第54話

「――もういいかい?」

「はい、お騒がせしました」

「そうか。で、結局報酬の方はいいのか?」

「……はい、大丈夫です」


 正直まだ気持ち悪い感じはするが、こういうのも冒険者だ。

 そう割り切るとしよう。


「じゃあ魔物の報酬はこれでいいとして、僕からも依頼の報酬を渡さないとね」


 そう言って、領主様は手元に置いてあった鈴を鳴らした。

 そうすると外に控えていたメイドさんが部屋に入って来た。


 その後、領主様がメイドさんに耳打ちし、何かを伝えたあと、再びメイドさんは出ていった。


「……今のは?」

「報酬を用意してもらっているんだ。ほら、息子の依頼」

「ああ、あれですか」


 正直、いろいろありすぎて報酬の件は忘れていた。

 依頼のマネリ草を渡して、それで満足していたのだ。

 冒険者としてどうなんだって話だ。


 そして、少ししたらドアがノックされ、メイドさんが入ってきた。


 手にはトレーを持っていて、その上に硬貨が置かれている。

 そのままメイドさんは領主様の傍にトレーを持ったまま立った。


「ん、ありがとう。で、レンくん。これが依頼の報酬」


 そう言ってメイドさんからトレーを貰い、レンの前に置いた。


「一応、街を救ってくれた分の色を付けて、金貨3000枚。で、それを白金貨に換算して、白金貨30枚。これが君の報酬」


 初めに提示された1000枚よりも増えていて、さらに白金貨と聞いて目がチカチカした。

 確かに金貨100枚で白金貨1枚だが、庶民は白金貨を見たり、使ったりする機会がまずない。


 だからこそ、報酬では金貨と書いてあったのだ。

 まだ、庶民でも使う可能性があるから。


 下手に報酬に白金貨を出すと、冒険者は白金貨の使い道が少ないので嫌がることが多い。

 まぁ、高ランクともなれば、白金貨の報酬もそれなりにあるようだが。


 閑話休題。


「え?え?白金貨……?」

「うん。一応ギルドに預けることも出来るだろうけど、どうする?」

「も、もちろん預けますよ!白金貨1枚分は金貨にしてもらって自分で持っておきますけど、それ以外は預けます!」


 正直ビクビクして街も歩けない。

 もちろん異空間収納ストレージに入れるが、レンは庶民だ。

 白金貨なんてまず使う機会はないし、預けられるなら預けた方がいいに決まっている。


「そう。――だってさ、グラシア」

「ちょ、ちょい待て。レンはまだ登録しとらん!」

「じゃあ登録すればいいじゃないか」

「……そのための機械は持ってこれん。だから次来た時に話を通してくれりゃこっちがやろう」

「んー……じゃあさ、このままギルド行っちゃおっか?」

「……え?」


 領主様のかるーい言葉に間抜けた声が漏れる。


「いや、だってさぁ、僕はこの後ギルドに行って魔物の確認に行くわけじゃん?」

「一応領内で起こったことな訳だし、当然だわな。……そういうのを確認しない領主の方が多いが」

「まぁ、僕はそういうのとは違うってことで。で、どうせならレンくん連れてって、登録してもらおうかなって思ってね。そうすればそっちは楽にレンくんの口座に魔物の代金を入れられるわけだし、レンくんも大金を持たなくて済む」

「ふむ……」

「それに、多分この後レンくん森行くでしょ?」


 突然掛けられたその言葉にレンはぎくっとした。


「いや、あはは……」


 後でこっそり抜ければバレないかなぁと思ったのだが、既にバレていたようだ。

 早めに魔物の死体を回収した方がいいだろうし、何よりゴーレムのいた先を見ておきたかったのだ。

 その場合、1日で帰れるとは思えないので、どちらにしろ抜け出していたと思われる。


 少なくとも、数日以内にはこの館を抜け出していただろうし、何よりこのまま迷惑を掛け続けるというのも申し訳ない。


「ま、そういうわけだし、だったら先に登録済ませといた方が楽じゃん?登録しとけば、最悪ギルドからの依頼ってことに出来るし」

「……分かった。このまま行こう」

「よしっ、じゃあ行こうか。レンくん準備出来てる?」


 彼らはおもむろに立ち上がり、外に出る格好に着替え始めた。

 ギルマスは椅子に掛けてあった上着を着て、領主様はメイドさんに外に出るようの服を持ってきてもらっていた。


「えっ、あっ、はい。武器以外は全部異空間収納ストレージに入ってるんで大丈夫だと思います」

「ああ、あのマネリ草をたくさん取り出したあれね。なるほど」

「――なに?マネリ草があるのか!?」


 ギルマスが領主様の言葉に反応し、レンに詰め寄って来る。

 いかついおじさんに詰め寄られ、レンはたじろいだ。


「え、えぇ。ありますけど……」

「ホントかっ!?今、ギルドではマネリ草の依頼が溜まっているんだ!どうか売ってくれないかっ!?」

「も、もちろんいいですよっ」


 あると言った瞬間に、さらにレンに詰め寄って来る。

 正直、目の前にいかつい顔があって怖い。


「ほら、グラシア。レンくん困ってるから。そういうのはギルド着いてからやろうよ」

「む、むむぅ……。それもそうか……」

「……ほっ」


 謎のプレッシャーから解放され、レンはほっと息を吐く。


「――じゃ、馬車も用意出来たみたいだし、行こっか」


 そう言って、領主様先導のもと館を出て直ぐに止まっていた馬車に乗り込む。

 そして、乗ってまもなく馬車は冒険者ギルドへと走り始めた。

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