第42話

 飛び退いた直後、直前までレンがいた場所には大きなクレーターと、振り下ろされた大きな拳があった。

 その拳の正体は大きな岩の巨人。

 俗に言うゴーレムがだった。


 ゴーレムは何かを守るために何者かによって作られるものだ。

 ゴーレムの中にあるコア壊さない限り何度でも復活し、再び守るべきものを守るために敵を排除すべく、動き始める。

 また、そのゴーレムに刃が通ることはほとんど無く、かなりの強敵とされている。


 強力、という意味ではここに出てもおかしくは無いだろう。

 だがゴーレムがこんな山の中に出ることは本来有り得ないはずなのだ。


 もしかしたら、ゴーレムの背中の向こう、森のさらに奥に、があるのではないか。

 レンはそう思えてならなかった。



 そんなことを考えている間もゴーレムの攻撃は続いている。

 普通の人なら潰れてもおかしくはない攻撃も、レンは身体強化をすることによって二本の短剣で受けることは出来ていた。

 だが、案の定岩なので固く、攻撃してもほとんど通っている様子はなかった。


 しかも、周囲は暗くなってきており、攻撃が見えなくなってきている。


「やばいな……。『光源ライト』」


 レンは一旦攻撃を受け流し、直後に『光源ライト』を発動する。

 だが、


「――えっ!?吸収された……っ!?」


 レンが魔法を発動した直後、その魔法は発動することなく、ゴーレムへと吸収されて行った。

 そして、ゴーレムの身体からは赤いモヤが出てくる。

 まるで、身体強化のように。


 そのまま、再びゴーレムは攻撃をしてきた。

 さっきとは比べ物にならないくらいに、速度が上がっており、さらに威力も段違いになっている。


「ぐっ……!」


 何とか持ち堪えたものの、そのたった一撃で腕は痺れてしまっていた。


(やばい……っ!)


 レンは咄嗟に気配を消し、近くの木の影に隠れる。

 一時的な凌ぎなのかもしれない。

 でも、せめて腕が回復するまでの時間は稼ぎたかった。


 だが、ゴーレムはレンの居場所が分かっているかのように、的確に攻撃をしてくる。


「うそ……っ!?」


 レンの気配を消す能力は、大体の魔物に通用する。

 匂いや音を立ててしまえばバレてしまう場合もあるが、基本的には見つかることは無い。


 ゴーレムには匂いを感知する能力はないはずだし、音を聞き分ける能力もなかったはずだ。

 それでもバレるということは、ゴーレムにはそれ以外の感知能力があるという事。


 これはまずいと思ったレンは仕方なく能力を発動する。


「使いたくなかったけど……仕方ない。『狂戦化バーサーク』!」

[――マスターによる能力の発動を確認]

「身体を預ける!魔法は僕が使うから、身体を護ってくれ!」

[了解しました。マスターの身体の一部支配を開始します]


 レンの髪色が黒く、瞳は金色に変化した。






 レンはあれ以来狂戦化バーサークを使っていない。

 この能力が悪い訳では無いが、もしもこの能力に早く目覚めることが出来ていればみんなを守ることが出来たのではないか、どうしてもそう考えてしまう。


 レンはこの能力を使う時は、何かを守るとき、自分の身を守ることができなくなった時、そして魔王軍と戦う時だろうと思っている。



 前に、大おば様に聞いたことがある。

 魔王軍を倒した英雄、勇者といった人達は、ほぼ全員強力な固有能力ユニークスキルを持っていた。

 だが、それ以外の希少能力レアスキルや能力を持たない人達の攻撃は、魔王軍にほとんど効かなかったという。


 魔王軍に同じ魔法を使ったとしても、固有能力ユニークスキルを持っている人の場合はそれなりのダメージを与えるに至ったが、希少能力レアスキルを持っている人の場合は、少し傷をつけることが出来ただけ。


 もしかしたら、希少能力レアスキルという能力は、、そう大おば様は言っていた。

 故に、固有能力ユニークスキルは魔王軍に対する確実な攻撃手段になる可能性が高い、とも。


 レンはこの能力を持て余すつもりは無い。

 何か守るものができた時、次は失うことがないように。

 レンは全てをかけるのだ。



「『狂戦化バーサーク』|接続完了。目の前の敵を排除します」

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