうな宿。


 レンは、1つため息をついて、宿に入っていった。

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