狂戦化(バーサーク)は使わない!?

輝時雨

第1章

第1話

 この物語は2つの星で形成される。

 人間だけの星、ネソラ。

 獣人やエルフなどの亜人と呼ばれる種族が住む星、パラーダ。

 2つの星に交流はほとんど無く、お互い仲が悪い。

 人間は繁殖力が高く人口が多いが、獣人は低く、そして少ない。

 獣人は力あるものがとても多いが、人間は無いものが多い。

 お互い自分達の強い部分、弱い部分を理解しているのでほとんどの場合、争おうとは思わない。


 だが、魔王が出現した場合にはお互いに協力して倒すことになる。

 魔王に挑むものを人間からは英雄を、獣人から勇者をそれぞれ向かわせるのだ。


 魔王がいるのは異空間。

 ある条件を満たした時に、ネソラとパラーダに同時に門が出現すると言われている。

 そして、その門は星の命運を掛けた戦いの幕開けとなるのだ。


 ――――――――――――――――――――――――


 3年前。

 ネソラに1人の男の子が生まれた。


 その子は生まれた時から普通の子どもが持つ魔力よりも圧倒的に多かった。

 そんな子どもが強い能力を得るというのもまた、必然だったのだろう。

 彼は、後の世で英雄と呼ばれるが、彼の人生は多難に満ちていたという。

 これはそんな英雄の、始まりの話である。


 その子ども、レンはまだ知性がほとんどついてないうちに普通の子どもではありえないことを引き起こす。

 この出来事は、彼の運命を決めるものだったのかもしれない。

 なにせ、この出来事が無ければ彼が力を得るのはもう少しあとの話だったのだから。

 そして、その少しの時間が彼の運命を大きく変えてしまうのだ。


 ――――――――――――――――――――――――


 レンは、色々と普通の子どもとは違っていた。

 普通の3歳の子どもであれば、まずはじめに英雄譚や物語に興味を持つことが多かった。


「僕(私)もこんな冒険をして、英雄になりたい!」


 普通はそう言った子がとても多く、そこから、


「こんな魔法が使いたい!」

「剣を使って戦いたい!」


 という子どもが世の中では圧倒的に多い。

 だが、レンは違った。


 レンはだったのだ。

 レンがはじめに興味を示したのは、レンのお母さんであるメリダが着火ライターの魔法を使った時だろう。

 はじめて魔法を見た時、レンは目を輝かせて、


「ぼくもまほう、つかいたいっ!」


 と興味津々だった。


 それ以降、レンは毎日のように魔法を見たがった。

 だが、もちろん危ない魔法もあるのでそんな簡単に見せる訳にはいかない。

 そこでメリダは、魔法を使う冒険譚や英雄譚を読み聞かせ、なんとか宥めようと考えた。


 しばらくは、効果があった。

 だが、次第に


「このまほうつかって!」


 とメリダに再びせがむようになった。


 もちろん初めはメリダも、危ないからダメ、と言ってレンを突き放していた。

 だが、そう言うとレンは途端に悲しそうな顔をするのだ。


 そこまで悲しそうな顔をされると、メリダは罪悪感を覚える。

 はじめは仕方がなく、魔法を使ってあげた。

 すると、レンは目を輝かせて喜んだのだ。


 それがとてつもなく両親にとってかわいかったようで、ある時からはレンが魔法使って!と言う度に渋ることなく使ってあげるようになった。

 無論、安全には気を使って、だが。


 ――――――――――――――――――――――――


「ママー、魔法使って!」

「はいはい、ちょっと待ってね」


 レンが、魔法を使って、と最近では毎日のように言う。

 どうしてこんな子になってしまったのか、メリダは思うものの、レンの可愛さに負けてしまうのだ。


 レンに見せる魔法は安全面にも考慮して、最近は光の初級魔法、光源ライトにしている。

 光源ライトの魔法は攻撃性がないので、問題ない。


 光源︰自分の頭上に光の球を出し、辺りを照らす魔法。明るさや球の大きさは込める魔力の量に比例する。魔力を込めれば、移動することも可能。


 レンが隣でわくわくした様子で見ている中、メリダは魔法を唱える。


『光よ照らせ。光源ライト


 メリダの頭上にピンポン玉サイズの光の球が発生する。

 最近、レンはこの光の球を追いかけて遊ぶことが多く、このままでは眩しいだろうと思ったので球を暗くし、レンの周りを浮遊させる。

 それをレンは追いかけて遊び始めたので、メリダは椅子に座って、球とレンを適度な距離で保ちながら、動かし見守る。


 レンは1人で楽しそうに球を追いかけて遊んでいる。


 少しするとレンは疲れてメリダの元にやってきた。

 そこで、メリダは魔法を消す。

 ここまでは、いつもの光景だった。


 だが、ここからがメリダにとって予想外だった。


「じゃあ、僕が使ってみるっ!」


 突然のことで、メリダは咄嗟に反応が出来なかった。


 レンは先程メリダが唱えた詠唱と同じものを唱える。

 メリダは急いで椅子を立ち、レンを止めようとするものの、時すでに遅し。

 レンは、唱え終えていた。


「ひかりよてらせ、らいとっ!!」


 だが、魔力の使い方を知らないので光の球が生まれることはなかった。


「あれぇ?」


 レンはなぜ魔法が使えないのか、と言った様子で不思議そうな顔をする。


 この世界では当たり前の話だが、魔力が扱えないと使えるものも使えない。

 だから、魔法が発動することはほとんどありえない。

 しかし、天性の才能を持つものは発動させてしまうこともあるらしい。

 メリダは可能性を考えてとても慌てたが杞憂だったようだ。


 これなら大丈夫だろう、とメリダはホッと息を吐き、再び椅子に座る。


 この時はあくまで、親の真似をしている可愛い子どもだと思ってレンを見ていたのだ。

 発動しなかったから大丈夫だろうと思っていたのに、この後発動出来るとは思うまい。


「うーん?じゃあもう1回っ」

「ひかりよてらせ!らいとっ!――ライトっ!――『光源ライト』っ!」


 次第に魔力がレンから放出され、練り上げられ、魔法が発動する。

 しかし、これは普通ではありえない事だった。

 レンの頭上に光の球が生まれる。

 しかも、普通の人はほとんど出来ない無詠唱で。


 急いでメリダは立ち上がり、レンに魔法を止めるように言おうとする。

 だが、これだけでは終わらなかった。

 その光の球はレンの魔力を無尽蔵に取り込んで行く。

 どんどんと光の球は大きくなり、目も開けられない程の光が部屋を満たす。


「レンっ!?」


 目を潰すような明るさが部屋中を照らし、メリダはレンがどこにいるのか分からなくなってしまった。


 目が開けられない中、床に手を当てて探していると、ドサッという音が聞こえた。

 まるで、誰かが倒れたような。


 すると、次第に光の球が暗く、小さくなっていく。

 まだ明るさが瞳に焼き付いている中、メリダはレンが倒れているの確認した。

 急いでメリダはレンの元へと駆け寄る。


「レン!大丈夫っ!?」


 急いで駆け寄り、声をかける。

 すると、


「……ちゅかれた」


 と言って、レンは再び倒れるように寝てしまった。


「……はぁ」


 メリダはそっとため息を吐き、レンを自分のベットへと運んで行く。

 明日、大おば様にこのことを言わなきゃなぁとも思いつつ。



 幸いにも、近所の人には分からなかったようで問題にはならなかった。


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