第22話

 村に戻ってすぐに、レンたちは門を出た。

 いくら鐘が鳴っているとはいえ、おそらく西門が手一杯で、助けは来れない可能性が高いだろう。

 幸いにも、見える限りにはゾンビ、スケルトン、グールしかいない。

 この場はレンたちが抑えるしかないだろう。


「おっし!さっさと倒して村の人たちを街へ運ぶぞ!」

「「「おう(うん)!」」」





「――なぁ、なんでここにゾンビとかがいるんだ?ここらへんにこいつら出ないよな?」


 唐突にギリーがそう言う。


「そうだよな、俺もおかしいと思った」

「うーん……」

「とりあえず倒そうよ」

「だな」

「おう、どりゃーー!!」


 話しながらもゾンビやスケルトンを蹴散らしていく。


 そもそも、この襲撃は色々なところがおかしい。

 敵が強すぎることや、村人を逃がさないようにしているように見える点だ。


 敵の強さは、殺気がレンの家の方まで届いたことからかなりの強敵がいることが分かる。

 計画的に思える襲撃は、村を出てすぐに襲撃されたことや、本来この辺りで出てこないゾンビやスケルトンが出てきたところが挙げられる。


 そもそもなんのためにこの村を襲撃するのか、それが全く分からない。

 弱い魔物が襲撃するならばまだ分かる。

 森などからあぶれてきたものは、食料などを確保するために襲撃するからだ。


 だが、強い魔物は自分のテリトリーを持っていて、そのテリトリーに入ったりしない限り襲ってくることはほとんどないと言われている。


 ――ひとつ、可能性として『強行進軍スタンビート』が挙げられる。

 強行進軍スタンビートは強力な魔物が自分よりも下の魔物を率いて、村や街、時には都市を攻める事だ。

 その時は魔物が凶暴化していて、その魔物たちは本来のランクのひとつ上となる。

 欲望も意思もなく攻めてくる様子は狂気じみているらしい。


 だが、この襲撃はそんな様子はない。

 至って普通の魔物だ。


「まぁ、とりあえず倒しまくりゃいいだろ!どりゃーー!!」

「まぁ、そうなんだけどさ。フッ!ヤッ!ハッ!」

「あはは、まぁ、そうだね。『聖域サンクチュアリ』!」


 聖域は神聖魔法で、ゾンビやスケルトンといったものに有効な魔法だ。

 直接的な攻撃力はなく、範囲内に入った死んでいるものを浄化する。

 さらに、範囲内の味方を治療する効果もある。

 今の魔法で、おそらく200体は浄化出来ただろう。


「うーん、それでいいのかなぁ……。『氷槍アイスランス』」


 レンの上に氷の槍が何回かに分けて現れ、100本近くが浮遊する。

 そしてレンが腕を振ると、槍は魔物が多い場所に着弾した。


 ギリーが魔物を吹き飛ばし、ネクソンが近づいてきた魔物を、槍で的確に頭を突くので、レンやナフィには一切魔物が来ない。

 そして、レンやナフィが範囲的な魔法を打つことで、沢山の魔物を殺す。


 今までに何度もやったことだ。

 今更間違えることはしない。

 だが、


「……なぁ、全然減らねえんだけど」

「ああ、そうだな。少しおかしい。――レン!行ってくれ!」

「分かった!」


 何かあれば、レンが偵察に行くことになっている。

 一旦魔法を使うことをやめ、ナフィに少しの間任せる。

 少し大回りをしながら、おじさんから習った気配を消す方法で魔物を切り裂きながら奥へ奥へ進んで行く。


 進むにつれて魔物がどんどん強くなる。

 ゾンビやスケルトンの強化種だ。

 だが、本命はこいつらでは無い。


 さらに先へと進む。

 ここからは余計な時間を使いたくないので、木の枝を足場に跳んでいく。

 ここへ来て、異常な魔力の塊を感じるようになった。

 おそらく、これが元凶。

 そいつの姿を確認して戻ろうとレンは思った。





(――見つけたっ!)


 木の上からそいつの姿を確認する。

 気配がバレないように慎重に。


 辺りにはかなり強い魔物がいっぱいいる。

 魔物を召喚するような魔法陣もあるので、ここから魔物が来ているのだろう。

 それよりも親玉はどれだろう、と思い辺りを見回す。



 見回してみると、それはすぐに見つかった。

 ――人型だ。

 だが、人間では無い。


 頭に角が生えてるし、魔力も多い。

 何より傍にアンデッドホースみたいな魔物がいる。

 みたいと言ったのは、そいつを知らないから。

 上位の魔物であるのは魔力から分かる。


 こいつらには勝てない。

 直感的に、レンはそう判断した。

 何より角の生えた魔物。

 あいつには絶対に勝てないだろう。




 そろそろ戻ろう。

 そう思い、レンは立ち去ろうとする。


 だが…………。

 戻ろうとした瞬間、角の生えた魔物が何かをレンに向かって投げた。

 レンはギリギリで避けたものの、髪の毛が何本か切られた。


『ちっ、避けられたか』

「!?!!!??」


 魔物が喋る。

 まずありえないし、そもそもレンの気配を掴んでいたということに驚き、レンの動きが止まる。

 だが、追撃が来ない。

 そもそも、あいつはこちらを今向いていない。

 気配が掴まれていない、ということはありえないだろう。


 急いで戻ろう。

 気配を察知された、ということから早く逃げたほうがいい。

 そう思い、レンは全速力でみんなの元へ戻った。

 幸いにも、追ってくることはなかった。













『行ったか。――おい、行くぞ』


 アンデッドホースは何も言わず、その人型の魔物(以下魔人)を背に乗せる。


『さぁ、いい顔見せてくれよ?死ぬ前の顔はたまらねぇからなぁ!ヒヒッ!』

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