第56話

「――で、いいんですか?ついてきて」


 レンはギルドを出てから後ろをずっと歩いている領主様に尋ねる。


「大丈夫だって。ミュールにバレたら怒られるけど、剣とか持ってきたのバレてないし」

「屋敷を出た時は持ってなかったですよね?どうやって持ってきたんですか?」


 そう、初めは持っていなかったはずなのだ。

 領主様が先導して、馬車の前に来た時もレンの後ろにいたし、何より領主様が剣を持っていないことに安心していたように見えるのだ。


「あぁそれは、先に馬車に隠しておいたんだ。で、馬車を降りる時に回収したってわけ。いやぁ初めてやったけど、意外と上手く行くもんだねぇ」

「えぇ……。後で絶対怒られますよ?1日では帰って来ませんし」

「あ、そうなの。まぁ、怒られるのに変わりはないからいいよ」

「知りませんよ……?」

「うん、分かってるよ」


 話しつつも、どんどんと東門の方へと進んでいく。

 その最中、領主様と気づいた領民たちが声をかけて、領主様はそれに応えるように手をあげていた。

 領民から屋敷に伝わるとは考えないのだろうか。


 そして、門に着いた。

 当然、領主様が来たとあって、門番たちはガッチガチに固まっていた。

 その横を、レンは無関係を装って抜け、少し先の森で一旦気配を消して木の影に隠れた。


 だがまぁ当然、領主様は門番たちに止められるわけで、


「領主様っ。本日は何用で外に出られるので……?」

「うん、ちょっと外の死体の回収にね」

「領主様自らですか……」


 何やら動揺していたようだが、毎度のことなのか特に止めることなく送り出した。


「えっと、お気をつけて!」

「うん、君たちも頑張って。あ、僕が街を出たことは内緒ね?」

「わ、分かりましたっ!」


 まぁ、確かに領主様が言ったら、意地でも秘密にするだろう。

 だが、メイドさんが来たら答えてしまいそうな気がしないでもない。

 あの人、若干迫力があるのだ。


「さて、レンくん。もういいよー?」

「……はい、後ろいますよ」


 レンはこっそりと領主様の後ろに気配を消して忍び寄った。


「うおっ!びっくりした……」

「あはは。まぁ行きましょうか」


 レンはそう言って、『千里眼』を使いながら進んでいく。

 どうやら上から見た感じ、ゴーレムまでのおよそ3分の1の死体は回収されたようだ。


 とりあえず、レンは1番近くの死体へと向かい始めた。





 「あ、ありましたね」

 「……ありましたねって、僕はほとんど何もやってないんだけど」

 「あはは。すみません」


 レンは魔物が出てきた瞬間に絶命させている。

 それこそ、領主様が剣を構える暇もなく。


 「戦いたかったんだけどなぁ……」

 「あはは……。じゃあ、この後戦います?」

 「そうだね。戦わせてもらおうかな」

 「分かりました。じゃあ、行きましょうか」


 レンはさっさと死体を異空間収納ストレージに入れ、次の死体へと向かっていく。

 すると早速、レンの方向へと向かってくる魔物を『千里眼』で捉えた。


 「――あ、右前から来ますよ」

 「おしきたっ!」


 領主様は剣を構え、魔物の襲撃に備える。

 出てきた魔物は3メートルほどの大きさの猿だ。


 「……ライジングエイプか。さすが、森の奥は全然出てくる魔物が違うねぇ……」


 何やら、領主様は魔物を姿を見た瞬間に見がすくんでいるように見える。


 「どうしたんですか?」

 「あいつはAランク指定の魔物なんだけどね。攻撃を当てた瞬間に電気を帯びるんだ。それこそ、一瞬で絶命させないと、こっちが感電してしまうっていう魔物なんだ」

 「ほえー」


 そんなこと、レンの知る由もない。

 大体の魔物は首を刈れば絶命するので、そんなことになることはほとんどないのだ。

 なったらなったで、魔法を使って凍らせてしまえばいい。


 「一発で仕留められなかったら、逃げる、よっ!」


 そう言って、領主様は魔物に突っ込んでいく。


 「――『一閃』っ!」


 領主様は瞬間的に光になり、魔物の首に剣を突き立てる。


 だが、まだ絶命してないのか、バリバリと雷を帯び始めた。

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