第58話

 10分後、領主様は目を覚ました。


「ん、ふぅ……。レンくん……?」

「はい、いますよ」


 レンは領主様の寝ていた木の上から声をかける。


「あぁ、そんなとこにいたんだ」

「えぇ。もう大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫、かな」


 そう言って立ち上がり、領主様は体をほぐし始めた。


「よし、行けるよ」

「分かりました。じゃあ魔法を解きますね。この後はさっきよりも魔物が襲ってくる可能性が高いんで気をつけてください」

「ああ、分かってる」


 領主様は真剣そうな顔でそう言った。

 そして、レンは『部屋ルーム』を解除する。

 それと同時に無数の視線が突き刺さった。


「――っ!」

「大丈夫ですよ、全部が襲ってくるわけじゃないですから」

「そ、それはそうだろうけど……っ!」

「まぁ、さっさと目的を果たしちゃいましょうか」


 レンはそのまま普通の調子で歩き始めた。

 その後ろを、領主様が警戒しながら進んでいく。


 すると、魔物が一気に10体前後襲ってきた。


「っ!レンくん!」

「分かってますよ。『凍結フリーズ』」


 レンが左から右に手を振る。

 それだけで、襲ってきた魔物は全て凍りついた。


「さっ、めんどくさいでさっさと進みましょ」

「あ、ああ……」


 レンはそのまま凍りついた魔物にトドメをさし、『異空間収納ストレージ』にしまう。

 そして、そのまま歩き出した。


 それ以降、魔物が襲ってくることは一切なかった。





「ここ、ですかね」


 レンがたどり着いたのは洞窟。

 おそらく、ゴーレムが守っていた場所だ。


「……こんな所に洞窟?」

「みたいですねー」


 レンはそのままずかずかと洞窟に入っていく。


「えっちょ……。待って!?もうちょっと警戒しようよ!?」

「え?大丈夫ですよ、魔眼を魔力感知にしてますし、古典的なものであれば簡単に分かりますもん。というか、昔身体に教えられましたから……」


 レンは遠い目をして言う。


「あぁ……。――分かった。洞窟の中もレンくんに任せる。命、預けたからね」

「ええ、任せてください。じゃ、行きましょうか。『光源ライト』」



 そうは言ったものの、洞窟内に罠の類は一切なくなく、あっという間に奥に着いた。

 洞窟は一本道で、奥にひとつ部屋があるのみだった。


 「いやぁ、一切ないとか拍子抜けもいい所ですね」

 「まぁ、安全だったってことでいいじゃないか」

 「そうですね。ところで領主様。これって何か分かります?」


 そう言って、レンが指さしたのは壁に描かれた壁画。


 「これは……。200年前の空白の10年に関するものだね」

 「空白の10年?」

 「ああ。と言っても、これは名前ばかりというか、一切その期間の記録が残っていないって所からつけられたって聞いてるね」

 「へー。じゃあこれは?これもその空白の10年のものなんですかね?」


 今度に指をさしたのは、壁に空いたくぼみ。


 「多分、そうじゃないかな。これは……魔石を埋め込むと魔法陣が起動する感じかな。えっと、ほら。ここに魔法陣が描かれてる」


 そう言って、領主様が指さしたのはくぼみの下に描かれた魔法陣。


 「これ、なんの魔法陣なんですか……?」

 「分からない。ただ、下手に起動させない方がいいのは確かだね」

 「そうですね」


 そのあとは特に何も無く、そのまま洞窟をあとにした。

 そして、襲ってくる魔物は全てレンが撃退し、街に着いたのは日が昇り始めた頃だった。

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