第2章

第34話

 村を出て、数時間。

 変わり映えしない景色を横目に、レンは街道を歩いていた。


「退屈だなぁ……」


 このまま歩き続けても、街までは3日。

 正直、苦痛でしかない。

 魔物が襲ってきてくれれば、退屈しないのだが。


「あ、そうだ。山を突っ切ろう!」


 思い立ったが吉日、と言わんばかりに、街道を逸れて山へと入っていく。

 山を突っ切れば、急げば1日で着くが、ゆっくりと2日ほどかけて行く。

 別段急いでいる訳では無いし、変わり映えのしない景色に飽きただけなのだ。

 周りには魔物の気配が多数あるが、襲ってこないのであれば放置する。

 襲ってくるなら襲ってくるで、刺激があって退屈ではないので、それもまた一興だ。







 レンは森の中をすいすいと進んでいく。

 しばらく歩いていると、レンは目の前に魔物がいるのを発見した。


「――ん?あれは……」


 それは小さなスライム。

 それもただのスライムではなく、虹色に変化し、色々なものに擬態するので見つけにくいと言われている、レインボースライムだった。

 敵意がなく、一部の愛好家には大人気で高値で取引される魔物だ。

 無論、こちらが敵意を剥き出しに遅いかかれば、反撃してくるが。


 そんな魔物が今、レンの目の前にいる。

 だが、木々に擬態しているので、よく目を凝らさないと見つけられなかっただろう。


「んー……」


 レンは少し気になったので、スライムをつんつん、と指でつつく。

 すると、スライムはぷるぷると揺れた。

 攻撃と認識していないのか、反撃はなかった。


「あ、意外と可愛い」


 スライムの目はくりくりとしていて、愛らしい表情をしていた。


「ん……いけるかな。『契約召喚コントラクトサモン』」


 契約召喚:召喚魔法が使えるようになると、使える魔法。魔物がその魔法を受けて同意すれば、その魔物と召喚契約することが出来る。


 レンは2年間の大おば様との猛特訓の結果、闇属性がレベル10になり、召喚魔法が使えるようになった。

 レンにとっては初めての召喚魔法。

 成功するか、どっきどきである。


 スライムは一瞬ふわっと光ったあと、光の玉となってレンの身体に吸い込まれるように消えた。


「――おっ。こうなるのか。『召喚サモン:レインボースライム』」


 レインボースライムは、レンの足元に召喚された。

 そのままレンに擦り寄ってきて、身体をよじ登り、肩で止まった。

 スライムは肩に乗ったまま、きゅいきゅいと鳴く。


 どうやら、この子の位置はここに決まったようだ。

 そっとスライムの頭を撫で、再び山を登り始めた。


 名前は後で決めよう。






 あれから数時間、日が傾いてきたのでここで野宿をすることにした。

 場所は、山の頂上付近の少し平坦な場所。

 そこで、登っている最中に襲ってきた魔物を捌いて料理する。

 まぁ、料理と言ってもただ焼くだけなのだが。


「んー、こんなもんかな」


 目の前には、焼けたキラーラビットが。

 キラーラビットは、発達した足で、相手の身体を的確に破壊していく魔物だ。

 しかも、いきなり襲ってくるので、防ぐことが出来ずに死んでしまう冒険者も少なくない。

 その凶暴性から、冒険者ギルドではこれを倒すことでやっと初心者卒業と言われている。

 ちなみに初心者卒業と言われるランクはDランクだ。


「お前も食べるか?」


 レンは自分の分の肉を確保した後、レインボースライムに肉を食べるかと聞いてみた。

 だが、きゅいきゅいと鳴くだけでよく分からない。

 しょうがないので、そっとスライムの前に肉を置くと、大きく口?をあけて飲み込んだ。

 その様子にレンは呆然とするものの、直ぐに次の肉を置いてやる。

 すると同じように飲み込んだ。


 しばらくそれを繰り返したところ、満足したのか、とても満足気にきゅいきゅいと鳴いてレンの肩に乗り、すやすやと寝始めた。

 その様子が可愛いので、スライムの頭を撫でながら、名前を考えなきゃなぁと思う。


「うーん……。きゅい、きゅる……。なんか違う気がする」


 周りに魔物を寄せ付けない結界を張ったあと、うーんうーんと悩んだものの、全くいい案は思いつかず、そのまま寝てしまった。






「――プラム!」


 起きて早々、レンはそう言った。

 その声にびっくりしたのか、スライムはビクッとして目を覚ました。


「お前の名前はプラムだ!どうだ……?」


 レンは寝ている間に肩からお腹に移動したのであろうスライムの目を見て言う。

 すると、スライムはきゅいと嬉しそうに鳴いた。


 レインボースライムの名前はプラムに決まった。





「あ、そうだ。スキルツリーはどうなってんだろ」


 レンはブレスレットの紫のボタンを押し、召喚魔法の欄を開く。


「お、変わってる!」


 召喚魔法の木には、1つの木の実が付いており、それをタッチするとプラムのステータスが表示された。

 名前の欄はプラムになっており、ちゃんと名前が決まっていることがわかった。


 だが、それ以上は種族:レインボースライムと書かれている以外何も書かれていなかった。


「ふーん……。スキルあるとかはわかんないのか……。――まぁいっか。可愛いし」


 結局は可愛ければいいってことで、レンは身の回りを片付けて再び歩き始めた。

 今日の夕方には街に着くように行こう。

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