第10話

 

 しばらくその場に放置されていたレンだが、話が終わってナフィのお母さんと大おばがレンを放ったらかしにしていることに気づいたようだ。


「っとと、スマンの、レン。放ったらかしにしてしまって」

「レンくん、ごめんね」


 大おば様とナフィのお母さんがレンに謝ってきた。


「いえいえ、フィーちゃんのことですから人事ではないですし、大丈夫ですよ」

「そう、良かったわ。でも、改めてごめんね」


 そう言ってナフィのお母さんは、お母さんたちの元へ戻っていった。


「すまんかったの、ほんとに」

「いえ、大丈夫です」

「そうかい。それでなんの話だったかの?」

「僕が氷魔法の適正があった、って話です」

「おお、そうじゃそうじゃ。――基本的なことは神聖魔法と一緒じゃ。つまり、水魔法も使える訳じゃな」

「――えっと、それだけですか?」

「そう、じゃのう。基本的も何も、ひとつしかなかったのう」


 ワハハと大おば様は笑う。


「教会とか、そういうところに連れていかれるとかないですか?」


 レンは心配で仕方がない。

 なにせ、先天的な特殊魔法の適正で連れていかれる、というのを先に聞いてしまっていたから。


「ないない。少なくともわしは聞いたことがないからのう」


 大おば様が少し苦笑いしながら言う。


「そうですか」

「なんじゃ?怒ってるのかの?」

「別に」


 明らかに機嫌が悪そうな顔をしている上に、さっきから大おば様と目を合わせようともしないので、誰から見ても明らかであった。


「どうしたのじゃ?ほんとに」

「教会とか、国のやり方が気に入らないんです。信じてたのに……」


 大おば様は一瞬キョトン、とした顔をしたあと、豪快に笑い出した。


「……っワハハハハハ!子どもがそんなことを気にするでないわ!ワハハハハ!」


 その言葉にレンは思わずムッとする。

 プクゥといった音がなりそうな様子で頬を膨らます。


 それに思わずメリダがかわいい!と言ってしまい、さらにレンの機嫌は悪くなった。

 レンの顔は恥ずかしさか、真っ赤になっている。





 少し経って。


「――ハハッ……そろそろ期限を良くしてくれんかのぅ?レン」

「ふんっ!」


 レンは大おば様と顔を合わせまいと反対を向くと、メリダがかわいいーと言っていて、思わず目が合ってしまった。

 しまった!と思ったのか、反対を向くと大おば様がいて、どこを向けばいいのかオロオロとし始めて、暗かったその場は、レンによって笑いに包まれた。





 レンの機嫌が良くなってきたので、大おば様は子ども達にあるものを渡すことにした。


「ほれ、4人ともそこに並んでくれ」

「「「「はーい(おう!)」」」」


 初めにいた場所に4人は横に並んだ。


「じゃあ、全員右腕を出すのじゃ」


 全員が黙って右腕を出す。

 すると、大おば様がその右腕に腕輪のようなものを付ける。

 その腕輪には赤、青、緑、茶、黄、紫のボタンが付いていて、その上の辺りには黒く長細いボタンがあった。


「――これは?」

「それはステータスブレスレットじゃ。無論、お主らの親も付けておるぞ」


 そう言うと、大おば様は腕輪を見せてくる。

 子どもたちが振り向くと、親たちも腕輪を見せてきた。


「この赤、青、緑、茶、黄、紫のボタンは魔法を成長させることが出来るのじゃ。――押してみると良い」


 子どもたちは自分に1番合っていた属性のボタンを押す。

 すると、画面のようなものが出てきて、そこには木が写っていた。


「その写っている木は『スキルツリー』と呼ばれておる。そのスキルツリーは魔法熟練ポイントで成長させることが出来るのじゃ。――魔法熟練ポイントは魔法の熟練度を上げれば少しずつ手に入るからの」

「熟練度って何ですか?」

「熟練度というのは魔法を何回も使うことによって、魔法の使い方が上手くなる、ということじゃ。――話を戻すぞ?魔法を使い続けると魔法熟練ポイントが少しずつ手に入る。そして、そのポイントを育てたい魔法のツリーに入れることによって、魔法にちょっとした変化が見られるようになる、と言ったわけじゃ」

「ちょっとした変化ってなんだ?」

「それは、大体魔法の威力が上がるとか、消費魔力減少だとかじゃ。大して気にすることでもないが、上げておくと気持ち的には楽になるから上げとくべきじゃな」

「へー」

「大おば様。魔法に色々種類あると思うんだけどさ、そのスキルツリー?を使えば新しい魔法が使える、とかあるの?」

「いい質問じゃが、ないのう。魔法は魔力と周囲に漂う魔素さえあればどんな魔法でも使えるのじゃ。まぁ、はじめは初級魔法に分類されるような魔法しか使えんじゃろうな」


 レンは別じゃが、と大おば様は小さな声でつぶやく。

 その声は誰にも聞こえていなかったようで、そっと風に消えていった。





「大おば様、この黒いボタンは?」

「それは身分証明と自分に固有能力ユニークスキルがあるか、固有能力は成長しているかを見ることが出来るものじゃ。身分証明は冒険者登録すると、冒険者組合所属〇ランクと言った感じのものが追加される。――あっ、血を付けて登録しないと自分のものとして設定されないし、色々困るから登録した方がいいぞ」


 そう言って、大おば様はレンたちの指に針を少し刺し、血をにじませる。

 それをレンたちは自分たちの腕輪に押し付けると、腕輪が深い黒から明るい白に変わった。


 レンたちが登録したのを確認して、大おば様は話を続ける。


「――ちなみに、基本的には身分証明の部分は変えられないのじゃが、固有能力は見せないように設定出来るのじゃよ」


 固有能力は自分の弱点でもある。

 そんなものを身分証明の際に見せていたら、弱点を常にさらけ出しているようなものだ。


 それと、固有能力はある人もない人もいる。

 ない人でも、固有ではないが、希少能力レアスキルは持っていることが多い。

 希少能力は色々な人が持っているもので、固有能力はその時代ではその人のみが持っている能力だ。


 そして、どちらも成長する。

 そのどちらのスキルにも適正があり、適合率で表される。

 適合率が高ければ高いほど、低い人よりも出来ることが増えるのだ。


 閑話休題。


 レンたちはみんなで固有能力か希少能力があるか見せ合いをしていた。

 その見せ合いだが、本来ほかの人には見えないのだが、設定することによってほかの人も見ることができるのだ。


 ギリーとネクソンは希少。

 ナフィとレンが固有を持っていた。

 ただし、レンの場合は少しおかしかったのだが。


 レンの固有能力の欄にはこう表示されている。


 ――――――――――――――――――――――


 固有能力:****

 適合率:――%


 ――――――――――――――――――――――


 レンの固有能力は文字化けにによって見えなくなっていたのだ。

 無論、レンはなにもいじくってはいない。


 結局、なぜこんなふうになっているのか分からなかったので、大おば様の聞いてみることにした。


「大おば様。固有能力が表示されないんですけど……」

「ふむ。見せてみぃ。――これは……あぁ、あれじゃな」

「あれ?」

「強い能力は、本人が使える条件を満たさない限り、使えないようにロックがかかることがあるそうじゃ」

「じゃあ、わかんないの?」

「そうなるのぅ」

「そんなぁ」


 レンはガックリとうなだれる。

 そこに残りの子どもたちも話を聞いていたようで、レンの側に来て、レンの背中を優しく叩いて上げていた。


 こうして魔法の適正鑑定と、腕輪を渡し終えたのだった。

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