第59話

 門の前には人だかりが出来ており、その中心にはメイドさんがいた。


「げっ!ミュール……!」

「ええ、ミュールです。まさか、剣を馬車に隠して、そのまま剣を持って街の外に出るとは……。いつかやるんじゃないかとは思っていましたが、まさか客人のいる今にやるとは思ってませんでしたよ、ええ」


 すごい気迫で領主様に迫るメイドさん。

 まるで後ろに般若がいるかのよう。

 周囲の人だかりも1歩後ずさりした。


「そ、その客人は隣にいるわけだが……?」

「えぇ、知ってますよ。ギルドマスターからお話は聞いていますからね、ええ」

「なっ!?あいつ、裏切ったのか!?」

「いいえ、裏切ってませんよ?私が、無理やり聞いたのです。あ、ちなみにレン様は問題ありませんので先に行ってもらって結構です。後で、屋敷の方にお戻りくださいね」


 そう言って、メイドさんはレンに微笑んだ。

 だが、先の気迫を見てしまったので、気の抜けた反応になってしまった。


「あ、はい。じゃあ、ギルド寄ってから屋敷の方行きますね」


 そう言って、レンはそそくさとメイドさんの脇を通り抜けた。


「あっ!逃げるなっ!レンくん!」


 そう言って、レンを追いかけようとする領主様。

 だが、その前をメイドさんが立ちふさがった。


「まだお話は終わってませんよ。この後、ゆっっくりとお話しましょうね」

「ちょっ、まっ!う、裏切り者ーーっ!」


 その断末魔のような叫び声は、ギルドへ向かうレンの耳にも届いた。





 そして、レンはギルドに着き、受付でギルマスに面会を申し込む。


「ギルマスに会いたいんですけど、大丈夫ですか?」

「あ、はい。お待ちしておりました。ご案内しますね」


 受付嬢さんは前に対応してくれた人だったので、直ぐに通してくれた。


 前と同じ、2階のギルマスの部屋に案内される。


 中には前の領主様と似たような、書類の山の前に座るギルマス。

 そして、乱れに乱れた服装。


 「えっと……ギルドマスター?」

 「お、おぉ。レンか……。すまん、ちょっと待ってくれな」

 「その、どうしてそんなに服が乱れてるんですか……?」


 何となく想像は出来るが、一応聞いてみる。


 「ちょっと、あいつんとこのメイドが横暴でな……。ありゃだめだ。逆らっちゃいけねぇ……」


 何やら遠い目をしてそう言うギルマス。

 やっぱり、メイドさんだったようだ。


 「っと、こんなことしてる場合じゃねぇな。死体を回収してきたのか?」

 「あっ、はい。一応全部持ってきました」

 「分かった。じゃあ案内するから付いてこい」

 「分かりました」


 そう言ってギルマスは階段を降り、前に試験を受けた練習場を通り抜け、ギルドの裏手にある倉庫にやってきた。

 そこには魔物の死体が沢山山積みされており、奥には作業をしている人達がいた。


 「この山の隣辺りに出してくれ」

 「分かりました」


 おそらく、この山はレンが倒した魔物を他の冒険者が回収したものだろう。

 そして、ここにあるのは全体の3分の1程度。


 そう思ったので、レンは2つに分けて、ゴーレム以外の死体を全て置く。

 その瞬間、空気が固まったかのようにシンとなった。


 そして、深い深いため息が作業をしている人達から聞こえた。


 「ギルマスー……。これ、全部っすか……?」


 比較的若い、作業着を着た男性がギルマスにそう聞く。


 「お、おう……。全部、だな……。すまん、頑張ってくれ……」


 ギルマスは申し訳なさそうに男性に言った。


 「はぁあ……。分かりましたよ……。後でボーナス期待してますからね?」

 「わ、分かった。考えとく」

 「……おし。じゃあ、作業に戻ります」


 そう言って、男性はレンに頭を下げて作業に戻っていった。


 「……はぁ。なぁレン。これで全部だよな?」

 「えっと、その……。ゴーレムの残骸って……どうすればいいですか?」


 すごく申し訳なく思いつつ、レンは言った。


 「……はぁ。確かに、ゴーレムを魔物と同格に扱うってのは無理があるよな……。――分かった。こっちで買い取るから、少し離れたところに置いといてくれ」

 「はい」


 レンは3つの山から3メートルくらい離れたところにゴーレムの残骸を全て出す。


 「これがゴーレム、ね……。俺が知ってるゴーレムと若干違うかもな」

 「そうなんですか?」

 「ああ。と言っても、見たのは随分前のことだからよく覚えてないんだけどな」


 そう言って、ギルマスはゴーレムのコアを手に取る。


 「あっ、それは……」

 「ん?どうした?」

 「……いえ、なんでもないです」


 前はそれを触ろうとしたところで、魔物が大量に召喚された。

 今回はないと思うがその可能性も危惧していたのだ。

 まぁ、ギルマスが普通に持ち上げたのでその可能性は無くなったのだが。


 「――ふむ。核はひび割れているが比較的綺麗だな。

 これなら加工すれば売れる、か。……レン。これも売るってことでいいんだよな?」

 「はい、口座に入れといて貰えれば」

 「分かった。レンはいつこの街を出る予定だ?」

 「……さぁ?とりあえず、領主様と相談してからですかね」

 「了解だ。じゃあ、とりあえず屋敷に戻るといい。街を出る時は見送りするからな。……メイドさんに気をつけろよ?」

 「あはは……分かってます」


 レンはそう言って、そのままギルドを出た。

 その時、また熱っぽい視線を感じ、その視線を追うといかにも冒険者、といった風情の男の人たちだった。


(……は?え、まさか女扱いされてる……?)


 レンはそう直感し、レンが見ていることに気づいた男達が立ち上がったのを横目に、逃げるようにギルドを飛び出した。


 そして屋敷に戻って、何やら心ここに在らずといった様子の領主様に謝り、その日は終わった。


 次の日は領主様といつ街を出るか話し合い、3日後に出ることになった。

 その後は街をぶらぶらしつつ領主様の屋敷にお世話になり、3日が経った。






 「――さて、レンくんは忘れ物ない?」

 「全部異空間収納ストレージに入ってるんで、ないです」

 「そう、じゃあ出発するから馬車に乗って」

 「はい」


 レンはそう言って馬車に乗り込もうとする。

 すると、近くにいたギルマスが声をかけてきた。


 「レン。またこの街に来いよ」

 「ええ。いい街ですし、村も近いですからまた来ると思います」

 「村……?ま、元気にしろよ」

 「はい!」


 レンはそう言って馬車にのりこみ、間もなく馬車は出発した。


 いざ、王都へ!

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