第57話

「ちょっ……待って待って!?」


 領主様は急いで剣から手を離し、飛び退いた。

 だが、魔物はしつこく追い縋る。


「レンくん!一旦逃げるよっ!」


 領主様は急いでレンの手を取り逃げようとするが、


「『氷球アイスボール』」


 レンは首に突き刺さったままの剣の柄に『氷球アイスボール』を当てる。

 それにより、突き刺さっていた剣は首を貫通し、刃が後ろに抜けた。

 それが決定打になったのか、魔物は倒れた。


「――はぁ……。助かったよレンくん……」

「いえ。気をつけてくださいね。次がどうなるかは分かりませんから」

「はは……。肝に銘じておくよ……」


 レンはそのまま首に刺さったままの剣を引っこ抜き、領主様に渡した。


「あぁ、ありがとう。ところで、さっきからどうやって死体を見つけたり、魔物の襲撃を知ったりしたんだい?」

 「『千里眼』ですよ。ほら右目の色が違うでしょ?」

 「ほんとだ。薄緑色だね。――っていうか、『千里眼』!?なんで『狂戦化バーサーク』以外に能力スキル持ってるの!?」

 「ええっと、確か前に狂戦化バーサークを使った時に、使えるようになったんだと思います。よく覚えてないですけど。一応、『千里眼』以外にも『鑑定眼』とか使えますよ?」

 「……ことごとく異常な能力だね」

 「僕でもそう思いますよ。さ、次に行きましょうか」

 「そうだね」


 レンは内心苦笑いしながら、次の死体へと向かっていった。








 「――これで最後、ですかね」


 レンは日も暮れ初めて、ようやくゴーレムの傍の魔物の死体を回収した。

 そして、ゴーレムの破片も全て異空間収納ストレージに入れる。


 「……ふぅ、よく疲れないね。レンくん……」

 「まぁ、この程度なら慣れてますから」


 領主様は何度も何度も襲ってくる魔物に、精神的に疲れたのか、途中から全てをレンに任せてただついてくるだけになった。


 「慣れてる、か……。一体どんな生活をしてきたんだか……」

 「えっとですね。おじさんが言っていたんで実際は知りませんけど、周囲のCランク以上?の魔物しかいない森に、2日間放置されたりとか、あとは……」

 「あぁ、もういいよ……何となく分かったから」

 「そうですか?」

 「はぁ……そりゃあ、こうもなるわな……」


 領主様は疲れたようにため息をついた。


 「えっと、休憩します?森に入ってから一度も休憩してないですし」

 「……そうだね。そうさせてもらおうかな」


 そう言って、領主様は傍の木を背もたれに休み始めた。


 「あっ、ちょっと待ってくださいね。『部屋ルーム』」


 レンは、周囲の4本の木に座標を指定し、誰も気づかない安全な空間を作り出した。

 これにより、魔素の多い地帯であるここでも、安全に休むことができる。


 「これは……?」

 「外よりは安全な空間を作り出したんです。ただまぁ、周りが囲まれてないんで、外から見えないだけで入ってくる可能性はあります。まぁ、外よりは絶対に安全ですけど」

 「そう、ありがとう」


 領主様は驚く暇もないのか、疲れたようにそうこぼした。


 「じゃあ、少し休んでてください。少ししたら見たいところがあるんで」

 「分かった。じゃあ、10分寝させて貰うよ」

 「分かりました。じゃあ起きるまで見張っていますね」

 「お願いするよ……」


 ――やがて、領主様は小さく寝息を立て始めた。

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