第62話

「そっか。でも一応知っておいた方がいいと思うから、僕の知ってる範囲で話してあげるよ」

「あ、ありがとうございます」


 レンは大して興味はないが、話してくれるというなら一応聞いておこう。


「うん、えっとまずは――」

「――ルイス様、街に着きました」


 いざ領主様が話そうとした瞬間、メイドさんから街に着いたことを告げられる。

 車内には少し気まずい沈黙が流れ……


「……明日、話してあげるね」

「わ、分かりました」


 その後は特に何事もなく、その日を終える。

 貴族だからか、高級な宿だったので別のところに行こうとしたのだが、ここでの代金は領主様が持つから、と無理やり同じ宿に入れられた。

 一応、払っても余裕があるほどの金は持っているのだが、腐っても庶民なのでそういう所は気が引けるので、あまり行きたいとは思わない。


 唯一起こったことといえば、領主様の前でプラムを出すわけにはいかない、ということで放置していたら、部屋に戻った途端に身体をムチのようにして叩かれた。


 ……近いうちに領主様たちには言わないといけない気がする。

 明日、言う機会があったら言おうと思った。






 翌日。

 今日は日課の鍛錬を、部屋でできる程度で簡単にやり、領主様たちと一緒に朝食を食べる。

 今度はバレないようにこっそり(首元にいるので、口に入れるフリをして首元に持っていく)とプラムにも分けると、身体を震えさせて喜んでいた。


 さすがにやりすぎるとプラムの存在がばれる可能性が高くなるのでほどほどのところで止めた。

 プラムもそれを分かっているのか、そのあとに文句を言うことはなかった。


 そして、ご飯を食べ終わってからおよそ20分後。


「じゃ、そろそろ出発するよー」


 そう言う領主様の声のもと、馬車は再び出発した。





「――じゃあ、昨日の続きだね」


 領主様は街を出てすぐにそう切り出した。

 もしや、この人が話したいだけなのではないだろうか。

 そう思ったが、もちろん声には出さない。


「まずは、魔女シルクについて。よく言われているのが、魔女の魔法の腕は世界一、あとは不死なんじゃないか、とかだね」

「不死、ですか?」


 レンから見ると、大おば様は不死というような印象を受けない。

 どちらかというと、いつ死ぬかも分からない老婆だろう。


 ……言ったら魔法で集中砲火を受けて、その上で身体中の魔力を引っこ抜かれるだろうが。

 一度だけ受けたことがあるが、あれはやばい。

 本当にトラウマものだ。


 閑話休題話しを戻そう


「そう、実は魔女は少なくとも100年前には存在していたんだ。それは、本人が言っていたらしいから間違いないと思う」


 この星の平均寿命は60から80いかないくらいだと言われている。

 それ以前に魔物に襲われて死んでしまう可能性も低くはない。

 だからこそ、100歳なんてのは夢のまた夢、ということだ。


「じゃあ、本当に……?」

「さぁね。でもまぁ、そもそも魔女の存在はここ十数年一切見聞きされなかったんだ。それこそ、巷じゃあ死んだんじゃないかって噂されるくらいにね」

「でも、村では生きていますよ?」

「うん、それを昨日魔女シルクが生きていることを知れたのは僥倖だったよ」


 領主様がそう言った瞬間、レンから殺気が漏れ出す。


「まさか、利用しようとしてるわけじゃないですよね……?」

「……っ!?し、しないしない……っ!そんなことしようもんなら、レンくんに殺されちゃうし、何より僕ごときが魔女を利用出来るわけがないじゃないか……っ!」


 領主様は本気で焦ったように、レンに言う。

 娘さんや息子さんは領主様の裾を掴んで震えていた。


 レンは言われたことに満足し、殺気を霧散させる。


「なら、いいです」

「ほっ……」


 領主様は本当に安心したように、息を吐いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます