第31話

 あの後、すぐにレンは気絶してしまい、次に目を覚ましたのは5日後だった。

 どうやら魔力が枯渇する寸前まで魔力を使ったらしい。


「う、うぅん……」

「お、レン。起きたか」

「……っ!ギリー!ネクソン!フィーちゃん……!」


 レンは目を覚まし、いるはずの仲間たちの名前を呼ぶ。

 だがそれを、大おば様は悲しそうな顔で否定した。


「……もうおらぬよ、3人とも」

「……っ!夢じゃ……なかったのか……」

「……あぁ、夢じゃったらどれほどよかったことか……」

「僕は……僕はっ!ギリーも!ネクソンも!フィーちゃんもっ!誰もっ!守れなかった……っ!」


 レンの目からボロボロと涙がこぼれ落ちる。

 それは、仲間たちを守れなかった自分の不甲斐なさと、自分だけが生き残ってしまったという喪失感だった。


「僕は……弱いっ!……もっと、強くなりたい……」

「あぁ……。今は、思いっきり泣くといい……」

「う、うああぁぁぁぁ……!」


 その日は決して泣き止むことはなく、次の日も、そのまた次の日もずっと、ずっと……泣いていた。






「――そうか。じゃからこの村が……」

「はい、教会と国の上層部はこのことを既に知っております。一応知らせて置いた方が良いかと思い、ここに参らせていただきました」


 大おば様の目の前には教会の法衣を来た、明らかに上の立場であろう人が座っていた。


「それにしても、魔王か……。じゃが、言われてみると納得じゃのう」

「えぇ、まだ当人に話を聞くことは出来ていませんが、今回襲ってきたのは魔王軍の者と考えられていますから」

「そうじゃな。わしは村の結界を崩壊させる訳にはいかんかったから、レンの元に向かうことが出来んかった。――結果、あの子もわしにとっても悲しい結果になってしもうた」


 レンたちがオリアスたちに集中することができたのは、主に大おば様のおかげである。


 大おば様は結界によって、大抵の魔物は消滅した。

 しかし、それ以外のある一定以上の強さを持った魔物とオリアスが結界内に侵入してしまった。

 侵入した魔物によって、戦える村人達は全滅、おじさんが全て倒したものの被害は甚大だった。


 その際、メリダとアルバスはオリアスの相手をしたものの、おじさんが目を離した隙に殺られて、連れ去られてしまった。

 その場にいた魔物を全て倒し、オリアスを追いかけたところ、レンが殺される現場に遭遇した、という事らしい。


 なお、ムルムルらがいたのは結界外だったために、多くの魔物がいたようだ。


「とりあえず、レンのところに行ってみるしかないのう」

「そうですね」


 レンのところに向かうべく、レンのいる部屋のドアを開けると、レンがドアの前に立っていた。


「……レン。全部、聞いておったのか」

「うん……。僕は、魔王を倒すよ」

「……そうか」


 レンの瞳には、強い憎しみと自分への怒りが宿っていた。

 その瞳に大おば様は恐怖した。


 この子は自分を犠牲になそうとしているのではないか、と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます