第47話

(また狂戦化バーサークを使うしかないのか……っ!)


 レンは2年前、狂戦化バーサークの2回連続使った時のことを忘れていない。

 突如意識が無くなり、気がついたらベッドの上だったのだ。


 さらに、狂戦化バーサークは自身の一切の傷を無視して攻撃することになる。

 それはつまり、今使いものになっていない腕を使うということ。

 その後のことは想像にかたくない。


 だが、手がないのも事実。

 しかも、魔力も使いすぎで尽きかけているのだ。


(――万事休す、か……。……うん、覚悟を決めよう)


 レンにとって街に思い入れがある訳でもないが、魔物に人が殺される、というのは見たくもない。

 自分と同じような経験を人にはして欲しくないのだ。

 レンは覚悟を決め、能力を発動する。


「……『狂戦化バーサーク』……っ!?」


 狂戦化バーサークを発動。

 それと同時に、レンの意識が上から思い切り重力をかけられたように重くなる。


(重い……っ!?意識が……薄れ……る……っ!)


 それに抗う術はレンには無く……。

 そのまま、レンは暴走する厄災となった。





「がああああああああぁぁぁっ!」


 レンバーサークの口からこの世のものとは思えない声が出される。


 そして、レンが危惧していたことをレンバーサークは早速した。


 痺れる腕を少しずつ動かし、腰に提げた2本の短剣を両手で片方ずつ掴んだ。

 そして、腕に全力で身体強化をし、そのまま魔物の群れの中心で魔物を切り刻む。

 その際、レンの腕から肉の引きちぎれるような音が響いた。


「があぁぁっ!」


 だが、この状態のレンバーサークにはそんなことは関係ないようで、何度も何度も振りかぶる。

 いつしか腕から肉の引きちぎれる音は聞こえなくなり、身体強化をしても動かなくなった。


 そのまま、短剣を取り落としそうになり、レンバーサークは風魔法で鞘へと戻す。

 この時、レンの意識が作用したのかは定かでは無いのだが、このおかげでレンは大切な短剣を失わずに済んだという。


 そして、この時には残りの魔物は後に50体を切っていた。

 だが、これだけの魔物が減ったにも関わらず、魔物は一切引く様子を見せなかった。


「ぐ、があぁぁっ!」


 そして、レンバーサークは腕が完全に使えなくなったので、今度は足に魔力を纏わせ、そしてその魔力を魔物の群れへと刃のように鋭くして飛ばす。

 それにより、十数体が切り刻まれる。


 さらに2回、魔力刃を飛ばし30体程度倒した。


 だが……。

 もう既に森の出口は見えており……。

 魔物が数体、森を抜けてしまった。






「――盾兵構えっ!魔法部隊っ、用意っ!放てっ!」


 魔物が森を抜けると同時に、盾を持った兵士に足を止められ、さらに森から少し離れたところから魔法が放たれる。

 だが、ほとんど傷を負わせることは出来なかった。


「ちっ!……あ?おいっ!子どもの安全を最優先に、迎撃しろっ!」

「「「了解っ!」」」


 明らかにレンを見て言っているようだ。

 だが、今のレンは狂戦化バーサーク状態。

 そんなことで止まるはずがない。


 しかも、ここは森の被害を考える必要がないときた。


 レンバーサークは視線を上に向け、魔法を発動する。

 その魔法は、


「『擬似太陽プロミネンス』」


 魔物の群れの上に、巨大な火の球が現れる。


「「「なっ!?」」」


 兵士達は目の前の魔物から目を逸らし、上空に現れた太陽を見る。

 普通は目の前の敵から目をそらすことは命取りなのだが、魔物は今度こそ自分の危機を悟ったのか後ろに下がり始めた。


 だが……。


 レンバーサークが視線を魔物に向けると、太陽は魔物に向かって落ちていく。

 急いで魔物は逃げるが、遅すぎた。


 着弾と同時に熱風が吹き荒れ、さらに地面にはガラス状になったクレーターが。


 そして、レンバーサークは力を使い果たしたように、元の姿へと戻った。

 そこで、ようやくレンは意識を取り戻した。

 だが、レンには歩くだけの力すら残っておらず、膝をついて倒れた。


 レンが倒れたことで、はっと思い出したようにレンの元へと駆け寄る騎士達。

 レンは最後の力を振り絞るように、異空間収納ストレージから依頼書とマネリ草を取り出し、手のひらの上に置く。

 そして、安心したようにレンの意識は落ちていった。


 これでレンの依頼は達成、ということになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます