第52話

「――これが、僕の知ってる全てです」


 そう言って、レンは長々と事の顛末を話し終える。


「そう、か……」


 そう言う領主様の声は、何とか絞り出したような、弱々しい声だった。


「厄災のスキル、狂戦化バーサーク、ね……。確かにそれならあの様子も、君の腕があの状態だったのも頷ける」

「あの状態……?」


 おそらく今腕に巻かれている包帯のことだろうが、レンには全く覚えがないのでどうなっていたのか少し気になる。


「ああ、実際に見た訳じゃなく、治療をお願いした教会から聞いた話なんだけどね、腕の中の筋肉が全部断裂していて中が液体のようになっていたらしい。で、その包帯は何とか教会に頼み込んで『ハイヒール』を掛けてもらったんだけど、どうやら『ハイヒール』ではある程度迄しか回復出来なかった。だから、そんなに動けないように包帯を厳重に巻いたんだとか」

「へー……」


 予想以上にひどい傷だったことに、レンは頬を引き攣らせる。

 何やってくれてんの!?狂戦化バーサーク!?


「それで、それ以上の治療をするなら王都に行かないと行けないわけなんだけど、どうする?」

「あ、僕は学園に行くので王都行きますよ」

「あ、そうなんだ。じゃあ学園にはふたりも行くから、その時に一緒に行こうか」

「分かりました」


 一時的な沈黙が流れる……。


 耐えかねたレンがひとつ聞いてみたいことを尋ねた。


「……あの」

「うん?」

「僕のこと、怖がらないんですか……?」

「あぁ、狂戦化バーサークのことかい?うーん、まぁ、うちの兵士の中には怖がっている人とかいたけど、別に僕らは、ねぇ?」

「えぇ、同じ人ですもの。スキル云々で迫害とかされるなんて、可哀想ではありませんか」


 そう、奥さんは言った。

 その言葉にレンは少しばかり驚き、あぁ、話したのがこの人たちで良かった、と思った。

 それこそ、違う人に教えていたら追い出されていた可能際もある。


「まぁ、あの能力は使わないに限るよ。必要最低限、自分の身と誰か大切な人を守るときだけにしなさい」

「分かっています」


 するとその時、部屋のドアがノックされた。


「……ん?誰だい?ここに誰も入れるなって言ったあったはずだけど」

「少々お待ちを。確認して参ります」


 そう言ってメイドさんは部屋を出て確認しに行った。


 少しして戻ってきて、


「ギルドマスターのグラシア様がいらっしゃったようです。どうなさいますか?」

「グラシアが?分かった、直ぐに行こう。何処だい?」

「第二会議室に案内してあります」

「分かった。多分、レンくんに関することだろうし、レンくんは一緒にね。ララルア達はもう部屋に戻っていいよ」

「分かりました」

「分かったわ」


 娘さんは何やら嫌そうな顔をしていたが、渋々部屋に戻って行った。


 レンは、領主様に名前教えたっけな、と思ったが、よくよく考えてみればメイドさんに教えたんだから、その主である領主様に伝わってもおかしくない。

 自己紹介しなくて済んだ、楽観的に考えることにしよう。


 そう思いつつ、レンは領主様について行った。


 途中、廊下に置いてある高級そうな壺や絵画を見て、ああ、やっぱり貴族の家なんだなぁ、と思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます