第37話

 大剣は勢いをそのままにレンの腹に刃を立てようとする。

 だが、レンは身体を右に逸らし、手に持った短剣で軌道を反らした。


「ちぃっ!」


 だが、さすがは元ベテランの冒険者と言うべきか。

 レンに隙を晒すことなく、再びレンに襲い掛かった。

 だが、レンは彼の大剣を足場に、空高く飛び上がる。


「なっ……!?だが、空中では逃げ場がないぞ……っ!岩よ集いて、敵を貫く弾となれ!『岩弾ロックバレット』!」


 彼は、レンを逃がさないように、レンの前と後ろから魔法を放った。

 だが、無論こんなことで負けるレンでは無い。


「『氷柱アイスピラー』」


 レンは自分の周囲4方向全てを囲い、さらにステージの四隅に同じく『氷柱』を立てた。

 弾は柱を傷つけることすら出来ずに、粉砕して消えた。


「なんだ……!?」


 そして、レンは周囲の柱を内側から破壊、土煙が立ち込めた。

 その隙に自分の気配を消して隅に設置した柱の影に隠れる。


 そして、土煙が晴れると同時に、彼に襲いかかった。

 念の為、本物のレンがどれか分からないように幻影でレンを作り出し、一斉に襲いかかった。


「なっ……!んなろっ!」


 彼は周囲を一掃、幻影のレンを切り飛ばした。

 だが、レンはその隙に彼の懐に入り、首元に短剣を押し付ける。


「これで、終わりですね?」

「あ、あぁ……」


 こうして、レンの実力を確認する試験は終わった。






「なぁ、あれは何をやったんだ?」


 レンは現在ギルドマスターの部屋に向かわされていた。

 何やら説明があるらしく、非常にめんどくさいのだが学園に行くためだと割り切って向かっていた。

 その道中で彼はそんなことを聞いてきた。


「あれ、とは?ちょっとなんの話かわかんないです」

「とぼけるな。お前魔法使う時に詠唱しなかったな!わざわざ消費魔力を3倍近く多く消費する必要はなかっただろう。しかもあの威力はどういうことだ」

「あぁ、あれ消費魔力は詠唱して使うよりも、少ないくらいですよ?かなり抑えてますし」

「なんだと!?」

「ほんとですよ。詠唱だと決まった量の魔力が持ってかれて、細かい調節が効かないんですよ」


 そう、レンは昔魔法楽しい!と言っていろいろ魔法を研究していたことがあったのだ。

 その時に、無詠唱の場合は、細かい調節が効くが扱いが難しいために消費魔力が多くなる、ということが分かったのだ。

 逆に、詠唱すると、ほぼ決まった量の魔力が持っていかれ、細かい調節が困難になる、ということが分かった。


 レンは魔力操作がとても得意だったので、逆に無詠唱で魔力を少なく、それでもって詠唱した場合よりも威力が強くなるようになったのだ。

 それは、魔法を使用する際に発生する余分な魔力を無駄なく使用したからなのだが、レンはそこまで気にしていなかったので、まぁなんか出来た、みたいな感じになっている。


 閑話休題。


「そうなのか……」


 彼は何か言いたげだったが、もうギルドマスターの部屋に着いているので、何も言わなかった。

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