第8話

「次は、ネクソン。前へ」

「じゃあ、行ってくるね」


 ギリーと同じように、レン達に手を振りながら水晶の前に立つ。


 ネクソンが水晶に手を置いた。


 ――結果、特段明るかったのは土だけ。

 逆に暗いのはなかった。


「へぇ、土かぁ」

「ふむ。バランスが良い、いや器用貧乏かの。これなら特段土にこだわる要素もない。自分の好きなものを選ぶがよい」

「えっ!?あ、ありがとうございます!」


 なんでお礼を言っているのか分からないけど、なんか反射で言ってしまった、みたいな顔をしている。


 そのままレンたちの元に戻ってくる時は、ふらふらふら〜とした感じであった。


「……魔法何でも選べるって」


 そもそも、魔法は適正に上下はあるはずなのだが、ごく稀にこういうこともあるらしい。

 そして、そういった人達は英雄のような存在に多く、自分が英雄だなんて……みたいな感じになるのも無理はないだろう。


「おう!よかったじゃねぇか!」

「良かったね!ネクソンくん!」

「よかったじゃん、ネクソン」

「う、うん」


 現実を受け止めるには少し時間がかかるかもしれない。

 まぁ、最後の1人が終わるくらいには現実を受け止めているだろう。





「次は、ナフィ」

「行ってくるね!」

「おう!」

「いいのが出るといいね!フィーちゃん」

「…………ほぁ」

「……おい。ネクソンに今は喋らせるな」

「……そうだね」

「あはは……」


 最後のネクソンの返事によって、若干微妙な空気になった。



「――じゃあ、改めて行ってくるね」


 ナフィは水晶の前に立ち、手を置いた。


 結果は、光。

 いや、黄色よりも白に近かったかもしれない。


「光?」

「……ふむ。これは、神聖魔法か」

「神聖魔法?」

「光の派生したものじゃな。特殊魔法と言って、光のレベルを10になると、上げることが出来るものじゃ。無論、光の魔法も使える」

「えっ、でも私は……」


 魔法を使ったことない、ナフィはそう言おうとした。


「分かっておる。これは先天的なものじゃよ。特殊魔法の適正には、先天的なものと後天的なものがあるのじゃ。先天的なものはナフィのような場合。後天的なものは、レベルを10にすると出現するもの。誰でも可能性はあるものじゃ」

「へー……」

「ただ……これはまずいかもしれん」


 大おば様は深刻そうな顔をして言う。


「何故ですか?」


 すかさず、ナフィのお母さんが前に出て聞く。

 本来、適正鑑定をしている最中は、親は子どもたちの近くにいては行けない、前に出てはいけないことになっている。


 そレがわかっているのに近づいたのは、自分の子どもの事だからだろう。

 しかも、大おば様の顔見て深刻そうなのは明らかなので、誰も止めようとはしなかった。

 何より、大おば様が咎めなかった。


「それはの……」


 大おば様は少し溜めてから言う。


「先天的な神聖魔法を持つものが現れた場合、教会に報告しなければならないことになっておるのじゃ」

「それっていいことなのでは?教会の保護が受けられるということでしょう?」

「いや、あまり良くない。先天的な神聖魔法を持つものは聖に連なるものの資格あり、とされるのじゃ。そして、教会に預けたが最後。成人して、教会での活動ができるようになるまで一切外界との接触を禁じられる」

「っ!?」


 空気が凍った。


「私、ここを離れるの?」


 ナフィが泣きそうな声で言った。

 それをレンたちがそっと抱きしめ、落ち着かせてやる。


「だが、報告しないとこちらが処罰される……。どうしたものか」

「無視してはいけないのですか?」

「ダメじゃ。教会は独自で先天的な神聖魔法を持つものを探すことが出来る部隊を持っておる。――幸いにして、ここは辺境。そのような部隊が混じっていることはほぼありえないじゃろう」


 辺境で、そういう部隊が来ない可能性が高いなら無視すればいい、とレンたちは思った。


「では、やはり無視すれば良いのでは?」


 フィーちゃんのお母さんも同じことを考えていたようで、大おば様にそう言っていた。


「そうもいかん。そういった者達は商人に化けることもあり、独自で神聖魔法の使い手がいないかを探すことがある。見つかったら面倒な以上、いつかは報告しなければならん」


 その場合は、いなかったからと言い訳が出来るがの、と大おば様はボソリと言う。


 どうしたものか、と考える。

 すると、後ろで手を挙げた者がいた。

 メリダだ。


「あの、発言いいですか?」

「ふむ、どうしたのじゃ?メリダ」

「その話なんですけど、5年後に知らせれば良いのでは?」

「「5年後?」」


 大おば様とナフィのお母さんの声がかぶる。


「えぇ、ここは山と森に囲まれているので、馬車で来るにも大変です」

「そうじゃの」

「ですので、10歳になって、体力が付いたら山を一緒に超えて教会に行けばいいのではないかと」

「そう、じゃのぅ」

「ナフィを山に捨てろって言うの!!?」


 ナフィのお母さんが殴りかかってきそうな勢いでメリダに詰め寄る。


「い、いえ。そういう訳ではないです。そういう訳ではないのですけど、教会の権利はかなり大きいです」


 そう。

 教会の権利はかなり大きい。

 教会は悪事を裁く権利を持っており、その権利は国王などにも及ぶ。


 なので、反抗してもナフィの母親は殺され、無理やり連れていかれるだけだ。

 そうなると、無理やり連れていかれるナフィは、教会内で酷い扱いを受けることになるだろう。


 そういった旨をナフィのお母さんに伝えるとガックリと肩を落とした。


「それに、ちょうど去年に教会から派遣隊来ましたよね?」

「そうじゃな」

「教会は6年に1度しか訪れない。それを利用して、来た時にいなければいいのですよ」

「ふむ……」

「そして、教会の人たちが帰ったあと、私たちが子供たちを迎えに行くんです」

「なるほど……」


 どうでしょう、とメリダは大おば様とナフィのお母さんに問いかける。


「そう、じゃな。どうじゃ?おそらく、これがぎりぎりじゃ」


 そう、ナフィのお母さんに問いかける。


「わか、り、ました……」


 ナフィのお母さんは悲しそうに目を伏せ、嗚咽をこらえるように泣き始めた。


「すまんのぅ……。せめて、あと5年は家族の時間を大切にするんじゃ……。それ以降は、教会関係者がナフィを連れて行ったとしても文句は言えん。一応、次の派遣隊まで連れていかれることは無いが……ほんとにすまんのぅ」

「いえ……いえっ!大おば様が悪いんじゃないんですっ!」


 嗚咽を堪えながら泣いていた。

 そこをメリダが肩を支え、元の場所へと戻っていく。


 その場には暗い雰囲気が漂っていた。

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