第27話

(守れなかった……)


 レンは深く暗い思考の海で、何度も何度も自分を責める。


(ギリーも、ネクソンも……。ナフィでさえもっ!誰もっ!誰も守れなかった!)

(守りたかった……。でも、守れなかった……)

(力が、欲しい。あいつらを倒す力が。大切な人を守るための力が)






[力が欲しいか……?]


 ふと、レンの中で声が響く。

 その声は、レンを連れて行ってはいけない誘惑の森へと誘うかのよう。

 だが、レンは迷わなかった。


(――っ!あぁっ!欲しいとも!あいつらを倒せるのならば、どんな力だろうと構わないっ!――力が欲しい)


 レンは一瞬驚いたが、すぐに答える。

 たとえ、これで死ぬことになろうとも、別に構わなかった。


 全てはみんなの復讐のため。

 それさえ出来れば、命すら惜しくはないと思える。


[――マスターの応答を確認。狂戦化バーサーク、封印を解除。適合率確認、100%]


 その声は淡々と言葉を紡ぐ。

 そして、レンは思考の海から無理やり引き釣りあげられた。


 その後に待っていたのは、強烈な痛みだった。


「ああああああああああああっっっっっ!!!」


 レンは雄叫びをあげる。


 そして、だんだんとレンの意識は薄れていく。


 ここに、怪物は目覚める。

 雄叫びは、怪物の産声となった。










「――我は再び目覚める」


 レンの口から、言葉が紡がれる。

 ただ、その声はレンのものではなく、意志のこもっていない淡々としたもの。


「我は人を狂わせるもの」


 レンの周りに黒色の靄が渦巻く。

 その靄はレンの周りを囲み、繭のようにレンをくるんでいく。


「我は人の世を混乱に落としいれるもの」


 村の方向からレンに向かって、数多くの光の玉が集まっていく。

 その光の玉は、どんどん繭へと吸い込まれていく。


 それは、ギリーやネクソン、ナフィなどの胸からも現れた。

 ゾンビになっていたメリダとアルバスからも現れ、二人は倒れて動かなくなる。


 ムルムルが驚いているようだが、そんなことはどうでもいい。


「かの盟約に従い、我はこの者に力を貸そう」


 靄が晴れ、レンの姿が現れる。


「我は狂戦化バーサーク。人の世に厄災をもたらすものなり」


 レンの群青色の髪は黒く染まり、青み帯びた灰色の瞳は金色に染まって、輝いていた。










 ムルムルたちは、レンにトドメを指すべく攻撃をしようとしたのだが、その直後にレンから魔力の奔流が吹き荒れ、近づくことが出来なくなってしまった。


 魔力の奔流が収まったので、レンの姿を確認する。


『っっ!?なんだあれ!?』

『……まずいな』


 オリアスは冷静に今の状況を分析する。


『……どうまずいんだ?』

『分からないのか?あれは本気で戦わないとこっちが危険なものだ。――故に武器を装備する。今のうちに準備だ』

『……ちっ』


 ムルムルは舐められているのかと思い、イラつくものの、武器を手にするべくアンデッドホースに近づく。


『“魔装、ハルパー”』


 ムルムルがアンデッドホースに手を当て、呟くように言う。

 すると、アンデッドホースの身体が輝きだし、形を変えはじめる。

 それは大きな鎌になった。





『魔装解放。――魔装、“シャルル”』


 オリアスが魔装の名前を言うと、オリアスの両腕がメイスのようになった。


 ムルムルのアンデッドホースが大鎌になったのは、オリアスの能力によるもの。

 そして、オリアスはその能力で自分の腕を武器とした。


 オリアスの能力の使い方は多岐にわたるものの、彼の戦い方は基本的にこうだ。

 彼曰く、これが1番戦いやすいらしい。

 そしてこの戦い方で負けたことは、一度たりとも無い。






 レンの相手としては最悪。

 だが、何としてでも勝たなければならない。

 これは、復讐のためなのだから。




 レンの運命を掛けた戦いが、幕を開けた――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます