第21話

 レンはふたりが出ていったあと、すぐに出ていく準備を終える。

 この場にいても危険でしかないからだ。


 家を出て、10年間育ってきた家に振り返って頭を下げる。

 その後、東の門に向かって走る。

 もう、振り返ることはしなかった。





「あっ、レンくん!」


 東の門に着くと、ナフィが声をかけてくる。

 もう大方準備は終わっているようで、あとは馬車に乗るだけのようだ。


 街に逃げる人達は、用意された馬車に乗って泣いていた。

 みんなこの村を愛していたからだろう。


「みんな、いたんだ」

「うん!西の門に行こうとしたらお母さんに止められて、こっちに来ることになったの。ギリーくんもネクソンくんも同じ」

「そっか……」


 ギリーもネクソンも目に涙のあとが残っている。

 おそらくレンと同じようなやり取りをしたのだろう。

 かく言うレンも、目の下に涙のあとが残っている。


「――あっ、そろそろ出発だって!行こ、レンくん」


 御者の村人がそろそろ出発だと言っている。

 ナフィがレンの手を引いて、馬車の方へと引っ張って行く。


「うん、分かった」


 レンは若干嫌な予感を覚えつつ、馬車に乗り込んだ。





「じゃあ、出発!」


 乗り込んですぐに馬車は出発した。

 門は開かれ、街へと走り出す。

 道という道はないのでゆっくりと進んでいく。


 ゔぅ……ぁ


 レンの耳になにやら呻くような声が聞こえた。

 だが、馬車にはそんな人がいる気配はない。

 隣にいるナフィに聞いてみる。


「ねぇ、何か聞こえなかった?」

「特に何も聞こえなかったよ?どんな音?」

「呻くような音、というか声」

「聞こえなかったけど?」

「……気のせいかな」


 ギリーとネクソンにも聞いてみたが、同じように聞こえなかったという。

 気のせいだと思ったが、すぐにまた聞こえだした。


 うぁ……ぁ

 ぁ……ぅぁ……


 さっきよりも多い。

 今度はギリーもネクソンも聞こえたようで、辺りを警戒し始める。

 だが、目のつく範囲にはそのような敵はいない。

 殺気を放っている様子もないので、本当に分からない。


「どこだ!?どこにいる!?」

「ギリー、落ち着け。焦っても見つからねぇよ」

「くそっ!何がいるってんだ」


 レンたちのその様子に、馬車に乗っている村人たちも不安そうな顔をしている。


 だが、次の瞬間。

 馬車の周りの地面から腕か生えてくる。

 さっきのうめき声のようなものもハッキリと聞こえてきた。


「ゾンビ!?こっちはグールかっ!?」

「こっちはスケルトンもいるぞ!」

「なに!?」


 このままでは村人を守ることは出来ない。

 御者の村人に村へ戻るように言う。

 まだそっちの方が囲まれた状態よりは戦いやすいからだ。


「おい!村に戻るぞ!」

「あ、ああ!分かった!」


 馬車を急いで反転。

 馬の疲れを気にせず、今度は全速力で村へと戻った。

 ゆっくりと行っては追いつかれてしまう。


 門の近くにいた、最後に出発する馬車に乗る村人も気づいたようで、門は開け放たれ、既に鐘は鳴っていた。

 村の終わりは刻一刻と近づいていった。

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