第4話

 あれから2日。

 頭の横に2つ、足元に2つ、計4つの魔石をレンの周りに置いたのだが、溢れ出る魔力が予想以上に多かったのか、どんどんと吸収していった。


 結果的に魔石ははじめに貰った10個では足りず、2倍の20個出来た。

 それには大おば様もとても驚いていた。


 その後、足元が若干おぼつかない様子ではあるが、歩けるようになったので、レンを大おば様の元へと連れていく。


 予め、レンには大おば様の家に泊まることを伝えてある。

 メリダの元から離れると聞いて悲しむかと思いきや、むしろ、泊まっている最中に魔法を少し使えるとあってか、ものすごい喜んでいた。

 これには、メリダの心中も穏やかではなかった。


 だが、レンと村の安全を考えると、何も言えなかった。


「それじゃ、大おば様のところに行きましょうか」

「はーいっ!まほーっ!まほーっ!楽しい、楽しい、まっほっう!」


 レンは魔法を使うのが楽しみすぎてか、歌を歌い始めた。

 変な歌ではあるが、レンの気持ちがとても良く表れている。


「ふふ。ほら、レン。行くわよ」

「はーい」


 大おば様の家に向かって歩いている時もそんな調子で行ったので、その様子を見た村の人達から笑われてしまった。






 やがて、大おば様の家である神社の、階段下に着いた。

 大おば様に会うためには、この階段を登らなくては行けないのだが、足元が若干おぼつかないレンには危ないだろうということで、メリダがおんぶして連れていく。


「はい!レン、到着!」

「とうちゃーく!!」


 レンが嬉しそうにはしゃいでいる。

 すると、大おば様が神社の中から笑いながら出てきた。


「ほほ、元気じゃのう」


 大おば様が微笑ましそうに見ていた。


「あっ!大おば様ー!」


 背中の上ではしゃいでいるので、レンを下ろしてやると、嬉しそうに大おば様の元に走っていった。


「おぉ、よく来たのう!」

「まほう!使いたい!」


 大おば様の元に走って行ったと思った瞬間にこれだ。

 レンの言葉にふたりとも苦笑いする。


「そ、そうかそうか。じゃが、少し待っておれ」

「はーい」


 そう言うと、レンはメリダの見える範囲で遊び始めた。


「すみません、大おば様」

「よいよい。これも若さじゃし、将来有望じゃのう。――さて、と。メリダよ。レンのために魔法の使い方を教えるのは良いが、どこまで教えるべきかのう?」

「――その前に大おば様。聞きたいんですけど、もう一度、魔力暴走ってするものですか?」

「ふーむ、そう、じゃのぅ。――普通ならそれで限界を知って起こさなくなるもんじゃが、まだ幼いからのぅ。なんとも言えん」

 

 魔力暴走をすると、魔力量の限界が上がるし、限界を知るので、普通は暴走をするほど使わなくなる。

 だが、まだ幼いレンにそんなことが分かるはずもない。

 だから、また暴走する可能性がないとは言えないのだ。


「――じゃあ、レンに教えるのは魔力の使い方だけにしてくれませんか?」


 レンはまだ3歳だ。

 なので、大きくなった時に現在のことを思い出す可能性はかなり低い。


 そしてもし、魔法の使い方を知ってしまったのなら。

 メリダの目の届かないところでやりかねない。

 ならば、魔力の使い方を教えて、魔法を使っていると思いこませる方が安全だろう。


「やはり、それが妥当かのう。もしもワシらの知らぬところでレンが魔法を使って暴走したら、大変なことになるしのう」

「それでお願いします」

「うむ、わかった」

「――何日、かかりますか?」

「うーむ、3日程かの?」

「わかりました。じゃあ、その間レンをよろしくお願いしますね」

「任された」


 事前に言うことは言ってあるので、ここで話すことはほとんどない。

 メリダはレンの元へ行き、少し話してから家に帰った。





 その後、大おば様はレンを家の中へと案内する。

 途中、何回もはぐれそうになるが、無理矢理部屋に入れた。


「さてと、レン。魔法の使い方を教えよう」

「わーい!まっほー!」


 嬉しそうにしているところ悪いと思うが、レン身の為だ。

 真面目に話をさせてもらう。


 レンは雰囲気を察して、体育座りをする。

 本当にいい子だと思った。


「うむうむ。元気が良くて何よりじゃ。――さて、レン。魔法ってどういうものか分かるかの?」

「火を出したり、水を出すものでしょ?」


 それがどうかしたの?と言った顔でレンが聞いてくる。


「まぁ、極端な例を上げるとそういう事じゃの。じゃあ、レンの言う火を出したり、水を出したりするのはどうやったら起こると思う?」

「魔力が水に変わるんじゃないの?」


 違うの?と言った顔で聞いてくる。

 顔がとてもかわいいのだが、今は一応授業中なので撫でないようにする。

 ものすごく撫でたい欲に呑まれそうになるが、ぐっと堪える。


 ……後で思い切り撫でてやるとしよう。


「違うのぅ。――魔法とは大気中に存在する"魔素"と呼ばれるものを媒介として発動するのじゃ」

「どういうこと?」


 頭を傾げて聞いてくる。


「うーむ、何で説明すべきかのぅ……。あ、そうじゃ。レン、『ゲリマニム英雄譚』は分かるかの?」


 ゲリマニム英雄譚とは召喚魔法がものすごく得意だった少年が、英雄となって世界を救う英雄譚だ。

 その物語は、劇になるほど人気で、召喚魔法を使える人は讃えられる場所もある程だ。

 ただ、召喚魔法はかなり使える人自体が少ない。


 潜在的に適正を持っているか、闇魔法のレベルを10まで上げないといけない。

 魔法のレベルを10まで上げるというのは、基本的に生きてるうちは不可能に近い。

 なので、レベルが低かろうが召喚魔法を使えると言うだけでとても尊敬される。


「うん。僕はあれ、結構好きだけどそれがどうしたの?」

「うむ、そのゲリマニムじゃが、召喚する時に媒介になるものを使って召喚する時もあったじゃろ?」

「あったね!強い竜が出た時は凄かった!」

「そうじゃのぅ。あれにはわしも興奮したわい。まぁ、それは置いといて、じゃ。あの話では竜の爪を媒介に竜を召喚していたじゃろ?」

「うん。そうだった気がする」

「それで、魔法というのは、召喚魔法でところの竜の事じゃ。媒介の魔素が竜の爪に当たるんじゃよ」

「…………?」

「つまり、魔法は結果なんじゃよ。召喚魔法で言うところの竜が出て来るところが魔法に当たるんじゃ。魔素と竜の爪は、その結果を起こすのに必要なこと、というわけじゃ」

「……難しくてわかんない」


 分かってはいたが、やはり難しくて分からないかったようだ。


 ……召喚魔法も魔法じゃん、と言うツッコミは受け付けない。


 紙に書いて説明してみれば、結構簡単に分かってくれた。

 ほんとにレンは3歳かと疑いたくなった瞬間である。





「ねぇ、大おば様。魔法って魔素を使って使うんだよね?」

「そうじゃが、どうかしたかの?」

「うん。質問なんだけど、詠唱って何のためにあるの?」


 大おば様はレンの言ったことに、一瞬驚いたものの、すぐに嬉しそうな表情になった。

 この質問が、魔法を使わない、というメリダとの約束を破りかけているとも知らずに。


「――ほう。いい質問じゃな。そもそも、本来魔法に詠唱は必要ないんじゃ」

「え?どういうこと?」

「魔法はイメージで発動する。詠唱はそれを補助してくれるから発動するんじゃよ」

「……?」

「えっとの、メリダが魔法を使う時、詠唱しておったじゃろ?あれを見たから、レンは魔法を使えたわけじゃ。――まぁ、結果は暴走じゃったが」

「うぅ……」

「もう終わったことじゃ。次は気をつければいいんじゃよ。――話を戻すぞ。レンはメリダが詠唱をした結果、魔法が発動したのを見たわけじゃ。つまり、イメージもしやすくなるんじゃ」

「……うん?」


 だんだんと話が難しくなってきて、レンがついてきてない。

 だが、大おば様は話に夢中でレンの様子に気がついていない。

 魔法バカというのは大おば様も一緒なのだ。


「イメージをすれば、魔法は発動する。無論、魔素に干渉しなければ発動しないが、魔素に干渉さえすれば、魔法は発動するんじゃよ。無詠唱然り、新しい魔法然りじゃ」

「でも、無詠唱は3倍の魔力を使うって……」

「あぁ、そういう話もあったのぅ。じゃが、それは間違いじゃ。ちゃんと、イメージさえ出来ていれば本来の魔力で発動出来る。要は魔法で大事なのはイメージ、という訳じゃな。イメージ次第では少ない魔力でも発動するんじゃないかの」

「ふーん」


 レンは途中から難しくで理解出来なくなってきたので、聞いていなかった。

 なので、次の言葉に驚くことになる。


「つまり、魔法の真髄はイメージじゃ。と、いうことで。ここにいる間にイメージで魔法が発動できるようにする。あと、魔力のコントロールもできるように勉強じゃ」

「えっ!?」


 魔法が使えると思ってたのに!と言わんばかりの顔であった。

 その顔に思わず、大おば様は笑った。


 ……この時には既に、大おば様はメリダとの約束を完全に忘れていた。

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